カズマ 04
◆
「はあ……はあ……」
肩で息をしながら、カズマは露出したコクピット席から眼下の緑色のジャスティスを見た。
胸部からバラバラになったジャスティス。
完全に破壊している。
もう微動だにしていない。
勝った。
間違いなく勝った。
あの獣型ジャスティスに勝利したのだ。
「勝っ、た……」
安堵の気持ちが溢れてくる。
かなりの強敵であった。
一時期は敗北直前まで追い詰められた。
そこから何とか持ち直した。
彼女のおかげで持ち直した。
「そうだ……まだ、終わりじゃない……」
ミューズ。
彼女の元に向かわなくてはいけない。
カズマは操縦桿を動かす。
カシャ カシャ
「……あれ……?」
――動かない。
操縦桿をいくら動かしても、ジャスティスは動かなかった。
先程まで動いていたのに。
「……ああ、そうか……」
すぐに思い当たった。
このジャスティスは直前まで――カズマの魂で動いていたのだ。
ミューズの声で覚醒したカズマの魂によって動作していたのだ。
それが無くなれば動かない。
このジャスティスは――既に破壊されていたのだ。
そして、それはすなわち、
「……まだ、だ……」
悟った。
悟ったが足掻く。
彼は転がるようにコクピットから外に出る。
立とうとする。
――足に力が入らない。
「守ら……なくちゃ……約束……したんだよ……」
それでも這うようにして進む。
ゆっくりと。
ゆっくりと。
やがて腕まで動かなくなる。
「やだよ……嫌だよ……行かなきゃ……動けよ……」
涙が零れる。
彼はもう分かっていた。
だけど、カズマは命の限り進もうとした。
魂が続く限り進もうとした。
最後までその手を伸ばした。
彼女を守ろうと――愛すべき大切な人を守る為に。
それでも運命は残酷であった。
絶対の理。
クロードでも変えられない、絶対の理。
ジャスティスが破壊されれば、そのパイロットは――命を落とす。
「……ミュー……ズ……」
彼女に向かって伸ばしたその手は力なく、地面へと落ちて行った。