エピローグ
「――ルード国民に告ぐ」
ラジオ。
テレビ。
緊急放送用のスピーカー。
カーヴァンクル中のありとあらゆる放送機器から声が聞こえてきた。
その声は聞き覚えのある声だった。
今や世界中、誰でも知っている人物。
彼は首都カーヴァンクルに入国する為の関所の一つ――よりにもよってど真ん中に位置している正門に、堂々たる様で立っていた。
隠さず。
いつもと同じ黒衣に身を包みながら。
その少年の周囲には多くの人がいた。
刀を携えた少年も。
白衣を着こんだ少女も。
そして――悪魔に身を売り、正義を冠するロボットに搭乗している少年もいた。
彼らも同じように、ルード国に向かって立っている。
胸を張って、立っている。
逃げも隠れもしない。
真正面から。
そんな中、少年は手元にある拡声器に向かって告げる。これは電波を変化させることによってカーヴァンクル全土に響かせている。
つまり――少年が以前、アドアニアでテレビをジャックした時の応用であった。
「これからルード国首都カーヴァンクルにて行動を開始する。一般市民は直ちに降伏し、こちらの兵が持っている赤い液体を飲んで投降せよ。素直に従えば敵対行動をしているとはみなさず、命の保証を行おう。――但し、武器を手に取りこちらに攻撃する意思を見せる者は、その限りではない」
右手には武器を。
左手には赤い液体を。
周囲の人々は掲げる。
「俺達の目的は虐殺でもなければ、ルード国の領土を奪うことでもない。目的はただ一つだけ。――賢い人達は言わなくても分かるだろう?」
そこで一つ息を大きく吸い、
「――最後に、名乗っておこう」
彼はハッキリと自分達が何者かを口にする。
「俺達の名は『正義の破壊者』。そして俺は、その代表である――クロード・ディエル」
クロード・ディエル。
魔王。
「その名のもとにここに宣言し、ルード国側への通告とする。――聞き逃しは許さない。なのでよく聞け、ルード国民全員、だ」
そして。
開戦宣言の代わりとなる一言を彼は告げた。
「これからルード国の――『正義』を破壊する」
――こうして。
ルード国と『正義の破壊者』の最終決戦の火蓋が切って落とされた。
5章 完
これで五章終わりです
次はいよいよ、最終決戦、ルード国での戦闘になります
お楽しみくださいませ