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Justice Breaker  作者: 狼狽 騒
第四章
150/292

エピローグ 03

    ◆



「……撤退、デスカ」


 ビルが立ち並ぶ都市部の中心にいる獣型のジャスティスに搭乗している少女は、コクピットの中で呟く。

 敵が出した命令は撤退。

 こちらからは追撃指令は出ていない。

 ならば追う必要はない。


「……」


 そもそも追えないのだが。


 先程、クロードに介入された際、素早く獣型に変形して距離を取った。

 しかし間に合わなかった。

 片方の足が、ボロボロに砕け散っていた。

 そこまでダメージを与えられていなかったにも関わらずに、足を地面に付けただけで崩れた。

 まるで――クッキーのような脆さになったかのように。


 この獣型ジャスティスは四足歩行だ。

 裏を返せば、一本でも欠ければバランスが取れなくなる。

 故にこのジャスティスの優位性は、あの時点で失われてしまったのだ。

 そんな中で魔王と勝負しても勝てない。

 そう判断した。


「マ、オウ……」


 ズキリ、と少女は痛みを感じる。

 それが何故なのか分からなかった。

 物理的な痛みなど、とうに感じない。

 精神的な痛みなど、とうに感じない。

 命令だけ。

 上から下される命令に沿って行動する機械となった彼女に、心などもう無かった。


 それなのに――


「マ、おう……」


 彼女はまた痛みを感じた。

 理由は分からなかった。

 だけど、分かるのは一つ。

 先の放送の声。

 そして先の戦闘での姿。


 それを見てから、何かが変わった。


 魔王は五メートル以内のモノを変化させる能力の持ち主だと聞いていた。

 だが、その距離にいたのは一瞬であるし、声が五メートル以内に入ってきたという条件ならば勝ち目がない。

 それでも、彼女の中で何かが変わった。


「……?」


 何故なのか?

 そして何が変わったのか。

 全てが不明だ。


 ――その理由が知りたい。


 彼女はそう思った。

 今まで思うことなど何もなかったのに。

 記憶にある限り、初めてだった。


 欲が出たのは。


 だから彼女は――コクピットの外に出た。


 スピーカー越しではない。

 相手は拡声器越しかもしれない。

 それでも――更に相手の声を近くで聞くために。


「……」


 外に出た彼女は風を受け、腰まである長い髪が揺れた。

 その髪色もまた、もう一人と同じように特徴的なものであった。



 目を引くような――()()()()()



「クロード……ディエル……」



 ()()()()()()()

 クロードの幼馴染だった彼女は虚ろな瞳で、かつて大切だった人物の名を無機質に口にしたのだった。

第四章はこれにて終了です

正義の破壊者の明確な初の敗北。

そしてマリー(ついでにアリエッタ)の再登場。

ここから物語はクライマックスへと舵を取り始めます。

どうか引き続き五章もお楽しみくださいませ

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