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Justice Breaker  作者: 狼狽 騒
第四章
135/292

乱戦 04

    ◆クロード



「行ったか……」


 クロードは可翔翼ユニットが発する音が遠ざかって行くのを確認し、そう呟いた。

 視認は出来ない。

 何故ならば、この目の前の男からひと時も目を離すわけにはいかなかったからだ。

 陸軍元帥 コンテニュー。

 自分と変わらないような年齢なのに、ルード国の元帥の地位についている。それがどれだけ凄いのかは正直分からないが、相当異常であることは理解している。

 またカズマの話から、相当頭が切れることも、そして非道でもあることも分かる。

 人を躊躇なく殺害するなんて人でなしだ。


(……まあ、俺が言えることではないが)


 そう自虐しておきながら、相手をじっくりと見る。

 相手はクロードから距離を置いた位置にいる。

 その距離はおおよそ――七メートル。

 クロードの能力の適用範囲である五メートルにマージンを取った値だ。


(意図がある距離だな)


 クロードは試しに一歩、前に出る。

 するとコンテニューは二歩、左に移動した。


(成程。この開けた土地から離れない為の距離、か)


 単純に後ろに下がれば同じ距離になる。しかしそれは、そのまま森の奥地へと引っ込む結果となってしまう。しかし横方向ならばその距離を保ちながらも開けた土地からの距離は単純に後ろに引いた時よりも離れない。

 何かがこの開けた土地にある、もしくは開けた土地でないと何かが出来ないということだろう。

 だが、それを探る必要はない。

 何があってもクロードには無敵の能力がある。

 五メートル以内のモノを変化させる、という能力が。


(――やっぱりバレているか、俺の能力)


 仕方ない、とクロードは嘆息する。

 相手が五メートル以上の距離を取っていることから察したが、既にアリエッタにバラしていたのだから当然と言えば当然だろう。ただ社会的に信用を無くしたアリエッタからの言葉なんて誰も信用しなかっただろうから、海軍との戦いの際には何も対策などされていなかっただろう。しかし、流石にこれだけの月日が経てばアリエッタの言葉に耳を傾けるだろう。それがイコールアリエッタの信用回復とはならないだろうが。


「そういえばアリエッタってどうなったんだ?」

「あはは。唐突に脈絡もない話をしますね」


 コンテニューは笑みを携えながら肩を竦める。


「あの人は牢屋に入れましたよ。貴方に与した罪で」

「それであんたが陸軍元帥ってか」

「そうですよ」

「じゃあ俺がお前をその地位まで上げたってことか。感謝してほしいな」

「僕のおかげです」

「まあ、そうだよな。俺のおかげなわけないな」


 クロードも肩を竦める。

 だが彼は笑みを浮かべない。

 浮かばせることが出来ない。


「さて――お前がここに来たことで()()()()()が分かったわけだが、それは陸軍元帥としてどうなのだろうか?」

「僕がここに来たから? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()――のではないのですか?」

「……」


 ピクリとクロードの眉間に皺が寄る。

 実はコンテニューが口にしたことが真実であった。


(だが――何故それが判る?)


 あまりにも察しが良すぎる。

 理由が判らない。

 しかし――


(……ただ者じゃない、ってのは確かか。この若さで陸軍元帥ってのはアリエッタと同様、頭脳面で優れているからなのだろうな)


 そのように結論付け、改めて笑顔の相手に向き合う。


「――とりあえず、だ。お前を殺せば元帥全滅でルード国にダメージを与えられるんだが、どうして俺の目の前に現れたのか聞いてもいいか?」

「確かめるためですよ」


 先と同じような唐突な話の切り替えに今度は文句を告げずに答える。


「あなたを確かめるためにここに来ました」

「何を確かめるんだ?」

「答える必要がありますか?」

「……必要ないな」


 クロードは両手を広げ、コンテニューに向かって堂々とした様で告げる。


「どんな思惑があるか分からないが――俺に対して容易に姿を見せたことを後悔させてやろうではないか」


 こうして。

 クロードの能力戦が今、始まった。

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