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Justice Breaker  作者: 狼狽 騒
第四章
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故郷 06

 ――死んだ人を蘇らせようと思ったりしなかったんですか?



 カズマのその問いに、クロードは即答できなかった。

 話の流れから全く予想外の質問だったから。

 しかしすぐにどうしてそう問うてきたのかを分析する。


「……成程。カズマは母親の骨がある所に行って、俺が復活させようとしているのかと思ったんだな?」

『流石クロードさんです。どこまでもお見通しなのですね』

「言っておくが俺の母親には骨などの遺品もなければ墓もないぞ。当時は迫害の対象になったし、金もなかったからな」

『だから……蘇らせなかったのですか?』

「違うな。骨が残っていようが俺は死者を蘇らせること――『死』を『生』に変えることは絶対にしないし、()()()()

『出来ない、のですか?』

「ああ。はっきり言っておく」

『何故、ですか……?』


 失望が混ざった声が聞こえる。

 でも失望しきってはいない。

 きっと彼も、こんな変化は出来ないと思ってはいただろう。

 カズマがクロードの能力について察していることは承知だったが、分析も深くしているのだなと感想を抱く。

 その上で説明を行う。


「俺の能力を万能だと思っているだろう? それは違うぞ。あれには――()()()()()()()()()()んだ」

『主観、ですか?』


 いまいち理解していないような声音。

 ならばとクロードは具体的な説明をする。


「例えば俺が自分の母親を生き返らせるとしよう。そしたら骨も何もなくても、母親の外見をした生きた女性が能力によって目の前に現れるだろう。きっと、声音も、仕草も、記憶も、俺が知っている母親と同じだろう。だが――」


 一拍置いて訊ねる。



「それは本当に、生前の俺の母親と言えるのだろうか?」



『それは……』


 カズマの言葉が詰まる。

 母親の姿をして、母親の記憶を持って、母親の声で自分の名を呼ぶ、自分の記憶と同じ女性を目の前に生み出すことは可能だろう。

 だが、その精神は一体どうなのか?


「そして寿命や身体的な成長、代謝など、身体の細かい機能まではどうなるかなんて分からない。それも俺の主観が入ってしまうからな」

『そう、なのですか……』


 きっとカズマも想像しているだろう。

 コズエ。

 自分の妹に置き換えて。


『……分かりました。すみません、嫌なことをお聞きして』


 カズマが謝罪を口にする。

 きっと彼も理解しただろう。

 クロードの能力は決して万能ではない、と。


「気にするなと言っている。他にはないか?」

『はい。正直言うと、先程のがずっと思っていて一番言い難いことでしたから』

「そうか。じゃあ――」



「続いて僕が質問したいですね。――『こんな所で何をしているんですか?』って」



 唐突だった。

 その声は森の中から聞こえてきた。

 クロードも驚きの表情が隠せなかった。


 全く気配を感じなかった。

 それどころかここに来ることすら想像していなかった。


 そして彼は悠々と姿を二人の前に表す。


 金髪。

 碧眼。

 そして――微笑み。


 クロードは彼の姿を直接は見たことが無かった。

 だが、その特徴的な容姿は知っていた。


『同じお言葉をお返ししますよ。こんな所で何をしているんですか?』


 一方、カズマは知っていた。

 見たことがあった。

 彼の名を知っていた。

 故にその名を口にする。



()()()()()()()()――()()()()()()


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