故郷 04
◆
ウルジスによるアドアニアとの交渉公表。
そのことによって先に『正義の破壊者』の面々が述べた通りの展開になった。
アドアニア国は抗議の声すら上げられず、ただそれを受け入れた。
そのことにより、堂々とアドアニアに入国出来るのは、『正義の破壊者』にとって大きなメリットとなった。
戦車などの大型の兵装や大量の所属員、何よりカズマのジャスティスなど、いくら地続きとはいえ密かに移動させることは難しい為、入国ルートの選択などに気を遣わないのは負荷的にも非常に助けになった。
そして『正義の破壊者』の一行は、会談準備という名目で会談の二日前に入国した。
正々堂々。
正面から。
◆
「いやー、VIP対応っていいっすね」
白衣を着た少女がコロコロとした笑顔を見せる。
彼女がいるのはアドアニアの中心にあるとあるビルの一室。
その部屋には壁面びっしりに液晶モニターが敷き詰められており、幾人かの人員が忙しそうにキーボードを叩いていた。
「これがVIP対応なのか、ミューズ?」
そんな部屋に、呆れ顔でライトウが入室してくる。
ミューズは顔を輝かせて答える。
「そうっす! こういう画面だらけのメカニック的の部屋っていうのはエンジニアにとって憧れっすよ」
「そういうもんなのか? にしても、これらの画面が何を映しているのかさっぱり分からないな」
「ここにある画面はアドアニア全土に張り巡らされた監視カメラの映像っすよ」
そう示された通り、あちらこちらの映像が道端を映している。
ビルが立ち並ぶオフィス街。
少し外れた商店街。
学校の目の前。
何もないような森の中。
商売をしている人。
忙しそうに時計を見る人。
遊んでいる子供。
裏路地で兵装を準備している『正義の破壊者』の所属員。
森の中に潜伏している戦車。
「アドアニアって技術的に凄く優れているんすね。ほとんど網羅していると言っても過言では」
「監視社会とかそういう批判もあったんじゃないか?」
「あったでしょうが、まあ、何事にも賛否両論は付きものっすよ」
「そういうものか――と、映像だけじゃなくて何だか文字だけのモニターもあるが、あれは何だ?」
「全部映像にしたって見られるわけがないじゃないっすか。あれは画像認識ソフトの画面っすよ。目視だけではなくて異常なモノが映った際に――」
「ああ、俺が聞いても分からないからそこら辺で止めてくれ」
「むー、これからが面白いとこなんすのに――で、なんすか?」
「ああ、クロードがどこにいるか知らないか。どこにいるか聞いていなくてな」
「んー、あたしも聞いていないっすけど……映像にも映ってなかったっすね。隠れて行動しているとは……あっ」
何か思い当たったような声を出すと、ミューズは猛烈にキーボードを叩き始めた。
「……やっぱり……」
「どうしたんだ?」
「この監視カメラの映像って全土に張り巡らされている訳じゃないっす。だからこの場所はあるかなー、と思って探したんすけど、やっぱり無かったっす」
「どこだそれは?」
「魔女の家――クロードの生家があった場所っす」