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Justice Breaker  作者: 狼狽 騒
第四章
126/292

故郷 01

    ◆



『正義の破壊者』がウルジス国を下に付けたことにより、この世界は大きく変革した。

 まず赤い液体を大量に用意し、ウルジス国の領土下にある国民全員に飲ませた。赤い液体の大量生産は、本物から一滴注いだ液体がまた本物となり、そこから一滴でも注いだ液体がまた――というように本物から一滴でもきちんと引き継いでいればどれだけ薄まろうが効果があるので、ある意味無限大に出来ていた。

 勿論、反対した国も国民もいた。

 だが彼らを武力的に追い込むことはしなかった。

 その代わり、精神的に追い込んだ。

 赤い液体を飲まない人物は犯罪思想のある人間だ。

 だって赤い液体を飲んでも悪人以外は影響ないのに、それでも拒否するってことは悪人ってことだろ?

 ――そう浸透させた。

 こちらからは何もしない。

 しかし世間体が許さない。

 故に結果的には全国民が赤い液体を飲んだ。

 文字通り、全国民だ。

 異常なことだった。

 それでも一般市民に被害が出ず、また治安も極端に良くなったことによるものであるのは間違いが無かった。

 次に彼らは、その対象範囲を拡大しに行った。

 すなわち、中立国の取り込みだ。

 こちらは存外上手く行き、既に赤い液体を自主的に取り込んでいた国もあった。

 支配ではない。

 所属したからといって害はない。

 そう思って入れた国がほとんどあった。

 その一方で、赤い液体を飲むとルード国への敵対意志と見做される為に拒否する国もあった。その国への説得はウルジス国の担当者に任せること、ならびにミューズが指示をした人間にやらせていたが、それでも同意できない場合は、説得を諦める判断を下した。それはクロードだけではなく、ウルジス王とも相談した結果だ。無理強いをすれば後々の禍根になる。であれば、交渉したという事実だけあればまずはよしとすることにした。

 そしてその効果はすぐに現れた。


 中立を保っていた国の内、赤い液体を飲むこと――『正義の破壊者』に属することを拒否していた国の一つが、ルード国の襲撃を受けて陥落したのだ。


 武力による占領。

 いや、占領なんて甘い言葉ではない。

 土地を奪った。

 土地だけを奪った。


 そこにいた人々の命を――奪った。


 もはや占領ではない。虐殺の域だった。


 『正義の破壊者』に与したと思われたため?

 だったらどうして明確に与した国を襲わなかったのか?

 それとも中立国などもういらないという意思?

 このタイミングで何故それを行ったのか?


 ――世界中が理解出来なかった。


 理解出来ないが、認識したことがある。

 ルード国は武力による侵攻を再び開始した。

 この行為により、世界は『正義の破壊者』への同調が多くなった。


 ここからの世界情勢は、歴史に名を残すくらいの動きを見せる。

 ウルジス国は次々に領土を広げ、ルード国領ながらもルード国に不満を持った国を武力を用いずに取り込んでいった。もっとも、『正義の破壊者』が国を持たなかったが故に表記上はそうなっているが、事実、それらの国々は『正義の破壊者』に属していた。

 一方、ルード国は中立国を積極的に武力で占領していった。そこには慈悲も何もなく、一方的な蹂躙によって生命が散らされていた。

 その一方的な侵略の中心にいたのは――『ガーディアン』という存在だった。


『ガーディアン』。

 緑色のジャスティス。


 しかし名前は知られているのに、その戦闘スタイルは全く知られていない。

 理由は二つ。

 一つは戦闘後に仁王立ちをしている姿のみをルード国軍が公開している為だ。それ以外の記録は残っておらず、またパイロットの存在含めてルード国内にもほとんど情報が開示されていない為である。故に各国のスパイも有用な情報を入手できず、逆に噂話程度の情報しか得られなかった。


 曰く瞬間移動をする。

 曰く機体が透過する。

 曰く上空一万メートルまで跳躍できる。


 通常では考えられないようなことが噂されていること自体が、その緑色のジャスティスの異様さを物語っていた。

 二つ目は、決して『正義の破壊者』ならびにウルジス国のメンバーがいる所を襲撃しなかったからだ。

 表面上は中立を保っているようで裏では協力関係にあった国で網を張っていたこともあったが、まるで知っているかのようにその地域を外し、どんどんと陥落させていった。故に直接の戦闘を見る機会が無かったのだ。

 未だにヴェールに包まれた謎の存在。

 その存在がルード国に同盟している国を現在支えていると言っても過言ではなかった。


 それらが繰り返され、月日は流れ――

 ついには()()()()()以外、中立国と呼ばれるモノは無くなった。

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