表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Justice Breaker  作者: 狼狽 騒
第三章
105/292

エピローグ 05

(陸軍元帥……コンテニュー、だと……?)


 アレインは絶望に浸された。

 空軍元帥のヨモツを撃破したばっかりなのに、まさかの陸軍元帥がここにいる。

 どういう状況だ?

 それ程までにハーレイ領は重大な場所だったのか?


 さまざまな疑問が新たに浮かび上がる中、その中心にいる彼は両手を広げて大きなため息を吐く。


「貴方達は『正義の破壊者』について分かっていませんね。彼らの原則にはあるのですよ」

『何ガデスカ?』

「ジャスティスと戦闘するうえで最も必要なことですよ」


 コンテニューはゆっくりと歩を進めながらアレインの方に近づいてくる。


「彼らはお互いを見捨てることを躊躇しない。《《時には非情になって仲間を見捨てることを誓約している》》のですよ」


(何故それを……?)


 アレインは片目を驚きに大きく見開いた。

 その誓いは幹部――クロードと施設の人間の五人で誓ったものだ。他の所属員に浸透させている考えではない。

 にも関わらず、コンテニューはそれを知っていた。


(この人は一体……)


 その気味が悪い人物は、緑色のジャスティスの近く――アレインの目の前まで立つと「やあ、久しぶりですね」と笑顔を見せてきた。


「昨日はどうも。どうですか? 僕が渡したお守りは持っていますか?」

「……」


 思わず視線を右胸に移してしまう。

 何故だか分からないが捨てられず、とりあえず胸ポケットにしまってあるのだ。

 しかし何故それを今問うたのだ――


(……ああ、そうか。これが発信機になっていたのね)


 至極単純な理論。

 彼女は泳がされていたのだ。

 何と単純なミスだ。


(これのどこがクロードを想起させるのだっていうのよ……)


 悔しさで歯ぎしりしたい気持ちになる。

 だが、それすら行う体力が無い。

 ありとあらゆる事象が、自分に嫌な形で降りかかってくる。


 そんな気持ちを更に逆撫でするように、彼はにっこりと笑う。


 ――やはりクロードを思い起こせる笑顔で。


「それは良かった。――さてさて、そこにいるのはサムライ ライトウですね?」

「……そうだが」


 ずっと動けなかったであろう、ライトウが短い返答をする。


「貴様……アレインを離せ!」

「何を寝ぼけたことを言っているのですか? 貴方は大馬鹿ですね」

「大馬鹿、だと……っ!?」

「ええ、大馬鹿です。そんなことを言って離す人がいると思っているのか、っていうのが一つ。――それと、もう一つ」


 コンテニューは懐に手を入れる。


「僕は言いましたよね? 貴方達の中では時には仲間を見捨てることを誓約しているって。だったら――人質がいようがいまいが、結局関係ないってことじゃないですか」

「……やめろ」

「いいえ、やめません」


 そう言って彼が懐から取り出したのは――拳銃。

 黒光りする銃口。

 それを彼はこちら――アレインの方に向けてきた。


 それを見て、彼女は自覚した。

 次の瞬間の自分がどうなるか。

 ライトウの必死な顔を見ても想像が付く。


 自分の命のともしびが少ないことを自覚した途端。

 後悔が波のように一気に襲いかかってきた。

 色々あった。

 だが、最後に彼女が思ったことは――


(……ああ、伝えられなかったなあ)


 ライトウに「自分を見捨てて逃げろ」ということ。

 先に見た緑色のパイロットのこと。

 そして、自分のクロードへの気持ち。

 あんなもんじゃない。

 離れて更に加速した、愛しい気持ちのことを。




「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」



 そんなライトウの絶叫の中だったのにも関わらず。

 引き金を絞る彼の妙に静かな言葉が、アレインの耳に入ってきた。





「おやすみ、アレイン」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ