自覚 04
「え……?」
思わず、クロードは聞き返してしまった。
クロードから一番近い男の子から聞こえた言葉。
にわかには信じがたい言葉だった。
あまり話したことのない、眼鏡を掛けた彼。
幻聴かと思った。
「俺はお前の友達だ」
続いて、ついこの間にクロードをカラオケに誘った少年の一人が、そう言った。
途端に。
クロードの中から、嬉しさが込み上げて来た。
そして。
それを皮切りに、皆が口々に言う。
言う。
言う。
言ウ。
イウ――
「……っ!」
クロードの中から、嬉しいなどという感情は失せていた。
彼は認めたくなかった。
その時。
ある女子生徒がクロードに向かって、こう告げたことにより、クロードは確信する。
「俺はお前の友達だ」
決定的だった。
前の方だけ。
クロードの近くに位置している人だけ。
口を開いて。
狂ったように。
壊れたように。
同じ言葉を、延々とその口から垂れ流す。
「俺はお前の友達だ」
男も。
女も。
関係なく。
まるで、呪文のように。
呪詛のように――
「……もう、止めてくれ」
消え入りそうな声で。
クロードは皆に懇願する。
「……」
その途端に、ぴたり、と声が止む。
確定。
皆がふざけている訳でないのならば、確定していた。
「……今日はもう帰るって、先生に言ってくれ」
クロードは唇を噛み締めて、皆に背を向ける。
眼を逸らす。
「あと……ごめんな」
そう言って、彼は教室から出て行った。
謝ることではないのかもしれない。
無意識だったのだ。
「……はは」
乾いた虚しい声が、静かな階下に小さく響く。
ふらふらと、足取りがおぼつかない。
絶望。
皆の反応に絶望しているのではない。
「……ッ」
階段を踏み外し、床に身体を叩きつけられる。
残り一段だけだったので、大した痛みはない。
しかし、彼の心は痛かった。
泣きたかった。
だが――泣けなかった。
情けなかった。
「ああ、そうか」
もう一度。
彼は自分に認めさせるために、口にする。
否定できない程に。
自覚させるために。
「……良く聞け、俺よ」
誰かが聞いていたら、悲しい声だと感想を口にしただろう。
でも、今は誰も彼の傍にはいない。
いるはずもない。
「俺は……」
クロードは、階段に横たわりながら、自らに向かって宣言した。
「俺は――魔王だ」




