新たな光へ
「おめでとうございます!」
ローベスさんはいつになくニヤニヤとしていた。
久しぶりにここに帰って来た。
政庁に戻って来たのだった。
そもそも、ここに来るまでにまた色んな町を経由してきたが、どこかしこでも俺たちを祝福してくれる催しが行われていた。それだけで素通りにするのも申し訳が無いということで、長い時間滞在したりしていて、当初の予定を大幅に超えてバックスエッジに帰って来た。
そこでも、通りには皆が待ってくれており、盛大な歓迎を受けた。
兵士たちはそれから直ぐに眠りについてしまって、俺も眠気はあったがローベスさんとの話はしなければならないと思って政庁の会議室に来ている。
「いやいや。俺は何もしていなんだけれどもね」
「我が父が大興奮しておりました」
確か前にもローベスさんの父は軍学者であり、今でも研究をしていたことを思い出した。
「話す機会があったんだね」
「昨日来ましてね、わざわざ。まだ帰っていらっしゃらないというのに、えらく興奮しておりました」
「それは良かったけれど。俺は本当に何もしてないからな?」
「そんなことは。確かにカズは他に比類なき働きをされていたそうですが。リンも思っていた以上に、この町に恩があって。それをしっかりと果たしてくれています。マイさんも弓の技術は素晴らしいですから」
「うん。そうだねえ。何か凄い人たちが集まってくれてたって感じかな」
「それに、フェリさんも本当によく治療をしてくれましたから」
「うん、大きな怪我をしたって人もいないし、ミナリ―は前線で俺の指揮の相談も乗ってくれたしね」
「そうですね。実はフェリさんも、さっき戻って来て少し作業をしていらしたんですよ。彼女は、呪術に関しては超一流ですからね。武術とは違う能力を持っています」
そう言えばそうだった。
彼女は俺に掛かった呪いを浄化してくれたのだ。
魔術はまだ解明されていないらしいので、使える人間も生まれ持った才能でそれをどうにか活かすということしかないが、フェリちゃんはその中でも能力が上位ということだからよほどの選ばれた子なのだと思う。
「とにもかくにも、此度はおめでとうございました。きっと、これがバックスエッジの繁栄にも繋がってくると思いますよ!」
「そうだと良いなあ」
俺はそう言って会議室を出ようとする。
さすがに眠たさが勝ってしまっている。
「あ、ちょちょっと」
「ん?」
「まだ報告は終わっていませんよ! お試し合戦に行っていた間のことについて」
「あ……ああ」
俺は今日は長くなることを覚悟した。
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翌日、俺は気を遣われてか二時間も寝坊をさせてもらえた。
その後準備をして、政庁の領主の間へと入っていこうとした矢先だった。
「あの!」
フェリちゃんがやって来る。
とてとてと、慌ただしい音を立てて来る。
カズもその後ろに続いている。
「殿ォ、起きたんなら言ってくださいよおお」
「そんなら、寝室の前におってよ」
「それは宰相殿に禁止されました!」
ああ、そうなの……と笑いそうになってしまう。
「で、フェリちゃん、どうしたの?」
「ま、ままま」
「ま?」
「祭です!」
「まつり?」
「そうです! 祝勝会のための祭りをやろうって企画があがって。皆その気なんですうう」
「えええ」
まあ、確かに。商売的には良いのかもしれないけれども……。
そんなとんとんと決めていいんかな……。
でも、皆の盛りあがり方はしっているし、あれだけ見送ってくれたのだ。
これを返さずして領主は務まらねえ!
「よっしゃあ! やろう!フェリちゃんも、皆を集めてくれ!」
「はい!」
バックスエッジでの、新たな企画が、始まろうとしていた。
太陽はいつも以上に眩しかった。




