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不幸の手紙?

 のんびりとしている。

 あれから市場に出ても、よりみんなから声を掛けられるようになった。

 他にも、銀行に資金を借りて新たな事業を始めようという者も一定数出ている。


 まだ完全にやり得という訳では無いにしても、このバックスエッジの豊饒な土地を活かしたものは、別の土地では大人気になっている。

 特にマイちゃんの実家のリンゴなんかは、帝都にも出されており、大人気になっている。

 ひょっとしたら、帝都に支店を出そうかなんて話し合っているという状況だ。


 しかし、ここ最近で人を雇いすぎたことは否めない。

 ローベスさんは、関係各所との話し合いや連携、友好を求めるための調整をしてくれている。

 そのためにミナリーが協力をしたりして、何とか俺が領主としてやっていけている。


 兵士も今までは、必要最低限しかいなかったが、リンを頭目とする一派が味方になってくれており、常備兵の数としてはまだ十分ではないが、強さで言えば相当のものになったと思う。


 ここ一週間はようやく腰を据えて落ち着けるといった感じだ。

 朝はほどほどに起きて、政務をするが、基本的には報告書を見たり、重要なことには判を押す。

 昼からはサボりと言いつつ、市場や田畑を巡察していく。

 時には軍にも顔を出したりして、リンたちの様子も確認する。

 夕方にはまた戻ってきて、ローベスさんやミナリーらから話を聞く。


 それが済んでしまえば、みんなで夜食を共にしたりと結構楽しくやれている。


「もうあと少しで、ローベスさんの報告があるな」


 時刻はもう夕方だ。

 俺がいた世界にはテレビとかあったからなあ、暇はつぶせたんだけれど。


「ああ、そういえばあのアニメの続きはどうなってんだろ」


 こうした妄想はよくしているのだが、致し方あるまいと納得させる。

 それ以上にここの人たちと話すことに楽しみを感じている。

 ローベスさんもミナリーも基本的にここに住んでいるし、カズも軍の宿舎にいる。

 フェリちゃんも実家は近いし、マイちゃんも少し離れた女性宿舎にいて何かとみんなが集まりやすい。


「入ります」


 とんとん、と戸を叩いていつものみんなが入ってくる。

 カズは護衛をしてくれているが、こうして俺が単独で動くときも時にはある。

 マイちゃんはこのあと皆で食事をするというから、ついてきただけでだったが情報を共有しておいてもだ丈夫だろうと俺が判断した。スパイってわけでもないんだから。

 フェリちゃんも、いつの間にやら事務方で出世をしていて、うちの重臣たちは非常に若い構成になっている。それでも何とかなっているのは、ここの人たちが、若者になんとか仕事を任せてやろうという気づかいなのだと思う。


 カズと今週の巡察の報告をするが、特に何もなかったという。

 ただ、治安を乱すならず者の集団がいたが、リンたちが蹴散らしてくれたということだった。

 マイちゃんもこの戦いに参加していたという。

 どうやら、もう共同作戦を取れるようになっているのかも知れない。


「リンさんたちは、みんなと打ち解けられたかな?」


「はい。おかげさまで。俺たちの身の上を理解したうえでよくしてくださってます」


「ここは人が良い人ばかりだからね、安心したよ」


 フェリちゃんは、農民の人たちからの陳情が少しずつ増えていることを指摘してくれた。

 まあ、それに気づいたのはベテランの人らしいけれども。

 こうやって報告会にフェリちゃんを送り込むということは、自分の手柄にして来い、という粋な計らい

なのだろう。


「その陳情がどういった内容なのかを分けてもらって、調査をお願いしていいかな?」


「はい! 分かりました!」


 笑顔を見せてそう言う。

 ピリッとする報告会には、こういった明るさが必要だと思う。

 何事も明るいほうが俺は好きだからね!


「あのう。申し上げにくいのですが」


 そうローベスさんが切り出した。


「どうしたの?」


「ん~、今回はあたし、渉外との二人で報告するわ」


「うん……」


 ローベスさんとの話ということは、外交関係? に関する何かしらがあったということになる。

 まさか……。周りの領主と上手くいっていない! というまさかの報告か!?

 だとしたら……俺っちがどうにかするしかないのか!



「実は……帝都から手紙なんですが」


「帝都?」


 予想外なことだった。

 前にミナリーが来た時には、知事たちから使者が来たが、何やら今回はそれよりも大きなことなのかも知れない。


「そうよ、良かったわね」


「いやいや。良いのかね? だって、こんな田舎にまで手紙かなんかを持ってきたんでしょ? やばい内容なんじゃない?」


「そうかしらね。本来ならあんたが先に読むべきなんだけれど、今回はあたしが先に読んじゃった!」


「えええ……。読んじゃった、じゃないよもう。それで内容は?」


「えへん! 大お試し合戦のお誘いよ!」


「はい?」


 皆が色めき立っているのが分かった。

 ローベスさんは、いやだいやだと言わんばかりに首を振る。


「さあ! お試し合戦のお誘い! 受けるしかないわよね! というか、あたしがもうやります! て言っておいたからね!」


「はいいい!? もはや領主俺じゃないじゃない!」


「ふふふ! カズ! リン! マイ! めがね! 盛り上がっていくわよおお!」


 この子は……何をこんなにテンションを上げているのだ……。

 そして俺は一体何に巻き込まれたというんだあああああ!


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