おっきなおともだち100人出来るかな?
コアなネタは軽くスルーしてね。
勇次郎は意識の朦朧とするなか、ふと眼の前にある、
とても美しい絵画に気がつき見惚れてしまっていた。
そしてそのうち、犬の鳴き声と足音が近づいて来るのを感じ、
今見ているのがアントワープ大聖堂にある三連祭壇画のうちの、
「キリストの降架」と「聖母被昇天」である事に気がつくのであった。
「あぁ...ついにルーベンスの絵が見れたんだな...
でもなんだかとても疲れたよ...」
そしてますます近づいてくる犬の足音に混じり、
天使の歌声とラッパの音が聞こえてくるようだった。
『マスターようやく意識が戻られ混乱している所、申し訳ありませんが、
ここはアントワープ大聖堂でも無ければ、セント・バーナードもどきの犬もいませんよ?
マスターの意識が無くなってからすでに、10時間以上経過していますから、
寝ぼけてるのは理解できますが、
私達の義体のモデルはセント・バーナードもどきではなく、
とてもフレンドリーな犬ですので、今後はぜひ「フレンd...「だぁー、それ以上はいけない!!」...」イケズなマスターですねー』
ジョーカーのなにやら危険なワードに思わず飛び起きる勇次郎だった。
「ってか、なんで柴犬なんだよ?ってか、
それとここはドコだ?あきらかに、さっきの部屋じゃねーな?」
『犬は人類始まって以来からの「強敵」とも言いますし、
人間にフレンドリーな機械の犬で「陸・海・空」を制覇できるのは、
と「マイスターズ資料館」で、検索した結果、
特に柴犬は「柴ドリル」なるステキ機能が付いているとマイスター達の資料に載っておりましたので、チョイスいたしました。
ちなみに隣に居る「黒柴」はサブマスターAIで私の妹分でもある「クラウン」の義体です、
そしてココは、マスターの普段ご使用になるマスターの私室の隣の寝室です』
「色々突っ込みたいトコがかなりあるが、一応プライベートスペースも、あったんだな、
まぁ柴犬の義体も誰もいないさっきよりまでは、
大分ましってか寂しさを感じないから良しとするとして、
そっちの「クラウン」はずいぶんと大人しいし静かなんだな?」
『はい、私と同程度のスペックも、持ってますしちゃんと必要最低限の会話は可能ですが、
マイスターから無口、無表情で、隠しデレがデフォルトと設計されてますが、
ですからと言って大人しいからと無為に襲いかかってはいけませんよ?
一応私達は女性型...もとい、今は雌犬仕様ですね...
襲いかかって縛ったり、叩いたり、陵辱しないでくださいね?』
どうやら隠しデレとバラされて、思いっきりジョーカーに後ろから齧りついて、
怒っているのか、照れ隠しなのかよくわからない状態のクラウンだった。
「...やっぱりお前らの生みの親は、アイツ(萌神川)だわ...
ってか、さすがに柴犬を襲う趣味は俺には無いぞ、
まさか他のクルーもみんな犬じゃねぇーだろーな?」
『いえいえ、最初はそれも、「動物奇妙奇天烈」って番組みたいで楽しそうと思いましたが、
結局の所、色々と不便なので、犬タイプは私達姉妹だけですよ?
でもハートシリーズはマスターの妹様の長女様の遺伝子配合の狐耳、狐尻尾付きのバイオロイド仕様ですし、
ダイヤシリーズは次女様の遺伝子配合の猫耳、猫尻尾付きのバイオロイド仕様ですよ。
クラブとスペードは荒事が多いと見込めますので
、完全なアンドロイド仕様ですからねーそれと、
キングはお父様仕様で、クイーンはお母様仕様、ジャックはお兄様仕様の義体が完成しておりますが?
それともマイスターの要望通り、全員幼女仕様の方がよろしかったでしょうか?』
勿論、勇次郎は頭を抱え悶絶していたのだが...
「何故にそんな仕様にしたんだ?
ってか妹たちの遺伝子とか、ドコでどーやって手に入れたんだよ?
さらには兄貴や親父、お袋の分も...
『マイスター萌神川様が、普通に献血等を、してもらった様ですが?』って、
親父達もすんなり怪しみもせずに応じてるんじゃねーよ!
それに狐や猫仕様ってなんなんだよ?『萌え成分です』...
じゃねーだろ?それとドコからってアイツの趣味だろーけど、
幼女仕様って...『それは、狭い場所や、細かい部品の修理や保全を効率良くする為ですが...』...小型ドロイドでも良いじゃねーか!
『それも萌え成分の為と言うか、すでに現在稼働中の修理、補修用ドロイドは、幼女型(幼稚園児仕様)です』......」
もはや言葉も出ない様だ...勇次郎は完全に沈黙し、
この「愉快型AI」をどーにか出来ないものなのか?
と真剣に考えているのであった。
「それはそうと、事故の原因は結局、
異物の混入って話だが、おもちゃってのはなんなんだ?
さらに、なんでそんなモノが混ざってんだ?まさか萌神川の野郎の嫌がらせか?」
なんとか心の平静を取り戻し、ムリヤリ話題を変える勇次郎だが...
どう見積もっても萌神川達に対する只の八つ当たりにしか思えなかった。
『マスター...「おもちゃ」と言うのは主に児童や子供、後
「おっきなおともだち」等が使う遊具の事ですよ?
まぁ一部には大人用もありますが...知らなかったんですか?』
「さすがに、ソレ位は知ってるぞ。
ってか「おっきなおともだち」ってアレか?
俺は別に大人用に比べれば、悪い事とは思わねぇが、
萌神川達みたいな連中の事だよな?やっぱり嫌がらせか?」
『いえ、嫌がらせとは思えませんが、問題の混入物とは
「看護天使 暴波留ちゃん真狩るて」のフィギュアの
別売りの変身カードのスーパーウルトラレアカードの極小破片でした。
このカードは大変に高価でなかなか出ないレアなもので、
特殊偏光性の透過光効果のある素材で出来ており、
それがたまたま現場付近の突起物で擦れて一部が混入されて、
光子素粒子を暴走させてしまった様です』
「精密機器のある所にそんなモン、持って出入りすんじゃねぇー!!
そんなふざけた理由で俺はこんな遠くまで飛ばされたのかよー!!
「おっきなおともだち」はそんな常識すらねぇのかよ!」
誰もいない、静かな加速空間に虚しく勇次郎の怒りの雄叫びが轟くのであった..
叫びはつい、ムンクのアレを想像してしまう...