四.鉄は熱いうちに打つこと
パァンッ!!
日根野道場に快音が響く。
竜馬が19歳になった年の正月。
恒例行事となっている大試合にて、竜馬は目録者2人と試合をして圧勝した。
面と銅を鮮やかに打ち取った竜馬の太刀筋に、弟子たちは皆、目を見張るばかりであった。
19歳になった竜馬は5尺8寸(約174センチ)まで身長が伸びた。
この数値は、当時としては大柄な人物の部類に分けられ、彼の堂々たる姿を見た町民たちの中には、
「あれが、あの泣き虫小僧か!・・・嘘や~ん!信じられへん!!」
と、にわかに信じない者もいた。
とはいえ、竜馬が偉丈夫(=筋肉モリモリマッチョマンの変態)であり、剣の腕前が一流であることは疑いようのない事実である。
(う~む・・・大した奴だ。まさか、ここまで成長するとは夢にも思わなんだ。)
彼の師である日根野弁治もまた、成長した彼の姿に驚きながらも、この試合を見て、とある事を決心した。
試合の翌日、日根野弁治は竜馬に目録を与えた。
19歳の若さで目録を日根野道場でもらうことは異例のことである。
この出来事は、当の本人よりも家族の方が喜んでいた。
「目録!? あの目録か! ・・・竜馬が目録! 目録~~~!!」
と、兄の権兵が騒げば、
「わしの目は節穴じゃった! まさか、あの竜馬がこれほど成長するとは!! 竜馬万歳!!」
と、父の八平がはしゃぎだす。
わいわいと2人が喜び騒いでいると、権平が父に、とあることを提案した。
「父上。少し金はかかりますが、竜馬を江戸へ剣術修行に行かせましょう。そして、ゆくゆくは城下で剣術道場を開かせるのです。こうすれば竜馬の将来は安泰ですぞ。」
「ほほう。なるほど、なるほど。・・・それは良いな!面白そうじゃ!」
「でしょう!『鉄は熱いうちに打て』です!竜馬の成長が終わる前に早速準備に取り掛かりましょう!」
「うむ!準備開始じゃ!ヌハハハハ!!」
テンションMAXの2人は颯爽と準備を始め、竜馬の師である日根野弁治の元に相談に向かったのであった。