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02

Middle Phase


01 不穏        シーンプレイヤー:巽柳季


GM: ではまず、一つこちらからのシーンをやりましょう。シーンプレイヤーは柳季!

柳季: はい。(ダイスを振る)……上がるねー。

GM: ちょっと、1D10振ってみて。

柳季: ほい。(ダイスを振る)2。

GM: んじゃ、瑞季が転入してきて二日目。

柳季: 二日目?

GM: うん。たまたまキミが、忘れ物したか何かで教室に戻ると、瑞季が一人で居るね。そして、キミの姿を見ると、ピタッと静止する。

柳季: 静止されちゃった……。えと、じゃあ――――覚えてんのか? って聞く。

GM: 「(上ずった声で)んなッ、何のことだ!?」(一同笑)

柳季: 何か色々、覚えているのだということは、よく分かった(笑)。因みに、俺のこと覚えてんの? って聞いただけのつもりだよ?

GM: うん、大丈夫。GMは分かってる。瑞季は勘違いしてるけど(笑)。

柳季: あたふたさせてしまった……困ったな。えーと……お前今、何処に住んでんの?

GM: 「いきなり乙女の住所を聞く奴があるか!」

柳季: だってお前が昔住んでた家、もうないだろ!?

GM: 「第一、久しぶりの一言も無いのはどういうことなんだ!?」

柳季: 久しぶりも何も、もう二日目じゃねーか!

GM: 「挨拶の一つも無かっただろう!?」

柳季: お前が知らない振りするからだろーが!

GM: 「し、知らない振りなんかしてない! あの時は、『いつでも帰って来い、待ってる』とか言ってたじゃん、柳季っ!!」

柳季: そこまで覚えてたんなら、帰ってきたのになんで連絡の一つも寄越さねーんだよ!?

GM: 「同じクラスなんて、知らなかったから!」

柳季: 同い年なんだから、通う学校ったらココしかねーだろうが!

GM: 「クラスは5つもあるじゃない! ――――あーもう、ただいまっっ!!」(一同笑)

柳季: 頭をがしがしとかいてから――――……お帰り。んで、お前今何処に住んでんの?

GM: 「だから乙女の住所を――――!」

柳季: だからって、お前一人で帰んのかよ?

GM: それを言われると、きょとんとした後に、「い、一緒に帰ってくれるのか?」

柳季: 今の時期だと、この時間もう暗いんだから、一人で帰るのあぶねーだろ。

GM: 「そ、そんなことして、お前は大丈夫なのか?」と、目を逸らしながら言う。

柳季: 何が?

GM: 「そ、その……か、彼女――――とか。」

柳季: はぁ!? そんなの居たら、声かけねーよ。

GM: 「そ、そうか。じゃ、じゃ、じゃあ頼む……。」

柳季: 行くぞ。って、瑞季ちゃんの鞄を持ってく。

GM: すると瑞季は、大人しく後ろをついてくるね。なんか、無口になった。

柳季: 道案内はしろよ。

GM: じゃあ、キミの服の袖を持って、「あっち。」って案内する。

豊前: 瑞季ちゃんって身長いくつ?

GM: 146cm。

豊前: 俺より1cm小さいだと!? ……負けた。

柳季: なんで最小身長を競ってんだ。

GM: てか、ちっこいのしか居ねえ(笑)。

豊前: 詠子さんが170cmだから、柳季の次に大きいね。

GM: せやな。……で、下校中なんですが、雑談の話題を3つほど選んでいただけますか?

柳季: なんだろう、このギャルゲーみたいな感じ(笑)。んじゃあ、まずは住んでる場所の話かな……。

GM: では、細かく教えてくれるね。

柳季: あとは、兄ちゃんと一緒に住んでるのか、とか。

GM: なるほど。では――――。


 一緒に帰り道を歩きながら、ぽつりぽつりと話をする二人。

瑞季の話によると、今は事情があって、少し離れた場所にあるウィークリーマンションに

仮住まいという状態らしい。

「この街に落ち着くことが出来たら、何処か探さないとな。」


柳季: ……流石にウチに来いとか言えない。

GM: ちらっ、ちらっと、キミのほうを見て、聞くよ。「――――一人暮らし、なんだよ、な?」

柳季: ああ、まあ。

GM: 「部屋は空いて……る、かな?」

柳季: まあ、無くはないけど……。


 「兄ちゃんと、一緒に住んでるんじゃないのか?」

当然のように聞いた柳季の質問に、瑞季は端的に答えた。

「――――兄は、もう居ない。」


一同: ええええええっ!?

柳季: やべえ、地雷踏んだ! それは、これ以上突っ込めないので、――――悪かったな、って言う。

GM: 「なんでお前が謝るんだ?」

柳季: そういうことは、あまり話したくないものだろう?

GM: 「逆に聞くが、お前に話さなくて、誰に話せって言うんだ?」

柳季: お前が話したいんなら聞くけど、俺の方から突っ込んで聞いていい話じゃないだろう。

GM: 「お前は昔から物分かりがいいな。」と、苦笑する。

柳季: …………。

GM: 「正直言うと、詳しくは話せない。……詳しくは話せないが――――兄は立派な死に方をした。」

柳季: 言っちゃったー!? っていうところで、おうちに着いたりしない?

GM: まだもう一つ、話題がありますので……。

豊前: この重たい空気で、もう一つ別の話題って、何を話せばいいんだろう?

GM: ちょっと、このシステム面白いでしょ?(一同笑)

柳季: んー……じゃあ、しばらく黙った後で、何か困ってることとかねーの? って聞く。

GM: すると、彼女の表情はすっかり柔らかくなって、嬉しそうにキミの方を見てるね。「今のところは、あまりないかな。……少しの間、ドタバタするから、一緒に帰れない日が多いと思う。」と言う。

豊前: ドタバタ、ね……。

GM: 「私が誘ったときに、一緒に帰ってくれるか?」

柳季: それは、別にかまわねーけど……。――――じゃあ、連絡先。と、スマホを取り出す。


 柳季が瑞季と連絡先を交換しようと、立ち止まったその時。

身長180cm超で、髪は赤のモヒカン、鼻にピアスをして、赤い革ジャンにジャラジャラとしたチェーンを巻きつけた、見るからに不良といった風体の男が現れた。

「オーヴァードくせえ臭いがするなぁ。……お前ら、どっちがオーヴァードだぁ? ま、どっちでもいーか。両方食っちまえばいいんだからなぁ!」


柳季: 瑞季ちゃん、隣に居るんだよね?

GM: 勿論。

柳季: とりあえず、瑞季ちゃんを後ろにかばう。

GM: 「はん。てめーの方がオーヴァードか。だったら、そっちに居るメスの方は逃がしてやってもかまわねーぜ?」


 男の声に答えるように、瑞季が柳季よりも更に一歩前に立ち、「いや、私だ!」と声を上げた。


柳季: また瑞季ちゃんに守られるとか、トラウマ刺激されすぎるんですけど……。(一同笑)

豊前: 「(男になって)なんだぁ、てめーだったのかぁ。じゃあ男のほうはどっか行きな!」

紗代: 「(同じく男になって)一般人には興味ねーんだよぉ!」

GM: ――ってなことを言った。

柳季: じゃあ、瑞季ちゃんの肩をつかんで、こういうときくらい見栄を張らせろ、お前は! って言う。

GM: じゃあ瑞季は、その手をぱしっと払いのけて、「悪いな。これは不良の喧嘩とはワケが違うんだ。」と言って、《ワーディング》を張る。

豊前: 「(男になって)なんだぁ、女。やる気満々じゃねーか! 後ろの男は――呆然としてんなァ。戦闘不能かぁ!?」(一同笑)

GM: ということで、ここで戦闘ラウンドに入ります。セットアップ、何かしますか?

柳季: しないよ。

GM: では男――――コードネーム“レッドブル”は、《フルパワーアタック》を宣言。

豊前: これ、突進してくるんだぜ、きっと(笑)。

GM: そうだよ(笑)! で、柳季はイニシアチブいくつですか?

柳季: 7です。

GM: では21の瑞季が動きます。

一同: 早すぎだろっ!?(笑)

GM: 柳季の手を振り払って、そのまま《スーパーランナー》《猛毒の雫》!

紗代: ソラリスなのに行動値21もあんの!?

GM: で、《ウェポンケース》で武器を瞬時に出す!


 だぼっとした見た目のダッフルコートの懐から、何かを抜き放つ瑞季。

その刀は、水で濡らしたかのように煌いている。


GM: そして、《アドレナリン》《コンセントレイト:ソラリス》で斬りかかる!(ダイスを振る)

柳季: これ、俺が選択肢ミスると、瑞季ちゃんがジャームになるシナリオ?(一同笑)

GM: (笑)。すげー、達成値57とかいってるけど。ダメージが(ダイスを振る)47点!?

豊前: こりゃ死んだろ。

GM: いや、死なねーんだわ。持ちこたえてる。


 瑞季の目にも止まらぬ速さでの一閃を受け、“レッドブル”の身体が袈裟懸けに斬られ、血が吹き出る。

だが“レッドブル”は倒れず、にいぃと口元を歪めた。


柳季: やばい……。カバーリングとか持ってないよ。

紗代: 先に倒しちゃえばいいのですよ。

柳季: ですな。……ってこれ、相手との距離ってどれくらい?

GM: 5mほど離れてますな。

柳季: 武器が作れない……っ! 仕方ないので《インフィニティウェポン》だけして、メジャーは放棄!

GM: 了解。では、“レッドブル”の番。(ダイスを振る)26。

豊前: 瑞季ちゃんに行くんだよなー、攻撃が。

柳季: まあ、死なんだろ。(一同笑)

GM: 瑞季は《アクロバット》《リフレックス:ハヌマーン》で避けますよ。(ダイスを振る)二回クリティカルして、32で避けた!

豊前: <回避>8レベルもあんの!?


 キュマイラの力を駆使して、獣化した“レッドブル”の突撃を、瑞季は苦も無く避けてみせる。


GM: そして、クリンナップで邪毒のダメージがいきます。

豊前: どれくらいダメージいったの?

GM: 45点。

豊前: よ……! マジで!?

柳季: それで、“レッドブル”は死んだ?

GM: うん。流石に無理。

豊前: てか、邪毒ランク9って、バカじゃないの!?

柳季: 瑞季ちゃん、敵に回したらアカン奴や……(笑)。


 “レッドブル”の攻撃を瑞季が避けた直後、“レッドブル”の傷口が「蠢いた」。

かと思うと、“レッドブル”の背中から植物が生え、見る間に育った蓮の真っ白な花びらがぱっと開き、血の色に染まる。

生贄(サクリファイス)(ロータス)』。

そして、その花びらがはらはらと散ると同時に、“レッドブル”の死体は跡形もなく消え去っていた。


GM: それが終わると、瑞季は即座にキミの方に振り向いて、「だいじょうぶ――――。」

柳季: まあ、普通に立ってますよね。

GM: 「……か?」

柳季: マイナーで作った武器持ってるね。(一同笑)

GM: あ、瑞季は《ワーディング》を解きますよ。

柳季: ――じゃあ、俺が《ワーディング》を張るよ。

GM: 瑞季がショックを受けた顔をする。

柳季: 自分で作った二刀流の和刀を手元でくるっと一回転させて、瑞季の方につきつけて、

――こういうことだよ。って言う。

GM: じゃあ思わず、手に持っていたキーンナイフを落として……。

豊前: キーンナイフ!? 思いっきりFHだーっ!!(笑)

GM: で、泣きそうな声で「な、なんで柳季が私に刀を向けるんだ……?」

柳季: そういうつもりじゃなかったんだよ! まあ、その刀は崩して、お前が出てくんなって言ったからだろ! って言う。

GM: じゃあ、しばらく何が起こったか分からないみたいな沈黙があって「―――じゃ、じゃあそれは別に、私に向けていたワケじゃないんだな!?」

紗代: かわいい……(笑)。

GM: そして、へなへなとくずおれて、「良かったぁ……。」

柳季: 《ワーディング》を解いて、立てるか? って聞く。

GM: すると、こくりと頷いて、急いでナイフをしまいこんで、立つ。しまったぞ、みたいなドヤ顔です。

柳季: (笑)。――――で、俺ってFHのことは……。

GM: 「こんな組織があるよ」ってくらいしか知らないんじゃない?

豊前: オレは、思想の違う組織だ、って話しかしてないと思う。

柳季: じゃ、鞄持って、瑞季の手を引いて、家まで帰りながら。――――お前、いつもあんなコトやってんの?

GM: 「まあ、大体。」

柳季: さっき言ってた、一緒に帰れない日があるかも、ってのも……アレ?

GM: 「えっと――――まあ、大体。……詳しくは話せないって言ったろ!?」

柳季: 思いっきり巻き込んどいて、何を今更(笑)!

GM: 「だから、巻き込まないように《ワーディング》張ったじゃないか! なんでお前もオーヴァードなんだよ!?」

柳季: ンなこと言われても、なっちまったもんはしょーがないだろうが!

GM: と、そこで、はっ! と気がついたような顔になって、「私と一緒に来ないか!?」って言う。

紗代: これは妙案(笑)。

GM: そうそう。そんな感じの顔で言った。「あ……でも、お前を危険なことに巻き込むわけには……――うーん。」

柳季: ってところで、瑞季ちゃんの家に着いたってことで! ――――着いたけど。

GM: 「お、お、お茶でも飲んでいくか!?」

柳季: ……時間は?

GM: 「私はいつでも大丈夫だぞ!」

柳季: 違う、そうじゃない!(一同笑)まあ、大丈夫そうな時間だったということで……寄っていくのかなぁ。

GM: というところで、シーンを切りましょう!


02 判明     シーンプレイヤー:一ノ瀬豊前


GM: じゃあ次は支部長のシーン!

豊前: おう(ダイスを振る)。

GM: 支部で合流して、状況を確認している感じですので、紗代も登場で!

紗代: はい(ダイスを振る)。

GM: ということで、市内及び周辺のレネゲイド観測装置の値を精密に計測した結果、結構な数のオーヴァードが、もう既に市内に潜伏しているんじゃないかという感じです。

豊前: FHと、どっか判らない組織が。

GM: うん。もしかしたら、FH同士かもしれないけど。

紗代: そうだね。セル同士で利害が合わなかったりしたらね。

GM: そうそう。で、最低限一人は、FHエージェントが居る。

紗代: 健一だね。

GM: という状況を確認しました。

豊前: で、“光の槍”に接触してきた“神鳴る盾”というFHエージェントについては、それ以上のことは判ってないんだな?

紗代: 今のところは。

GM: というところで、1シーンに1回、情報収集が出来ることとします。

豊前: はーい。調達判定は別ってことでいい?

GM: うん、いいよ。

豊前: ――――じゃあ、“グリーンハンド”。

GM: 「はい。何でしょうか。」

豊前: “神鳴る盾”を含めたセルについて、調べられるか?

GM: 「はい。UGNのデータベースにアクセスして、今までの事件のログを洗い直せば、ある程度のことは調べられるかと。」

豊前: よし。じゃあ、よろしく頼む。今、そのセルが何を目的としてこの市に来てるのかってこともな。

GM: では、詠子さんが情報収集判定をすることにしましょう。《領域の声》《コンセントレイト:オルクス》を使って、7Dで(ダイスを振る)すごいよ。<情報:UGN>が2レベルあるので、37!

豊前: さっすが! 頑張り屋さんだ。

GM: そうだよ。頑張り屋さんだよー。


 乙原の調査能力により、“神鳴る盾”の所属するセルは、構成員が2名だけだということが判った。

そのセルに所属しているエージェントのコードネームは、“血塗(ブラッディ)れの(ロータス)”と“神鳴る盾”。

セル名は“沙羅(さら)双樹(そうじゅ)”。

このセルは、他のFHセルと競い合いながら、「遺産」を集めている。


豊前: あー……。

紗代: リプレイのデイズとかに出てきたやつ!

GM: です。で、「遺産」集めをしているセルって結構多いんですよ。特定の「遺産」が欲しいセルとか、手当たり次第に「遺産」が欲しいセルとか、色々あるんで。

豊前: ふぅん……。

GM: そんな中で、彼らが何故「遺産」を欲しているのかというのは、よく分からない。第一、規模が小さすぎるセルなので、興味を持っている奴も少ない。

紗代: なるほど。

GM: ただ、その割には、大量の有象無象を抱えてるセルを出し抜いたりして成果を上げることもあるので、要注意と思われている。

豊前: そっか。目的不明ってことね。ま、「遺産」関連ってことは間違いないんだろう。ってことで、この辺で「遺産」関連の情報って、あったりするのかな?

GM: 「いえ、UGNが確認している限りでは、この街に「遺産」は存在していません。」

紗代: ……。

GM: 「もし「遺産」がこの街にある前提で考えるとするなら、伝承を追っていけばあるいは――――とも思いますが、蜘蛛の糸を掴むような話ですよ。」

豊前: なるほど。使用できる技能は?

GM: <知識:伝承>とか<情報:噂話>かな。難易度は非常に高いです。本当に何も関係ないと判断出来るようになる為の達成値は30です。

豊前: そっか……。じゃあ逆に、FHの中で「遺産」関係の情報が流れたっていうコトが掴めればいいんだね?

GM: ああ、そうね。

豊前: ということで、<情報:FH>を使って、「遺産」のことを調べたいな。

GM: 因みに、この辺の地域に限定して、FHの動向ってワードで検索をかけると、その情報が拾える可能性があります。

豊前: それだ! オレ、実はFHにコネがあるんだー。ミーミルの覚え書きを使います! これで、<情報:FH>を振り直せる、ってコネを手に入れました!

GM: どうぞ! 因みにこの判定の最大達成値は20です。

豊前: はいよ! 強化ビジネススーツと《天性のひらめき》を使って(ダイスを振る)!?(即座に)振り直すぜ!(ダイスを振る)7、か。んじゃ、達成値9!

GM: じゃあ、FHセルの動向なんですが、少なくとも二つ以上のセルが、この街に侵入している。

柳季: 二つ以上のセルだとー!?

GM: で、一つはさっき調べた“沙羅双樹”。もう一つは、“堕悪炎武隷(ダークエンブレイ)()”っていいます。

柳季: 俺のシーンに、きっとそのセルの構成員出てきたー!

GM: はっはっは(笑)。

豊前: そうかぁ。――――“光の槍”、今はこんな状況だ。

紗代: はい。

GM: あ、ここで、“堕悪炎武隷巣”について情報収集をすると、達成値16で、さっき最大達成値20で出るはずだった情報が出ますよ。

紗代: じゃあ、頑張ってみようか? <コネ:要人への貸し>あるし。

GM: “堕悪炎武隷巣”については<情報:UGN> <情報:FH> <情報:噂話>で調べられます。

紗代: では、<情報:UGN>で振ります!(ダイスを振る)あ、クリティカルして、21!

豊前: おー、すげー!


 “堕悪炎武隷巣”は、総計200名の構成員全員がオーヴァードで、その中には少なからずジャームが含まれている。

FHの幾つかのセルやエージェントが、人体実験ついでに手勢を増やす為に、麻薬にオーヴァードに覚醒する薬を混ぜて流通させたときの覚醒者や、その周辺に集う者達が、一つに纏まった大集団。

武闘派集団という触れ込みだが、その実、手のつけられない不良少年の巣窟となっている状態だ。


GM: で、そいつらが今、明確な頭が居ないから、皆でイキがっちゃってる状態。

豊前: (嫌そうに)なんでこの街に来たんだよ……。

紗代: 「遺産」のこと聞きつけたんじゃない?

GM: (紗代に)正解!

豊前: 誰かに焚きつけられただけじゃねーの?

紗代: その可能性は高い(笑)。

GM: で、ここで「FHの遺産情報」という項目が出てきます。最大達成値は14。

豊前: これはまずいことになりそうだな。――――“グリーンハンド”。

GM: 「はい。」

豊前: この街は今危険な状態になっている。んで、だ。こないだ頼んだクリスタルシールドが届いてるかどうか、確認して欲しいんだが。

紗代: 調達か。

豊前: そう。《天性のひらめき》!(ダイスを振る)30!

GM: 「あ、それならそこの棚の上に置いてありますよ。」

豊前: クリスタルシールドを棚の上に置いただとぉ!?(一同笑)


 「ここに置いて――――きゃあっ!?」

自身の身長よりも高い位置に置いていたクリスタルシールドを、乙原が取ろうとして手を伸ばした瞬間、盾の重量に耐え切れなかったのか、棚が崩れ落ちた。

「危ない!」

その光景を見て思わず乙原の方へ飛び出した豊前は、数時間前の光景に倣うように、乙原の下敷きになってしまった。


豊前: 乙原さぁん……。

GM: 「す、すみません……。」

豊前: 重たいものは上に置いちゃダメだよー。

GM: 「わ、私が重いと言いたいんですかっ!?」(一同笑)

豊前: と、グダグダになったところで、シーンカットでー。


03 瑞季の葛藤           シーンプレイヤー:巽柳季


GM: さて、次なんですが……本来なら紗代の番なんだけども、さっき出てたからねー。

紗代: 柳季君のほうを進めて大丈夫ですよー。

GM: じゃ、そうしましょう。ということで、柳季!

柳季: はーい。とりあえず、瑞季ちゃんの家に着いたんだよね?

GM: はい。シーンは瑞季の私室から始まります。

柳季: なんだと!?(笑)

GM: 時刻は夕暮れ時。

柳季: (ダイスを振る)8も上がったよ、登場侵蝕率!?

紗代: そりゃあ、夕方に幼馴染の部屋に上がってれば、ドキドキもするよね(笑)。

GM: ですよねー(笑)。ということで、瑞季はお茶を入れてくれますよ。普通に美味しい緑茶。

柳季: 部屋は物がほとんど無かったりする感じ?

GM: まあ、確かに物は少なめだろうけど、アニメのポスターが貼ってあったり、フィギュアが置いてあったりするよ。あとは、コレ抱えてんだろうなって大きさのぬいぐるみがあったり。

豊前: ガチの女の子の部屋だ!

柳季: でも、一人暮らしの私室にいきなり通されるとか、ハードル高いんですけど……。

GM: 「で、私と一緒に来てくれるか?」と聞いてくる。

柳季: んー……。

GM: 「ん? そういえばお前は、オーヴァードなんだよな?」

柳季: らしい、な。

GM: 「誰から聞いたんだ?」

柳季: えっと――UGN……だっけ?


 自信無さげにその組織名を柳季が口にした瞬間、部屋の温度が下がった――――気がした。


GM: 「……そうか、UGNか。」なんだか、瑞季の肩がすごく小さくなった気がするよ。で、続けて言う。「じゃあ来なくてもいいかな……。うん、お前はそのままで居ろ。」

柳季: 勝手に結論出すなよ。

GM: 「でも、なるべくUGNに関わるな。あそこは危ない。」

柳季: ……。

GM: 「お前はきっと、強い。強いから、危ない。」

柳季: じゃあ、こっちが何も言ってないのに、勝手に結論を出されてしまったので……(不機嫌そうに)強い奴が危ないんだったら、お前のほうが危ないんじゃねーの? って言う。

GM: 「ああ、そうだな。……だが、お前に兄のようになって欲しくない。」

柳季: 文弥さんはUGNに居て、戦って死んだ……ってことか?

GM: 「平たく言えば、そうだ。」

柳季: で、お前はそれがあるから、UGNが気に入らないと。

GM: そう言われると、への字口になって「ま、そういうことになるかな!」と言う。

柳季: で、もっと言うと、お前が居ないUGNに俺が行くのが気に入らない、と。

GM: 「平たく言うと、その通りだ! ……でも、来てくれないかとは言ったものの、こっちもやっぱり危ないんだ。」と、頭を抱える。

紗代: 自分が居る場所が危ないって自覚はあるんだね。

GM: うん(笑)。「あぁー! なんでオーヴァードになっちゃったんだー! バカバカぁ!!」とか言ってる。

豊前: かわいいなぁ(笑)。

GM: 「そうだ! 私が声を掛けなきゃよかったんじゃないか!」

柳季: いやでも、一緒に帰ろうって言ったの俺だし(笑)。

GM: 「あぁー、もうー!!」ってなってる。

柳季: ……お前は、俺がどうなったら気に入るワケ?

GM: 「そりゃ、一緒に居てくれるのが一番じゃないか!」

豊前: (低い声で)でも、危ないよ?

GM: 「そうなんだよ、危ないんだよー!!」(一同笑)

紗代: 瑞季ちゃんの、内なる声が聞こえる。

柳季: その危ないってのは、俺がそっちに居ようがUGNに居ようが変わらねーんだろ? だったら別に何でもいいんじゃねーの?

GM: 「…………え!?」

柳季: いやだから、UGNに居ても、お前と一緒に行ってもあぶねーんだろ? だったら今と別に何も変わらないんじゃねーの?

GM: 「じゃ、じゃあ、一緒に来てくれるか!?」

柳季: なんでそうなるんだ!? てか、そもそも行くって何処にだよ?

GM: 「ファ……FHという組織だ。」

柳季: で、毎日あんなワケわかんねーのと戦って? ……何がしてーんだ、お前。

GM: 「ちょ、ちょっと……したいことがあって……。」

柳季: (怪訝そうに)したいことぉ?

GM: 「……。」口を尖らせてるね。

柳季: ……事と次第によっちゃあ、手伝ってやってもいいけど。

GM: 「ホントか!? じゃあ今度仲間に紹介する!」

柳季: そーゆーことじゃなくてだな! だから、お前がやりたいことって何なんだよ?

GM: 「それは、言っちゃうと巻き込んじゃうし……あれ? でも、巻き込もうとしてるのか、私……。んん?」

豊前: (低い声で)でも、危ないよ?

GM: 「そうなんだよ、危ないんだよー!」

紗代: (高い声で)でも、一緒に来て欲しいんでしょ?

GM: 「来て欲しいんだよー!!」

柳季: 内なる声と戦ってる(笑)。じゃあ、一人でうんうん言ってる瑞季に、――――ああ、もう! ……これ、とりあえず連絡先。

GM: 「……ありがと。」

柳季: 俺の住んでるトコは変わってねーから、何かあったら来ればいいし。

GM: 「え!? もう帰るのか!?」

柳季: 泊まるワケにはいかねーだろ。

GM: 「別に私は構わないが……。」

柳季: 俺が構うんだよ。

GM: 「積もる話もあるじゃないか!」

柳季: ……夜通しで?

GM: 「それはちょっと、明日の学校に響くな。――――まあ、11時くらいまでとか?」

柳季: 充分遅いと思うぞ……。

豊前: ブルルル、ブルルル、と柳季の携帯は頻繁に鳴っている。(一同笑)

紗代: そうだよねー。さっきのこと伝えないとだし。

GM: 「そうだ、一緒にご飯を食べよう!」

柳季: ……お前、飯作れんの?

GM: 「……察してくれ。しょ、食料ならあるぞ!」と、冷蔵庫を開けると、コンビニ弁当が買いだめしてある。(一同笑)

豊前: コンビニ弁当を買いだめすんなよ!?

紗代: カロリー○イトとかも冷やしてありそうだ……。

GM: そんな感じ、そんな感じ。「栄養バランスもバッチリだ!」と、胸を張ってる。

柳季: ――――もういいから、お前明日から俺の家に寄れ。飯作るから。

GM: 「本当か!?」と、キラキラした目でキミを見てる。

柳季: ああ。……んで、飯を食って帰れ。

GM: 「ああ、でも困ったな。三日後の分まで買いだめしてあるんだ。」

柳季: どんだけ買ってんだ、お前は!?(一同笑)

GM: というところで、瑞季の携帯にも着信が入ってですね、はっと気付いたように携帯を手にとって「すまない! 用事が出来た!」と言う。

紗代: 分かりやすい!!(笑)

柳季: じゃあ、またダッフルコートを着込みだした瑞季ちゃんの手を掴んで――――ちょっと待て! また、さっきのヤツか? って聞く。

GM: 「さっきの奴は倒したじゃないか。」

柳季: そうじゃなくて! 似たようなことをやりに行くのかって聞いてんだ。

GM: 「ん。今度はちょっと違う!」

柳季: そういう問題じゃない……。

紗代: 瑞季ちゃん、正直すぎる……(笑)。

柳季: 何が違うんだ?

GM: 「お前はFHじゃないから、これ以上は言えない。」

柳季: ……最後に、一個だけ教えろ。危ないことじゃないんだろうな?

GM: 「いや、危ない(きっぱり)。」(一同笑)

柳季: もう、すげー脱力する。

GM: 「でも、私なら大丈夫だ!」

柳季: その自信はどっから来るんだよ……?

GM: 「信頼出来るパートナーが居るからな!」

紗代: 「信頼」できる、「パートナー」ときたもんだ。

柳季: それは――――、カチンとくるよね。じゃあ……お前、俺が此処に居るって言ったら、此処に居るか?

GM: 「いや、帰ってくる。」

柳季: 俺が行くなって言っても行くんだな?

GM: 「勿論だ。」

柳季: ――――わかった。じゃあ行け。俺は帰る。

GM: 「あ、あれ? 帰るの? 今の、残ってくれる感じじゃないの……?」

柳季: お前が行かないんだったら、残る。

GM: 「……わかった。じゃあ、終わったらお前のところに寄る! じゃあ、私急ぐから!!」

柳季: それじゃあ、俺は玄関から靴を持ってきて、窓から帰る。(一同笑)

豊前: 間男が逃げるときみたいだな(笑)。


 「なんで玄関から帰らないんだろう……?」

柳季が帰った後の部屋で、一人呟く瑞季。

「はっ! こうしてる場合じゃなかった!」

そう言うと、いそいそとダッフルコートを着込むのだった。

         ◆      ◆     ◆

GM: ってとこでシーン終わっちゃって平気?

柳季: んー……瑞季ちゃんについてって、調べられるの?

GM: うん。もう本人に聞いちゃったから、FHエージェントとしての瑞季を調べられるよ。あとは、情報項目としては、瑞季のお兄さんについても調べられる。

柳季: ああ、そうね。……じゃ、瑞季ちゃんについて調べようかな。

GM: <情報:UGN>か<情報:FH>で調べられます。

柳季: じゃ<情報:UGN>で。(ダイスを振る)12。

GM: では、瑞季についての情報ですが、FHセル“沙羅双樹”の所属です。で、“沙羅双樹”についての情報も分かる。

柳季: てことは、帰りながらスマホを見ると、そういう情報が来てるんだな、きっと。

豊前: うん。情報はそっちに送ったよ。

柳季: 財産ポイントが4点あるんだけど、16まで達成値上げたら、追加情報出る?

GM: それだと、最終情報の一個手前までの情報が出ますね。この項目の最大達成値は18です。

柳季: じゃあ、16まで出しておこう!

GM: はい。じゃあ瑞季の情報なんですが、組んでる相手の名前が出てきますね。“神鳴る盾”です。

紗代: 信頼できるパートナー、南雲君です。

柳季: やめろー! 柳季のHPは、もうだいぶ0に近いぞ!(一同笑)

GM: で、瑞季のコードネームは“血塗れの蓮”で、必殺技が、さっきのシーンで見たコンボです。エネミーエフェクトの《ポイズンマスター》を使ってるんですよ。

豊前: あー、なるほど。

紗代: 恐ろしい……。

GM: で、最終情報には辿り着きませんでしたが、次に調べるときには難易度が14になります。

柳季: ありがとうございます! じゃあ、その足でUGN支部に向かおうかな。

         ◆       ◆        ◆

GM: と、そういえば、PC間ロイスを結んでないね! 柳季→紗代→豊前→柳季で!

柳季: はーい。

紗代: 一ノ瀬豊前支部長に対して、□誠意/猜疑心で。よく乙原さんの胸に埋まってるところを見かけるので、何なんだろう? って思ってる(笑)。

豊前: 俺は被害者だよ!(一同笑)俺は、巽柳季君に対して□庇護/不安でロイスを取ります。


04 「遺産」           シーンプレイヤー:一ノ瀬豊前


GM: さて、紗代どうする? 作りたいシーンがあれば。

紗代: ……健一には、裏をとってから会いに行こうと思うので、FHの「遺産」情報を調べようと思います。

GM: 情報収集後に会うなら、南雲君と会うシーン内で情報収集ってことにしても良いよ?

紗代: 会いに行くかどうかは、出てきた情報によるからなー……。

豊前: あ、だったら俺のシーンを先に貰って、情報収集しちゃってから、近衛のシーン作れば?

紗代: あ、そうしてくれると有難い。

豊前: じゃ、そういうことで!(ダイスを振る)

紗代: こちらも登場(ダイスを振る)。

豊前: じゃあ、柳季君のラインに、やっと既読がついたので、ちょっとほっとします。(一同笑)

柳季: 既読になった後に、「これから行く」ってラインが入るよ。

豊前: 良かった。

紗代: では、FHの「遺産」情報についてを調べます!<コネ:要人への貸し>を使って<情報:UGN>で!(ダイスを振る)クリティカルしたので、21!!

GM: 14で良いのに……(笑)。えー、FH研究セル・ツータイムっていう所があるんですよ。

紗代: うんうん。

GM: で、ツータイムの報告レポートが出てまして、この加賀峰市に「遺産」が眠っている、と。で、「遺産」の反応が確認されたことは間違いないと。

豊前: ……。


 ツータイムの報告レポートによると、「遺産」の情報が流れてすぐに、多数のセルが加賀峰市へと向かい、衝突。

戦闘や情報戦を含む争奪戦が起き、最終的に加賀峰市に残ったのが“堕悪炎武隷巣”と“沙羅双樹”の2セルだということだった。


GM: まあ、どんな「遺産」なのかとか、ホントに旨みのある「遺産」なのかとか、あるからね。

豊前: なるほど。

GM: 状況と情報を統合した結果、その2セルの他には、横槍を入れてきているセル等はないということが分かった。

紗代: そっかー。……でも、「遺産」自体の情報は出てないんだね。

GM: はい。で、ここから、FH内部で流れている「遺産」についての情報にダイレクトにアクセスすることで、何を巡って争奪戦が行われているのかを確認することが出来るようになります。

豊前: ああ、なるほどね。

GM: これについては<情報:FH>か<知識:遺産>で、振れます。

豊前: どっちが難易度低いとかある?

GM: ないよ。ちなみに難易度は12です。

豊前: OK。んじゃ、それを調べてみるか!

GM: どぞー。

豊前: ミーミルの覚え書きを使って、振り直しのほうの<コネ:FH>を手に入れる! 強化ビジネススーツも使う!(ダイスを振る)お、クリティカルしたので、21!!


 豊前がFHのコネを使って調べたところ、加賀峰市の中央北寄りに加賀峰山という山があり、その山の御神体として過去に奉られていたと言われる、「蛇ちぎりの太刀」というものがあることが判明し、その「蛇ちぎりの太刀」が、実は強大な力を持った「遺産」であり、それが半覚醒状態であるという情報が流れていることが判った。


GM: そのレポートには、由来とかそういうものは、皆興味が無いので、書いてないね。

豊前: なるほど。

GM: で、何故「蛇ちぎりの太刀」がそうだと特定出来たかというと、加賀峰市に残っている刀関連の伝承が、それしかないからです。


 レネゲイドの反応等、様々な面から研究した結果、刀の形状をした「遺産」だということは予め明らかだったので、「蛇ちぎりの太刀」がそれだろうということになったらしい。


GM: なので、実際手に取ってみたら、「遺産」ではない、ただの太刀だっていう可能性もある。

豊前: あーね。


 ただ、半覚醒状態には詳細不明な部分が残っており、恐らく仮契約者のような者が既に存在していて、仮契約者の意志を受けて、活性化する筈だとレポートには書かれていた。


柳季: じゃ、その仮契約者が、今探されてる感じなのかな?

GM: です。


 また、レポートにはこうも書かれていた。

「蛇ちぎりの太刀」が覚醒しきっていない状態ということは、仮契約者が「蛇ちぎりの太刀」の存在自体に気付いていないか、力を引き出せていないかだと。


GM: ――――で、今だ! と。

豊前: そいつを殺してでも「遺産」を奪い取れ、と。

GM: そうです。

豊前: はぁん、なるほどね。

GM: ということで、ここで加賀峰市内の覚醒者についてを詠子さんが調べます。(ダイスを振る)達成値83!?

豊前: すっげえ!

GM: えーと……豊前と紗代。イージーエフェクト何を持ってる?

豊前: 《究極鑑定》《完全演技》《構造看破》《プロファイリング》《仕組まれた幸運》。

紗代: 私は《七色の直感》《シークレットトーク》《猫の道》。

GM: わかった。じゃあ豊前は《プロファイリング》、紗代は《七色の直感》で判定して。

柳季: 俺、今からこのシーン出てもいい?

GM: あ、いいですよ。調べ物してる間に来たってことで。

柳季: 《真偽感知》したらいい?

GM: どうぞ(笑)。

紗代: (ダイスを振る)18だよ!

GM: では、こちらは<意志>で対抗(ダイスを振る)19! なので、紗代には分からないね。

紗代: はーい。

柳季: (ルールブックを見て)あ、これ、目の前で喋ってくれないと分からないんだ。

GM: あ、じゃあ喋りますよ。「該当のオーヴァードは、特定出来ません。」

柳季: GMは、嘘を見抜くために<RC>による判定が必要としても良い、って書いてある。

GM: じゃあ<RC>で振ってください。達成値を出してね。

柳季: (ダイスを振る)あ、2とか。

GM: それはわからねーな(笑)。

豊前: (ダイスを振る)俺は達成値、9。

GM: すると、詠子さんが何かを隠してることが分かる。

豊前: じゃあ、一瞬、ん? って思ったけど、基本的には俺、乙原さんのこと信頼してるから、良いってことにする。

紗代: ……あれ? これ私、乙原さんが対抗したことが分かっちゃうよね。

GM: そうねぇ。

豊前: 紗代と乙原さんとは、長年一緒にやってきた仲だしねー。

紗代: だよねー……。GM、乙原さんって、幾つでしたっけ?

GM: 19歳。

紗代: うん……じゃあ聞いちゃおう。――――詠ちゃん。何、隠してるの?

GM: そ、こまで……直球で聞かれるとは……思ってなかったなぁ。

紗代: 《七色の直感》で色々分かるってことは、隠しごとされることに、とても敏感なんだと思うんだよ。

豊前: ああ、なるほどねー!

GM: そうだよねー……。

紗代: そして、そういうときに腹芸をするような対人スキルは、身につけていないと思うのだよ(笑)。

柳季: そうだろうねー(笑)。

GM: じゃ、あ……詠子さんはふるふると首を振って「確証が無いので、今は何とも……。」


 隠し事を許さない紗代と、自身が調べた事実を頑なに言おうとしない乙原の間に、張り詰めた空気が流れる。

その空気を弛緩させたのは、事態の推移を見守っていた、豊前だった。


豊前: 俺はここで皆に紅茶を出して、まあまあお前ら。根詰めすぎだ、って言う。

GM: 「ありがとうございます。」


 豊前が入れた紅茶を一口飲んだ乙原は、豊前を真っ直ぐに見つめるとこう言った。

「すいません。確かめたいことがあるので、少し調査に行って来ていいですか?」


豊前: わかった。行って来い。

GM: 「はい! では、これをいただいたら、ちょっと出てきますね。」

豊前: ああ、そうだ。柳季君。折角来てくれたのに、挨拶もせずにすまないな。

柳季: いや、別にそれはいいんだけど……。何か取り込み中みたいだし。

豊前: ああ。色んな情報を整理していたんだが――――。


 豊前は柳季に、自分達が調べたことを全て話した。

“堕悪炎武隷巣”と“沙羅双樹”というFHのセルが加賀峰市に入り込んでいること。

狙いは、「遺産」であると目されている「蛇ちぎりの太刀」であること。

そしてその「蛇ちぎりの太刀」が半覚醒状態にあり、仮契約者が加賀峰市に居る可能性があること。


豊前: 第一優先は、FHセル同士の抗争に一般人が巻き込まれないようにすること。で、「蛇ちぎりの太刀」の仮契約者の身の安全を確保するのが、第二優先だ。

柳季: ……。

豊前: で、まあ、出来るだけ早く、この争いを終わらせるのが目標だな。

柳季: (言いにくそうに)あー……で、その“血塗れの蓮”、だっけ?

豊前: ああ。“沙羅双樹”のアタッカーみたいだな。

柳季: ……そいつに、会ったよ。――――っても、やりあってる所に立ち会っただけだけど。

豊前: そうか、そうか。……で、見た感じ、“血塗れの蓮”はイイ奴そうか?(一同笑)

柳季: こっちから吹っ掛けなかったら、喧嘩を買う気はないんじゃねーの? ……俺が居るのは知ってる筈だから。

豊前: そうか。2名だけのセルのエージェントだから、強力なオーヴァードだとは思ってるんだが……。


 「何だったら、そいつらに加勢して、その「蛇ちぎりの太刀」ってのを持ってってもらっちまうのが一番楽なんだがな。はっはっは。」

豊前は、軽い調子で言う。


GM: 詠子さんは、紅茶を噴き出します。(一同笑)「FHに渡していいわけないでしょうが!?」

豊前: あ、ああ。そうだな。FHに渡しちゃあいけないな(笑)!

柳季: ……その「遺産」ってのは、手に入れたら何か、いい事でもあんの?

豊前: ああ、一言で「遺産」っても、色々あるんだが――――。


 豊前の言葉を引き継ぐように、興奮気味に、乙原が「遺産」について説明をする。

そして結びとして、重大な事実を口にした。

「最悪の場合、世界が滅びます。」


柳季: ……それって、すげーヤバいんじゃねーの?

紗代: そうですね……。

柳季: ――――と。それとは別にちょっと調べて欲しいことがあるんだけど。

豊前: お? 何だ?

柳季: UGNエージェントの山代文弥について。――――もう死んでる奴らしいけど。

豊前: 山代文弥、か。

柳季: 俺の、幼馴染の兄貴……なんだ。

豊前: そうか。――今回の件に、何か関わって来そうなのか?

柳季: そいつの妹が、つい最近転校してきた。

豊前: なるほど。――――調べようか。

GM: だが、このシーンで情報収集判定を振ってないのは、柳季だけだ。

柳季: うん。なので、調べてもらったってことにして、振っていい?

GM: どうぞ! 最大目標値は14だよ。

柳季: (ダイスを振る)7だね。

GM: じゃあ、ざっくりは分かるよ。


 “クルセイドクロス”山代文弥。

ノイマン/ソラリスの極支援型エージェント。

戦闘も出来る、UGNの医療班“ホワイトハンド”の精鋭中の精鋭。

「遺産」絡みの大抗争に駆り出され、半年前に戦死している。


柳季: うわぁー……。

GM: その達成値だと、これ以上は分からないんだけど、英雄視されているくらいの人だよ。

柳季: 昔から凄い人だとは思っていたけど、ここでも凄い人になってるよー……。

GM: ね(笑)。

柳季: OK。じゃあ、そんな感じのことを、「遺産」関係の話で興奮気味になってる詠子さんが話してくれたってことで。

GM: はい、いいですよ。

豊前: じゃあ、興奮して話してる乙原さんの肩を揉んで、まあまあ落ち着け、って言う。

GM: では、その手をペシッと払いのけて、ジト目で見る。

豊前: あぁ、ヒドイ……。しょんぼりします。

GM: 「……気付いてるんですからね。」

豊前: ん?

GM: 「肩揉むときに胸見てるの。」(一同笑)

豊前: く、くだらないことを言うな。

GM: 「……ごめんなさいは?」

豊前: ん? 俺的にはスキンシップのつもりだったんだがなぁ。悪かった悪かった。

GM: 「何か納得いかないんですけど!? ……もういいです、私、出ますから。」と言って出て行く詠子さん。

豊前: あー……やっぱりダメだな。日本の女はやっぱりオクテだ。あのくらいのスキンシップは、全然余裕なんだがなー。

紗代: ――――支部長。私もちょっとやりたいことが。

豊前: ん? おう。

紗代: すぐに戻ります。

柳季: 皆、詳細を話してくれない(笑)。

豊前: 信頼されてねーなぁ。

紗代: でも、健一のトコ行くのに、まさか支部長と一緒に行くとか、無理(笑)。

豊前: そりゃそうだよねー。いいよ、大丈夫だよ。

柳季: 俺も、調べること調べたら帰るよー。

豊前: そうか。柳季君、今加賀峰市は危ない状態だから、気をつけてね、とは言う。

柳季: ……まぁ、明らかに見た感じヤバかったしな、あいつ。

豊前: 一般人を巻き込まない為にも、そういうことがあったときには《ワーディング》張っといてね。中には《ワーディング》も張らずに滅茶苦茶やろうとする奴も居るから。

柳季: ――――ま、見かけたらな。


 そう言い残して部屋を出て行く柳季を見送り、一人になった豊前は大きくため息をついて呟いた。

「――――ったく、気難しいハイスクールスチューデントばっかりだ……。」

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