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〜Next World〜  作者: パプリカ
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転生

神と名乗るやつが俺に呟いた…この世界を変えろと…俺はその神と名乗るやつに力をもらった。それは世界を変えるほどの力だ…どんな力かというと簡単に言えば心を読む力だ。確かにこの力があれば世界を変えられる。さぁまずは何をしようか…


ここまで書いて俺はシャーペンをもつ右手を止めた。時計の針はとうに1時を過ぎていた。

「はぁ…」

とため息を漏らす。どうしてこうなった。確か俺は課題をやろうとノートを出して…いつもの悪い癖だ。紙とペンを持つとこうなってしまう。紙と神で…とくだらないギャグを言おうとしたところで俺ははっとなった。そうだ課題、課題だ。これをやらないと寝れない。

「はぁ…。」

とまたため息を漏らし、俺は手を動かし始めた。どうしてこうなった。もう一度同じ問いを自分に投げかけてみる。俺の名前は横川輝樹。今はちょうど高2だ。特に何か不自由しているわけではない。特別貧乏ではないし、勉強も中の上、スポーツもそれなり、容姿や友達にもそれなりに恵まれていると思う。実際彼女持ちでもある。しかし、何を取ってみてもとくに秀でたものがなく、それこそ平凡を絵に描いたような感じだ。そのためか幼い頃から本の中の英雄やテレビの中のヒーローなんかに強く憧れを持っていて、今もそれが尾をひきずっている。それのせいもあるのだろう。たまに自作の小説を書こうとしてやめる。それを最近繰り返している。

「はぁ…」

最近はため息もよくつくようになった気がする。そうこうしているうちに課題も終わった。そして、課題が終わるやいなや俺はそのまま机に突っ伏して寝た。


そう時間もたたないうちにというか眠りについてすぐに何か光を感じた気がした。それがどうも煩わしくて目を開けると、そこには自分の部屋はなかった。何か薄黄色い空間が永遠に続いているような感じだった。

「ついに異世界にきたか」なんてくだらない妄想をしようしたがやめた。夢にしては意識がはっきりしているが恐らく夢だろう。

「…おい」

そんなことを考えていると後ろから声がした。そちらの方を見てみると、よぼよぼのおじいさんが杖をついて立っていた。今にも倒れそうな感じだ。不思議な夢だなぁーなんて考えていると、その老人が喋り始めた。

「私は神だ。おぬしは本の中の英雄のような力が欲しいのじゃろう?どんな力が欲しいのか言うてみ。」

「全知全能の力が欲しい。」

夢なのだからと贅沢なお願いをしてみる。

「あげることにはあげられるが…具体的であるほうが簡単に使えるぞ。例えば魔法を使える力よりも、炎出す力だとか具体的であればあるほどよい。」

「うーん…」

頭をポリポリとかく。ふけがパラパラと落ちてくる。昔からの考える時の癖だ。いや待てよ。これは夢だそんな真剣に考えることはない。そう思ってもみたもののやはり考えずにはいられない。

「今日1日考えさせてください。」

「え?」

なんとも間抜けな声がその空間に響いた。俺も自分で言って驚いた。どこに同じ夢を見れるという保証があるのか。

「少々驚いたが、まぁいいだろう。また、会おう。」

その声を聞いた途端俺は眠りに落ちた。

「…き…るき…輝樹!」

親の呼ぶ声で目が覚めた。夢のことを何故か鮮明に覚えている。

「あぁ…今起きるよ。」

俺は適当に返事をすると階段を降り、朝食を済ませ、学校に向かった。その日は久々にワクワクした。たとえ夢だったとしても、どんな力にしようか考えていたからだ。お風呂に入り、次の日の準備も早くに済ませ、俺は眠りについた。

すぐにまた光が目に入ってくる。目を開けるとそこは昨日の場所だった。

「決まったかの?」

俺は一瞬ビクッとした。何故か老人はいつも後ろから喋りかけるのだ。

「うん。今日一日考えてたけど、創造を具現化する力がいいな。」

「それで何をするんじゃ?」

「特に何をってわけじゃないんだけど一番ワクワクしたから。」

「昨日も言ったが具体的でない力を扱うのは難しいぞ?」

「うん。それでもいいんだ。」

「わかった」

老人はそれだけ言うと俺の額に指を当てて何かを唱えた。そこでまた俺は眠りについた。

なんとなく目が覚めた。時計を見ると3時だった。

「早く寝たからなぁ」

自分の声だけが部屋に響く。そういえばと夢のことを思い出す。そこまで信じてるわけではないが夢のことが本当なら今の俺は創造を具現化できるわけだ。

「試しに何か出してみるか。少し腹が空いたし、ホットケーキでも出すか。」

とは言ったもののやり方がいまいちわからない。そもそも夢の話だし、俺の強い思い込みでついに夢まで見るようになったとも考えられる。しかし、ものは試しだ。まずは声に出してみる。

「出でよ。ホットケーキ!」

…。

何も起こらない。こんなところを親に見られたら頭がおかしいと思われるに違いない。

「創造を具現化する能力…」

次に俺は目を瞑ってホットケーキを創造してみることにした。すると、何か頭がむずがゆくなってきた。そこで創造したホットケーキを捻り出すようにしてみる。あと少し…!

ポッ!という音とともにそれは俺の額辺りから出てきた。パンケーキ…には程遠く、小指の爪ほどの大きさしかなかった。

「まぁ最初はこんなもんか…」

そう呟いた瞬間俺は激痛に襲われた。本当に頭がカチ割れそうだ。何かが中と外両方から圧迫するようなそんな痛み。副作用かなんかか。などと考えているうちに俺は気を失った。

目覚めるとそこは見たこともない世界だった。3000年後の世界なんてことはなく、病室だった。俺の寝ているベッドのそばに母親が座っている。気のせいかもしれないが痩せているような気がする。起き上がろうとするが力が入らない。そうこうしているうちに母親が起きて俺に気づいた。

「‼︎やっと目が覚めたのね!」

それから俺は母親に何があったのか聞いた。あの日の朝、俺があまりにも起きてこないので母親が部屋に呼びに行ったそうだ。しかし、返事もないそこで部屋に入ってみたところ、俺が白目をむいて気絶していたそうだ。そこで病院に連れていき、入院となったらしい。驚いたことに俺は1ヶ月も植物状態だったそうだ。

「あんな小さいパンケーキを出すだけで1ヶ月か…」

「パンケーキ?」

「いやなんでもないよ。心配かけてごめん。」

その後も何か会話をして、その日に退院と思ったのだが、大事をとってもう1日入院した。家に帰った俺は部屋で具現化の力について考えていた。

「それにしてもこの力、使い物にならないな…失敗した挙句1ヶ月も気絶とか…漫画の中だったら使えるのかな…」

なんてことを考えていた。そんなとき急に頭に文章というか文が流れ込んでくる。

「転生しますか?」

具現化の力のこともあったし、これも恐らく本当の事なんだろう。特にやり残したこともないし、この力も使えないし転生するか…ってそんな軽いノリでは決められない。転生するということは恐らくそのままの意味であろう。しかし、人間に転生するとも限らないしな…悩んだ挙句出した答えは結局Yesだ。

これで転生と思ったが、次の質問が流れ込んでくる。

「人間か?他の生き物か?」

おれはこれは迷うことなくすぐに答えた。

「人間だ」

これで終わりかと思ったが、まだ、質問が続く。

「次最後の質問。この世界か他の世界?」

おれはまず、他の世界に行ったらここに帰ってこれるのかが気になった。

「もし他の世界に行ったら戻ってこれるのか?」

「…。」

質問には答えないようだ。俺は悩んだが、他の世界に行くことにした。

「特にここでやりたいこともないしな、他の世界で頼むよ。」

そういった瞬間俺を青白い光が包み込んだ。そしてそれが晴れるとそこはいつもの自分の部屋だった。

…。

「なんでやねん」

思わずツッコミを入れる。何か変化はないかと立ち上がろうとした瞬間、浮遊するような感覚に襲われ、気を失った。

…。

どれぐらいの時間が経ったかはわからない。目を覚ますとそこは森のようだった。

「ぼぶばぶぶばべばばぼば」

「!?」

普通に喋ったつもりだったのだが、どうにもうまく言葉が出せない。この世界の言葉か?とも思ったがどうにも違うように思われる。しかもさっきから金縛りにでもあったように体が動かないのだ。何故かとても疲れていたので、俺は無用心にもそのまま寝てしまった。

「赤ん坊がいるぞ!」

そんな声で目を覚ます。目がぼやけて焦点が合わない。誰かが俺の顔を覗き込んでいるようだ。そして、さっきの言葉から推測するに俺は赤ん坊になったらしい。

(まぁ転生出し当たり前か)

と妙に納得しているとその誰かが急に俺を持ち上げた。

「家に連れて帰ってやるか」

なんて優しい方なんだろう!と思ったがなぜこんな森の中にいるのか気になった。そんなことを考えているそいつが歩くのをやめた。

「着いたぞ!」

俺の脇を掴むような形でどこに着いたのか見せてくれた。そこは街…いや都市といったほうがいいだろうか。立派な城壁がよく見える。そいつはあゆみを進める。門のところで立ち止まった。何か門番と会話をしているようだ。

「おぎゃぁぁー」

あまりに話が長いので泣いてみる。まぁ子供は泣くのが仕事だしな。

「ごめん、ごめん。それじゃあまた!」

そいつはそう言いながら門を後にした。

そいつは歩きながら色々俺に話しかけてきた。

「捨てられたのか?可哀想になぁ。」

などくだらないことがほとんどだ。そいつは自分のことは一切しゃべらなかった。

「着いたぞ」

着いたぞと言われても首が動かせないのでどこに着いたのかわからない。赤ん坊とはなんとも不便である。それを悟ったのかそいつがまた俺にどこに着いたのか見せてくれた。字は日本語ではないし、そいつの言葉も日本語ではないが、何故か理解できる。

(児童保護施設?)

「残念だが、俺じゃお前を育ててやれねーからな。」

そういうと、男は建物の中にはいり、受付のような人と何かを話していた。そして、何か書いているようだった。

そして、俺がそいつの手からその施設の世話役と思われる女に渡される。

「お願いします。」

と一言いうとそいつはその建物を出て行った。その後俺はとある部屋に連れて行かれ、ベッドに寝かされた。そして、そのまま深い眠りについた。尻に違和感を覚え俺は目を覚ます。どうやら漏らしてしまったようだ。

(高校生にもなってお漏らしか…いや今は赤ん坊だったか)

さすがにそのままというのは気持ちが悪かったので、大声で泣き声をあげる。しかし、誰も部屋にはこない。暗いということを考えるとまだ夜なのだろう。

(そういえば具現化の力で…いやいやまた気を失うかもしれないし、赤ん坊の体で使ったら死ぬかもしれない。)

などと考えていた。やはり泣き声を出すしかないのだ。

しばらく泣き声を出していると、一人の女が部屋に入ってきた。

「よしよし。ミルクですよー」

と言って哺乳瓶を俺の口に当てる。しかし、今は別に腹は減っていない。俺は更に泣いてみることにした。そしたらようやく気づいたのさやっとオムツを変えてくれた。

そして、子守唄を歌ってくれた。

(赤ん坊の世話は大変だな。)

なんて思いながら俺は眠りについた。


次の日といってもいまいち時間の感覚がわからないが、俺はまた尻の嫌な感覚で目を覚ました。昨日のように泣き声をあげると、昨日の女がまた来て、オムツを変えてくれた。

オムツを変えるとすぐに女は出て行ってしまった。

それにしても赤ん坊というものは本当に暇である。寝返りもうてないわけで、これがあと数ヶ月は続くと思うと発狂してしまいそうだ。することといったら、お腹が空いた時、漏らした時、痒いときなどに泣いてここの人を呼ぶことぐらいだ。本当に赤ん坊の世話は大変だなと思う。泣くというのは結構疲れるもので、俺はまた、眠りについた。その瞬間また、目にあの光が入ってきた。薄黄色い空間が辺りを包む。老人はまた、俺の後ろにいた。しかし、今の俺には振り返ることも喋る事もできない。

(この力使えないじゃないか!)

心の中で文句をたれてみる。神ならそれぐらい読み取れるだろう。

「それはお主の魔力が足りないからじゃ。今回で会うのも最後になりそうだし、教えておこうかの。魔力とは人間の体内を流れる不思議な力のことじゃ。鍛えれば増えたりもする。お前さんが気絶したのは、あの世界では普通魔力を鍛えるなどしないわけで、魔力が底を尽きてしまったからじゃ。ちなみにホットケーキが小さかったのは、お前さんの魔力がそれしかなかったということじゃな。まぁ新しい世界でせいぜい頑張りたまえ。」

老人もとい神はそういうとどこかに行ってしまった。俺も眠りに落ちる。


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