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桜と鈴  作者: 星夏
3/6

桜の気持ち

今回は、短いです。

「お兄ちゃん!あっ、しらゆいもいる!」


いつもと変わらない、明るく元気な声が響いて、駆けてくるさよい。ちょうど、しん達の話がすんだ後だった。


「おかえり。さよい」

「さよい。おかえりなさい」

「うん!ただいま!」


元気よく返事を返す様は、どこにでもいる子供の様で、自然と笑みが零れる。


「あら。その手に持っている花、とても綺麗ね。どうしたの?」


さよいの手には、綺麗な小さな花が握られていた。


「これ?これはね。綺麗だったから、採ってきたの。後で押し花にして、それから栞にして、お兄ちゃんにあげるんだ」


「そう」と、さよいに言った後、しらゆいはしんを見た。しんは、笑っている。


「いつも、ありがとう。さよい」


しんは、さよいの頭を撫でた。さよいは、嬉しそうに笑う。微笑ましいようで、でも、どこか………


「しらゆい」


「あ。ごめんなさい、何かしら?」

「ううん。ただ、ぼーとしてたから」


言われ、自分がそこまで、考えこんでいたことに気づいた。


「そう。何でもないの。それより、もう帰るわね」

「え。もう帰るの?」

「ええ。さよなら、さよい、しん君」


立ち上がると、手を振りながら去っていく。さよいも、大きく手を振り返す。

しらゆいが去った後、静かで軟らかな、空気が流れる。その静けさを破ったのは、しん。


「さよい」

「何?お兄ちゃん」


笑顔で返された言葉。自然に笑みが零れる。だけど。


「言わないといけない事があるんだ」


真剣に返す言葉。


「大事な事?」

「ああ。大事な事。とても」

(とても、さよいに伝えなければいけない事)


いつもと何も変わらない空間。でも、きっと今から言う言葉は、全てを変えるだろ。知りながらも、紡ぐ。


「さよい。好きだ」


その言葉に、偽りなどない。しんは幼い頃から、ただ一心にさよいを思い続けていた。

さよいは驚いた顔だったが、目を伏せると。


しん(・・)。…その“好き”は、恋情の好き、ていうこと?」


返された言葉は、いつもと変わらないさよいのもの。


「ああ。もちろんだ」


また、しんから返ってきた言葉も、いつもの優しいしんのものだったが、その声色は強い力がこもっていた。


「なら、ごめんなさい。ボクもしん……お兄ちゃんのこと好きだけど、恋情の好きでは、ないんだ」


何かを取り繕うような笑みを浮かべる。


「そうか」


たった一言、がっかりした様子ではなく、いつもと何ら変わることのないしん。


「それともう一つ、あるんだ」


少しの沈黙。


「俺は少しの間、この家を離れるんだ」

「どこに行くの?!」


いつもと違い、焦った様に叫ぶさよい。


「遠くの病院だよ」

「ボクも連れていて!!」

(ついていかなくちゃ。離れたら、きっと、もう………)


しんは微笑んで、言う。


「さよいには、できるならここで桜の木と待っていて欲しいんだ」

「ボクも連れ………っ!!あっ………」


一瞬だけ下を向くと、笑顔を浮かべながら顔を上げ。


「ボク……待ってるからね。待ってるから。………お兄ちゃん」

「ありがとう。さよい。すぐに絶対に戻ってくるから」


桜の木は、悲しげに、花を揺らし散る。まるで、涙を流すように。


(もう、きっと、しんは………)

読んで頂きありがとうございました!

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