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空想科学フェアリーテイル  作者: 宮原 桃那
36/66

【36章】機械茶番幻想曲

世にもおかしな奇跡のお話は

 オアシスの水は、見た目は澄んでいるように見える。

 それを容器に汲みながら、里琉は――珍しそうに周囲を見回す、ダリド王子を見やった。

「……何で着いて来たんですか、王子」

「人は多い方がいい。それに、私になら出来る事もある」

 ラバカ大臣は未だに戸惑っているようで、目だけで困惑を訴えていた。

 汲んだ水を肩から掛けたカバンにしまいながら、里琉は眉を寄せる。

 確かに王子が居れば、リカラズの技術についても判断しやすいだろう。

 だが、果たして何と言って招き入れるべきか。

「王子なら顔が割れている可能性というのは?」

「そうしたらその場で摘発すればいい。幸い、制圧の為の武器はあちらが持っている」

 にこりと笑う王子の、容赦のない発言にはさすがにラバカ大臣も首を横に振った。

「ダリド王子殿、今回は調査及び視察です。くれぐれも、宰相殿に言われた以上の事はなさいませんよう。……それが、同行のお約束のはずですが?」

「やはり駄目か。融通が利かない人選をしてくれたようだ」

「…………遠回しに貶してますよね?」

「まさか。逆だよ、リル殿」

 よく言う、と里琉はダリド王子を軽く睨む。

「郷に入りては郷に従えと言いますよ。……ここの法に触れるようであれば、いくら他国の王子と言えど見逃すわけにはいきませんので、ご了承願います」

「分かった分かった、穏便に済ませるよう力を尽くそう」

(日本人の遠回しな言い方と似てるな……)

 断言したくない、或いは出来ない場合、日本人はイエスとノーの間を取る。

 可能な限り、善処しつつ、やってはみる、と。

 なるほど、他国の人間からしてみれば、多少は苛立つもののようだ。

 ちなみに里琉は、この王子と王宮に居る王子に関しては、全力で親しくなりたくない側である。

(多分二人とも、頭脳派タイプだよな。そうか、私はこの手のタイプの男性が苦手だったのか……)

 頭脳派な次兄に対して苦手と思ったことが無い為、あまり気付かなかったらしい。

 もっとも次兄は家族だから、特別なのかもしれないが。

 と、そのうちに管理局に到着した。

 正面玄関よりずっと手前に、黒い鉄製の柵が囲われている。

 そして入り口らしき門は閉じられ、鍵があるはずの部分には、代わりに黒い何かが付いていた。

「…………インターホンじゃなさそうだね」

「ああ、なるほど? 失礼するよ」

 すいっとダリド王子が近付いて、黒い部分に触れる。

 どうやら蓋が付いているタイプだったらしく、開けるといくつかの白いボタンと、右側に外れて赤いボタンが付いていた。

「暗証番号が必要みたいですけど……」

 子供が触っておかしな音がした、というのは、恐らく適当にボタンを押してしまったからなのだろう。

 下手に里琉達が触れれば、警戒されかねない。

「必要ない。これさえ押せば、向こうが出て来る」

 ぽち、と王子が赤いボタンを押した数秒後。


「何者だ!!」


 正面玄関から、武器を構えた謎の男が出て来た。

「ほら、言っただろう?」

「……明らかに侵入者扱いでは?」

 ラバカ大臣の言葉に、里琉も頷く。

 その間に男はこちらに歩み寄り、武器を躊躇いなく向けた。

 剣ではない。レーザーガンである。

「用が無ければ立ち去れ」

「……我々は、国から正式に派遣された視察員です。こちらが証明書になります」

「…………」

 持たされた証明書を見せてやると、男は舌打ちして門を開いた。

「入れ」

(おいおい、上から目線を隠しもしないつもりかよ)

 ここまで堂々と国を軽んじられると、さすがにいい気分はしない。

 ラバカ大臣も不愉快そうに眉をひそめていた。

 さておき、正面玄関もまた、ロックがかかっているようで、男はカードを出してスキャンし、扉を開く。

(なるほど、正面玄関はカード認証、と。外をうろつく警備の奴とか居ないかな。侵入するならそいつから奪うのが手っ取り早いんだけど)

 見たところ、警備は見当たらない。そもそも必要ないのかもしれないが。

「我々は管理局長にお会いしたいのですが、そのついでに施設を見て回ってもよろしいでしょうか?」

「……それについては、管理局長がお決めになられる」

(なーるほど、管理局長次第でこいつらが動くわけか)

 国よりも管理局長が大事らしい。

 キメラというのはチップを使っているため、マスター命令には逆らえないのだそうだが、露骨過ぎて指摘する気も起きなくなった。

「で、すぐに管理局長には会わせてくれるのかい?」

「……連絡を取る。まずは待機してもらおう」

 と、案内された部屋の扉はこれまた――機械仕掛けで。

「…………」

 話は後にするとして、中に入ったら出られない仕様ではなかろうか。

「本当に連絡を取ってくれるのかい? とても内側からは開きそうにないが」

 ダリド王子の言葉に、男は睨みつけて返す。

「連絡は必須事項だ。お前らが本物の視察員なら、お会いするだろうよ」

 入れ、と言われて渋々ながら入ると、中はシンプルな部屋だった。

 テーブルと椅子くらいしか無い、とも言える。

 そして男達が出て行った直後、里琉はざっと天井を見回し、やはり、と一角にある監視カメラを発見した。

「王子、音声は盗聴出来る仕組みですか?」

「……いや、行動だけのようだ。ラバカ大臣殿、怯えているところ申し訳ないんだが、ここについて今のうちに説明しよう」

「は、はい」

 未知の空間に立ち入った彼は、何が何だか分からないようで青ざめている。

「まず、リカラズの技術における日常がこういうものだと思っていい。一定以上の階級の人間は、許可されたエリアに応じてシステムカードを発行され、今のようにカードリーダーに通す事で通行できる。稀にカードを貸し出す事があるが、本来は禁止事項だ。それと、局員の武器。あれも特別な許可が無ければ所持は出来ないようにされている。何しろ危険な代物だ。扱うには訓練を卒業する必要がある。が、ここではそういうわけでもないらしい」

「その辺も全部まるっと無視して、ここは作られてますね。この分だと地下がありそうです」

「ああ、無いはずがない。地下は基本的にメインコンピューターが置かれ、そこで統制管理されるからね。」

 分かりやすいが、ラバカ大臣には通じていないらしい。

「あ、あの、リル殿は何故、そのように詳しくご存知なのですか……?」

「ちょっと事情がありまして……。ここを無事抜けられたら、時間があれば説明できるかもしれません」

「…………そうなのですか?」

 おまけに里琉の正体が知られそうな気がして、里琉は何とか誤魔化す事にした。

「少なくとも、私はリカラズの人間ではありませんが、それでもリカラズの技術には耐性がある、とだけ今は申し上げておきます。……それと、私とダリド王子が、この方向で会話をしている理由ですが……目線だけ、左上に上げてもらっていいですか?」

「……? あ!」

 驚いたラバカ大臣が、どういう事かと目線を戻して無言のまま問うてくる。

 ダリド王子は肩をすくめ、それに答えた。

「監視もリカラズ施設ではつきものだ。残念ながら……ここから逃げようとしても、すぐに捕まる可能性が高い」

「そんな!」

「……まあ、管理局長に会えないまま一時間くらい経過したら、強行突破しようと思います。こういう施設には、非常事態におけるセキュリティシステムの一時解除があると考えられますし」

「キメラの巣窟でなければ、確実なんだが……」

 人間ならまず生命優先、となるので、非常事態はまず避難の為に全てのロックが外される、という事になるはずだ。

 いくら里琉でも、人間以外が使用する施設については知らない。

「……やるだけやってみますが、最悪、管理局ごと破壊して隠蔽する仕掛けだったら申し訳ありません」

「ああ、有り得そうだ。もっとも、そんな事をすればキメラ達は統制が取れなくなって暴走する。ここのキメラはどうやら、アリスィアのような自立型ではなく、チップに電波を送信して動かす受動型のようだからね」

「は、はあ……」

 ぽかんとするラバカ大臣は、やはりまだ分からないようで。

 その時、ピッ、と音がして扉が開いた。

「局長がお会いになられるそうだ。出ろ」

 さっきの男がそう言って、里琉達を呼ぶ。

 閉じ込められる心配はなくなったが、果たして局長がどんな存在か。それ次第でまた、状況は変わってくるだろう。

(これでアリスィアだったら笑えないなー……)

 出来ればこの場でかち会いたくない相手だが、事前に聞いた限りでは、登録上の局長は男らしい。

 そして、案内の男は両開きの扉の前に来ると、その傍に付いているボタンを操作する。

 上にあるランプが左から順番に点灯していくのを見て、里琉は若干遠い目をした。

(わー、エレベーターがあるー……)

 この管理局だけ、自分の元居た世界なのではなかろうか。

 そんな都合のいい話は無いのだが、とりあえず開いた中身もやっぱりエレベーター仕様だった。

「入れ」

「……???」

 怪訝そうなラバカ大臣に、ひそっと「行きましょう」と囁いて、里琉は先に乗り込む。

 それを見て彼も慌てて乗った。

 扉が閉まり、がくん、と振動が伝わる。

 どうやら地下に向かっているようだ。

「こ、これは、一体……」

 さすがにラバカ大臣が黙っていられないらしく、思わず口にすると同時に、またもエレベーターががくんと揺れて、地下に到着を知らせる音が短く鳴った。

 そして扉が開いた先には。


「ようこそ、王宮視察員の方々。私が管理局長のタァークです」


 にこやかに両手を広げて迎える、壮年の男が立っていた。

(中身が別人の可能性が非常に高いけどな!!)

 エレベーターを降りた後、局長はすぐ目の前の大きな扉を、これまたカードで開いて招き入れる。

「我が管理局自慢の、完璧な統制管理室です」

 堂々と違法を見せつけられ、里琉は突っ込もうか一瞬迷った。

 しかしそれより早く、ダリド王子が動く。

「ほう、これは興味深い! そう思わないかい、二人とも?」

 ――なるほど、とそこで里琉も、そしてラバカ大臣も気付いて。

「そうですね……。これほどの技術、王宮にもありません」

「近くで見せてもらってもいいでしょうか?」

 めいめい、好意的な反応を見せると、局長は頷いた。

「どうぞどうぞ! ただし、くれぐれもこれらのボタンは押さないように願います。いくら完璧といえども、人の手が勝手に入れば、話は変わってしまいますので!」

 たくさんのパネルにランプ、それと複数のレバー。

 里琉は何となく、どこかで最近、似たような光景を目にした気がする、と首を傾げ、思い出す。

(ウィルの居た場所に似てるんだ)

 となると、ウィルが回復するには、ここを何とかしなければならないのかもしれない。

「ここではどのような事が可能なのですか?」

 試しに尋ねると、局長は上にある映像パネルを示す。

 そこもまた、ウィルの居た空間にあった物で。

「こちらで操作し、指定された部屋の内部をすぐに映し出せる仕組みがあります。それだけではありません。ここから指令を発し、管理局内全体に、瞬時に声を伝える事も可能です」

(監視と放送のシステムを堂々と暴露してる……。もしかして、キメラって頭悪いのかな)

 予想以上にストレートな中身の説明をされ、里琉はどうしたものかと困惑した。

「では、先ほど……我々が居た部屋も?」

 ラバカ大臣の問いかけにも頷いて、局長はパネルを操作する。

 真っ暗だった画面に、さっきまで自分たちが居たであろう場所が、ぱっと映し出されたのを見て、里琉は「画質が荒めだな」などと呑気な感想を抱く。

 その傍では、相変わらず局長が誇らしげに喋っていた。

「ええ、このように! ただし記録は出来ないので、そこが改善すべき部分なのですが」

「そんなものがあったとは! 管理局内は複雑な構造のようだが、声を瞬時に伝えるのはどうなっているのだろうか?」

 内心では当たり前のくせに、ダリド王子が面白そうに頷いて問う。

「それはこちらを使用しておりまして。このスイッチを押している間、ここに向かって言葉を告げれば、それが管理局内に設置された装置へと届く仕組みとなっております。緊急時などに使うのですが、普段の連絡などでも利用出来る、非常に便利な仕組みですよ!」

 局長が自慢げに説明して示す先には、拡声石を改造したらしいマイクがあった。

(これはちょっと欲しいかも。王宮広いし、人を使うと時間かかるし)

「……素晴らしいですね。この技術はどうすれば得られますか?」

 一応聞き出そうと思って里琉が尋ねると。

「…………申し訳ありませんが、技術ではないのです」

 そこで不意に、局長の声のトーンが落とされる。

「ここにあるものは全て、奇跡の力で得られた、特別なものばかりですので」

「……き、奇跡?」

 対して里琉達はぽかんとなった。

「ええ、ええ! 一晩経ったら出来上がっていたのですよ! 我々も驚きましたが、その奇跡を起こして下さったお方が、直々にご説明下さいまして。我々だけに、選ばれた奇跡の力を使わせて頂けると!」

 そのままテンションがいきなり上がった局長に、里琉は内心突っ込みの嵐を起こす。

(んなわけあるか!! フィリアさんも言ってたけど、半年かけて改造されたって言ってんだぞ!! ていうか全部、ぶっちゃけ科学で説明可能だからなこれ!!)

 その合間に、ダリド王子が首を傾げていた。

「おや、よろしいのかな? 我々にその奇跡を見せても」

「もちろんですとも。奇跡とは、他人に認識されなくてはなりません。王宮視察員の方々にお認め頂けるならば何よりです!」

「…………そう、ですね。これは報告しなくては」

「ああ、いや、報告はお待ち頂きたい」

「何故ですか?」

 ラバカ大臣の言葉に待ったをかけた局長は、その「奇跡」を示しながら言う。

「この奇跡は、限られた者だけが共有するべきだと、その方が仰られまして。奇跡を当たり前のように扱われてはいけないと」

「……それはそうですが」

「ですので、特別に、あなた様方だけに! この奇跡を是非とも、共有頂きたいのです! 国王陛下に知られてしまうと、国民、ひいては他国に狙われてしまいかねませんから!」

(怪しい商法みたいな事言ってるけど、つまり知られたくないんだろうな。違法だし)

 局長は自分たちを抱き込みたいのだろう。

 奇跡だと言って信じさせ、味方に付ける為に。

 となれば、選べるのは二つだ。

(この場で糾弾するか、この場は穏便に済ませて……この局長を騙し通すか)

 前者だと戦闘は確実だが、後者が上手くいくかは甚だ疑問だ。

 何しろ、ダリド王子はともかく、里琉もラバカ大臣も、あまり嘘や演技を得意とはしていない。

「し、しかし、ここまでの……奇跡、を、報告しないとなると、我々が……」

 困惑しきりに自分たちの不安を告げるラバカ大臣に、今度は局長は笑顔で案内役の男を示し、言った。

「心配は要りません! この者は実は、中身は全くの別人なのです!」

「!!」

 ここでそうくるか、と里琉は男を見る。

 男は不思議な程に大人しく、虚ろな目をしていた。

「仮に反逆者として弑される事があろうとも、事前にあなた方の中身をとある物に移し替えておくことで! 別の体を使い、生き返る事が出来るようになるのです!!」

(それは生き返るって言わない。乗っ取るって言うんだけどな?)

「何と便利な! 確かにそれは、国王陛下には申し上げられない中身だ!」

 乗る役割はダリド王子に任せる事にしよう、と里琉はそっと決めた。

 ここまで見事にこの局長を持ち上げられるのは、彼以外に適任が居ない。

「…………とある物、とは……?」

「ああ、それは実際に体験していただく事になりますが……どうなさいますか?」

「少々、時間を頂きたいです。何しろ我々は国から命じられて来た為、今日はあまり勝手が出来ないもので」

 里琉が遠まわしにこの場の即断を辞退すると、局長は残念そうな顔になった。

「もちろん、報告は別の物に差し替えておくから安心してもらいたい。どのみち、この奇跡を言葉で表すのは中々難しいだろう」

 しらっと言い切るダリド王子の事だ。どうせ、もっと分かりやすく簡潔に、報告をまとめてくれるに違いない。

「あの……もしや、それはここですぐ出来るものなのでしょうか」

「もちろん! ただ、一晩お泊まり頂く事になりますが……」

「いえ、本日中の帰還を求められておりますので……。それに一晩経って別人が戻ったとなると、さすがに問題が」

「そのような心配は要りません! 最初は本人のまま、そして仮に処刑されてしまった時に、それを新しい体に移動すれば良いだけですので」

 ラバカ大臣の問いかけに、局長は興味を持ってもらえたと思ったのか、嬉々として情報を吐き出す。

 ただそれは同時に、この後の危険度も上げていた。

(ここまで話したからには、多分、簡単に帰す事はしないだろうな。この後、場所を変えて延々と説得させられる可能性が高い)

 戦闘にはならない代わりに洗脳の危険が高いのは、あまりいい事ではないだろう。

「ふむ、では次の場所を案内してもらってもいいだろうか? ここに凝縮された奇跡を、私はもっと知りたいのだが」

 ダリド王子が場所を変えようと自ら言い出し、局長はそれにあっさりと乗った。

「喜んで! では次の場所へ案内致しましょう!」

 ――そうして施設内を廻りながら説得をはぐらかし、結局、里琉達が出られたのは夕方で。

「……疲れましたね」

「報告書が非常に長くなりそうです……」

「だが、その分非常に楽だった。戦闘も無く、内部も調査出来た上、彼らの警戒心を解いたままの状態で出られたからね」

 予想していたはずの戦闘は全く訪れる機会もなく、その分の精神的疲労が、鳥車に乗る里琉とラバカ大臣にはのしかかっていた。

「さて、大臣殿。貴殿には他人の顔を覚える特技があると聞いた。どの程度把握出来ただろうか?」

 それでもダリド王子は、お構いなしに大臣へと問いかけた。

「……局員達の顔はほぼ覚えたでしょう。何人かは覚えたと言うよりも、思い出せた、なのですが」

「思い出せた……? 過去にお会いした事が?」

 ラバカ大臣の答えに、里琉は驚く。

 しかし彼は、疲労を見せつつもゆっくりと説明してくれた。

「はい。それも、オアシスではない、別の場所で。……その時は、ただの村人でした」

「!」

 苦い表情が、嫌な予感を抱かせて。

 ラバカ大臣の瞳が、里琉を真っ直ぐに見る。

「……貴女に初めてお会いした時を、覚えていますか」

「私に、あの村の事を尋ねた事ですか」

 そして、繋がる。全てが。

 静かに頷いたラバカ大臣は、悲痛な表情を浮かべて告げた。


「管理局員の一部は、あの滅んだ村の――村人だった者です。あの村は誰かに滅ぼされたのではない。彼ら自身が捨てたものであり……彼らはもはや、心身共に人ではない。それが……僕の結論です」


 死の砂漠から来た里琉があの村に行き着くまで、誰ともすれ違わなかった理由。

 殺された一人だけの人間。放置された家々。

 里琉がこの世界に呼ばれ、この国に辿り着いたその意味を、ようやく、今になって里琉自身も理解出来たのである。


奇怪な茶番の軌跡を描いて。


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