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第六話 無音の一撃

学校→妖怪狩り→異世界召喚→脱出→尋問で疲れ果て眠気に負けて

ベッドで泥のように眠った主人公達

その翌朝です。

綾乃が目を覚ますと40cmほど先に亮平の顔があった


(りょーへー?あ、そうか、ここは――)


彼の服を見て思い出す。昨日だけでいろんな事があった。

未だ辺りは暗いが、窓を開けてみると空が明るくなり始めていた。


(海外旅行に行く事も無く、異世界に来てしまった、か~)


なんとなくおかしくなり、亮平を起こさないよう声を殺して笑った


(私の世界は家族と、亮平を中心にしてまわってたから、今はまだそんなに寂しさは沸かないけど、亮平はどうだろう?)


もちろん元の世界に友人が皆無と言うわけではないが、不良相手に暴れたり日課の稽古が忙しく、親しい友人は他にいなかった。

再びベットに寝転がり見るともなしに亮平の顔を眺める

ふと、二人っきりという状況が頭に浮かんだが、今そんなことを気にしてギクシャクするのは避けたい


(仲良くやっていこう相棒、キミと一緒ならきっとなんとかなると思える)


亮平の親指を握って、私は再び眠りについた。




朝日が昇り、部屋の中も明るくなって少したった頃

亮平の朝は指の関節技・・・・・から始まった。


「なんだなんだ!?俺なんかしたのか!?ちょっ、起きてくれ綾乃!痛い、イタイイタイイタイ!」


何がどうなってこうなったのかまるで分からないが、彼女の技は今日も冴えているようだ


「謝ります!なんだかよく分からないけど謝るから!綾乃さん?綾乃様!関節技ヤメテーーーーーーーーーー」


異世界の初めての朝に亮平の絶叫が響いた。



「まったく、朝っぱらから『千里引き』なんてマニアックな技をかけられるとは…」

「ゴメンナサイ」


気まずげに謝る綾乃

どうやら意図したものではなかったらしく目を覚ました綾乃はすぐに解いてくれた。

井戸水で顔を洗い、昨夜多めに確保しておいた料理を綾乃が釜戸で暖めなおした。

この時ばかりは「白米は釜戸に限る!」とか言って電子ジャーを買わなかった爺さんにグッジョブと言わざるをえない。

その間に亮平は洗濯物の回収など準備を整え、二人は手早く朝食を終えた。


「さて、本来ならシェルトリー共和国に入っての情報収集が一番なんだろうが…」

「傭兵とはいえ4人埋めて1人尋問したし、城から脱出したときにも何人か倒してしまったから、さすがに帰国の列に加わるのは、ね…」


再会して騒がれたら面倒だ、最悪再び周囲が敵になりかねない。

とりあえず親分が持っていた地図に視線を落とす。


「少し時間をずらしてシェルトリーに入りたい、となると」

「遠回りで目指すか、日にちをずらして向かうかだが、私達は傭兵達の向かう先を聞き忘れたような…」

「あ~ってことは安全策ならデュゴスの隣町ステラにでも行って日常生活を学ぶ。傭兵達と再開するリスクを覚悟するならシェルトリーを目指す、の二つになるわけか」


(あ~、この世界の常識を聞きだすことに夢中で第一歩に必要なことを聞き忘れるってのは、なんだかな~)


まるで、なんでも最初から上手くはいかないものだ、という言葉の見本のようだ。

当面の資金を稼ぐために、ひとまず《三大ギルド》を目指すつもりだったのだが


「しゃーねーか、安全策をとって隣町に行ってみよう、一般兵には負けない力があるといっても油断は出来ないからな」

「乗り物の確保は無理そうだね、早めに出て歩けるだけ歩いてみよう。地図の縮尺が分からないけど、もしかしたら今日中に着くかもしれない」

「そうと決まればシェルトリー軍について来た商店が、さっき開店準備していたから見に行ってみようぜ」

「そうだね、バッグや食料など買わなきゃいけない物は色々ありそうだ」


鍋を洗い、支度を整えフードを被って表へ出る

昨夜の宴では戦利品を持ち歩く輩も多かったため、服を束ねて持ち歩いていても余り注目をされずにすんだが今となってはそれも難しいだろう

早くも旅人が着た切り雀きたきりすずめな理由を痛感しながら、替えの服などは外套の内側に隠すように持ち、商店が開かれている広場へと向かった。


「いらっしゃい、早い者勝ちだから後から来ても売れないよ~」

「水筒というか革袋か、バッグは――革で出来ちゃいるが学校で見た剣道の防具入れを彷彿とさせる形状だな」

「紐を引くことで口を閉めるタイプだね。材料を見る限りリュックやボストンバッグとかも作れそうだけど種類は無いみたいだ」

「確かにあってもおかしくないかもしれないけどさ、そういやボストンバッグってボストン大学の学生が愛用してたからそんな名前になったらしいぜ。こっちの世界にあるなら別の名前がついてるかもしれねーな」

「名前の由来か…そういえば言葉が日本語で聞こえるが、これはこの世界の人が日本語を使っているのか私達がそう聞こえるように最初に魔法を掛けられていたのか…どっちなのだろうな?」

「ん?あ、そうか!魔法じゃないなら、近年の日本と何らかのつながりが…いや、ないだろ。コシヌケーが言ってただろ言語と通貨は統一されているんだぜ、仮にも技術大国とか呼ばれる日本うちの言葉が世界中に浸透するほど長くかかわってるのに中世の技術レベルってチグハグ過ぎるだろ」

「なら魔法による翻訳という事になるな。そうなると私達にとって未知のモノ・・・・・はどう訳されるのだろう?翻訳は基本的に意味ではなく概念を訳してくれた方がありがたいのだが」

「えっと、物ではなくモノか?ごめん綾乃。俺の頭だとそろそろキツイ…」

「あぁ、すまない。今後の生活にも関わってきそうな事だったからつい」

「えっと、つまりどういうことだ?」

「翻訳魔法はどうせなら直訳で訳されるより、伝えたい意思を重視して訳してくれるとありがたいね、という話だ」


「おきゃくさ~ん、店先で話し込んでないで、買うの?買わないの?」

「ああ!買う買う!おっちゃん、この隣町のステラに行こうと思うんだけど、どのくらいかかるか知ってる?」

「ん?アンタ傭兵だろ、シェルトリーには戻らんのかい?」

「いや、せっかくこっちまで来たんだから少し見てまわろうかと思ってさ」

「は~のん気だね。逃げ出したデュゴスの姫様がその町で見つかったりしたら戦争に巻き込まれかねないよ?」

「え!?お姫様逃げ逃げきれたのか?」

「知らないのかい?王様と王妃様はお城で討たれたけど、姫様は親衛隊が防衛していた間に逃がされたらしい。その後親衛隊の隊員の多くも逃げ延びたんだとか、シェルトリーは金払いは良いけど兵の質だと劣るのかね~。まあ、真っ先に調べられる街だろうからいくらなんでもそんなところには逃げないだろうけどね、あ!ステラまでの時間だったっけ?今から行けば夕方には着くんじゃないかい?」

「ってことは、水筒60×2+バッグはまだ一つでいいか、180!?+携帯食料は道に迷った分も考えて多く買っておきたいがなんか高い気がするな」

「所持金が少ないから最低限一日迷った分として4食でいいんじゃないか?」

「ってことは、乾燥肉10×4×2で、=銅貨380枚…ちょっと綾乃こっち来てくれ」

「ん?」


少し店から離れた所へ綾乃を呼んだ


「どうした?所持金は足りてたはずだが…」

「シー!確かに足りてるが、今は少しでも出費を抑えたい。これは分かるな?」

「あぁ」

「じゃあフードとって笑顔で値切って来い、最低でも所持銅貨の枚数378だ」

「なっ!?」


あまりにも予想外の事を聞いたとでもいうように硬直する綾乃


「値切り交渉は、俺達の住んでいた時代でも安く買うためには必須スキルだ。確かにコンビニなどではきり出せないし応じてくれないだろうが、決して廃れたスキルではない!」

「ま、待ってくれ!キミは最近やっと愛想笑いが出来るようになった私に、やったことも無い値切り交渉を任せる気か!?」

「大丈夫だ!昨日の野盗も言っていただろ。綾乃は美人だ、笑顔で行けば銅貨2枚どころか20枚くらい問題じゃない!」


亮平の言葉の後、綾乃は顔を少し赤くして首を左右に激しく振る


「無理だ!出来るわけが無い!第一、私の愛想笑いで商人の目を欺けるとは思えない!」

「大丈夫だ、綾乃は美人だし!十分かわいい!お前に笑顔を向けられてクラッとこない男はいない!俺はそう確信している!」


両肩を掴んで言い切る亮平の前で、綾乃はうつむいたまま顔を上げない


(確かに普段の硬い言葉を使う綾乃からすれば難しいミッションかもしれないが、男性定員なら最低でも銅貨2枚くらいはいけるはず!)


「ほ、ほんとにそう思う?」

「ああ!」

「りょーへー、そう思ってる?」

「ああ!もちろんだ!」


緊張でもしているのか、石像にでもなったかのように綾乃は硬直したまま動かない

耳まで赤くなったまま五秒、十秒、十五秒と時間がたっていく


(っく、難易度が高すぎたか…っていうか、もしここで怒って暴れだしたら昨日の傭兵達に見つかる可能性が出てくるかも?それはちょっとマズイな、少しなだめた方がいいか?)


「ゎ――」

「…笑顔が無理なら冷笑でも良いぞ?」

「私がいつそんなものを浮かべた?」


ものっそい無表情で亮平に『手首固め』を極める綾乃


「ギyaaaaaaaaaーーーーーーーーーーー!?」

「ほう?そうか、今か!今浮かべてるものか!!?」

「ア゛ア゛ア゛あが、あ、綾乃…様。い、いあ゛、いたみ゛がシャレにな゛っでません!?」

「死ね」

「さ、殺害宣言!?ガァア゛ーーーーーーーーーー!」


あまりの痛みに膝を着く亮平



考えてみれば手首を極められているだけなので死ぬはずは無いのに、迸る殺気といいマジで死ぬかと思いました。

殺気を振り撒いたまま店に行き、叫び声以外は届かなかったものの一部始終を見ていた店主がビクビクするなか、欲しいものを綾乃が告げると心優しいおっちゃんは商品をバッグに詰めてカウンターに置きタダで譲ってくれました。


「ア、アンタは美人だからタダでやるよ!え!?いやいや余っちまったら持って帰らなきゃナランからな!アハハハハ、ハハは…」


たぶん品物を差し出したりお金を受け取るときに手を出すことが怖くなったんじゃないかと思います。その証拠におっちゃんの笑顔は引きつり手は前掛けを握り締めたまま細かく震えていました。

『手首固め』見た目は地味なのにものすごく痛いです。


"フラグブレイカー"それは無音の一撃

何か聞こえた気がすると言う方は、使わないであげてください。


綾乃さんはまだまだ意識的に笑顔を浮かべることが苦手な様子

そんな子がたまに見せる自然な笑顔って良いよね!


さて、次回は新ヒロイン登場か!?

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