第五話 尋問
ボロボロの野盗の服へと着替えた亮平と綾乃はコシヌケーを担ぎ
負傷兵を装って後方へ下がるふりをして街を出た後、街道を外れ森の中へ
「いくら堂々としてれば怪しまれないからって、周り全部が敵かと思うと心の休まるときがねえ…」
「さすがにここまでくればすぐには見つからないと思うが…」
「時間はあまりかけられないか?んじゃ尋問タイムといきますか」
「ん、ちょっと待て――っは!」
――ズン
「おあ!?なんだ――ってさっきの二人組み!お、親分は?皆はどうした!?」
「埋めた」
「う、うめた…!?」
絶句するコシヌケーに向かい容赦なく亮平は続ける
「さて、ちっとばかしテメーに聞きたいことがある。とりあえず頭が無事かどうか基本的な質問からするが、使えねーと思ったらすぐに仲間と同じ結末を迎えることになるぜ」
「な、何を聞きたいってンです!?アッシは何もしらねえっスよ!」
「知ってるか知らないかは、聞いた俺らが判断する。テメエはグダグダ言わず答えろ!」
「ひぃいいい!」
鬼化しながら恫喝すると、明らかに脅え始めた。
人を脅すなんて不慣れなことこの上ないが、鬼化の迫力がそれを補って余りあるようだ。
鬼化はこちらの言葉をムリヤリ通す時に使うようにしようと思いひとまず解く
尋問なんて初なので、ここまでくる間に二人で考えていた事を聞いていく
「テメーはシェルトリー軍の一員か?」
「そ、そうです。といってもデュゴスとの戦用に契約を結んだ傭兵ギルドのモンですから、軍の上のほうのことを聞かれても何もわからねっスよ!?」
「いいんだよ、俺が次の質問をするまで、テメーは思いつくまま喋り続ければいい」
「わ、わかったッス」
「んじゃ次だ、貨幣ついて喋れ」
「へ?」
ギロッ
「は、はい喋りばふ!ど、銅貨は100枚で銀貨1枚分であり、銀貨1000枚で金貨1枚になるッス!銅貨10枚~16枚が一食にかかる値段なので金貨は商人や貴族などしか関わり合いの無いものなんス」
――こうして、もっともらしい質問の間に日常生活に必要そうなことを混ぜ、これで良いのかとビクビクするコシヌケー(本名ロベルトらしいが名前負けしてる気がする)を軽く睨みながら尋問は続いた。
この世界では50年ほど前まではヴェルパシア王国という大国があったらしいのだが、亜人との戦争が起こり滅ぼされたのだという。その後各地で有力者が立ち上がり5つの国が出来た。
基本的に亜人を、街中で見ることは余り無い、余りと言うのは稀に奴隷として売られていることがあるからだ。街道を外れた森の中など彼らの集落があるが人間は亜人を恐れているので近づくものはなく、これは冒険者より傭兵が多い大きな理由にもなっているらしい。亜人は人間より身体能力に優れており、見た目は様々だが総じて人とモンスターの中間のような姿なのだという。
「お前から見て俺は何に見える?」
「…亜人ッス」
「根拠は?」
「?モンスターは、上位の竜や悪魔を除いて基本喋れないらしいッスから…」
「なるほど…」
「???」
重要そうな話と、肩透かしを食らうような当たり前の話を交互に長々としていたおかげでコシヌケーの恐れは当初に比べて少なくなってきていた。
「さてっと、大体は聞けたかな?他に聞きたいことはあるか?」
「…いや、もういい。後は私達だけでも何とかなると思う」
「りょーかい、んじゃぼちぼち最後の質問だ」
ゴクリ――あらたまった亮平の様子に、にわかに緊張感が高まった
「お前はこれからどうしたい?」
「は?――あ~、これからッスか?生きて帰れたとしても傭兵はこりごりッス。とりあえず家に帰って畑を耕す予定ッス」
「お前、畑のある家があんのか?」
「実家ッス。もともと地元の友人に誘われて一緒に今の傭兵団に入ったんスが、数日前の戦いでそいつは死んじまったッス。アッシにはもう傭兵を続けていく理由もないんで…」
「そうか…真っ直ぐ行けば戦場に出る、後は好きにしろ」
「……えっ!?このまま行ってもいいんスか?」
「他の仲間は、お前らと遭遇した近くの家の菜園に頭だけ出して埋めてある。さっさと行け」
「――ありがとうございヤス!ってあ、あれ?なんか体が動かないッス」
「あ~そういや、あと2時間ほどは動けないんだっけ、んじゃ俺らがどっか行くか」
「ま、まってほしいッス。戦争中で騒がしいっても森の中はモンスターとか亜人とかが怖いッスーーー!」
会話中も辺りに気を配っていたが、近くに獣などはいないようだったし大丈夫だろう
亮平と綾乃はロベルトを置き去りにして森の中を暫く歩き、今後について話しを始めた。
「召喚や、ベルドルフ老師をさらったやつについてはまるで分からなかったな」
「仕方あるまい、どうやら皆が魔法を使えると言うわけではない様だし」
「は~、当面は資金を集めながら情報収集かね」
「今は夕方のようだが、元の世界を発ってからそろそろ5~6時間たってないか?」
「って事は、元の世界ならそろそろ夜明けか?どおりで眠いわけだ」
「出来ればさっさと私達を知る者がいない隣町へ行きたかったがこれでは…」
「だな、…よし!そろそろ戦いも終わってるだろ、戦勝で浮かれてるところに行って食べ物を確保して寝られそうなところを見つけようぜー!」
「大胆な策だな、だが現状では一番いい気がする」
二人は、話し合ったとおり勝利に沸くシェルトリー軍の宴で食べ物を手に入れ、眠気を堪えながら食事を終えて
井戸の水で服を洗い、なるべく大通り沿いに近い家に上がりこんで室内に服を吊るしてベッドに倒れこんだ。
警戒のため二人とも同じ部屋、どころか同じベットだったが何か考える間もなく泥のような眠りについた。
今回は、ラブコメ成分が足りない気がする!
次回はその分増量したい!
※予告ではありません
眠気と戦いながら書いたせいか書き忘れがw