第十四話 闇夜
こんばんわ、レポーターの武宮亮平です
ただいま巨大狼の寝室にいます。
見てくださいこの、寝顔!
人間なんてペロリと一口のお~きな口
今ここにいる私の服はかなり獣臭いと思います
寝起きドッキリの気分でTV中継の真似事をしてみたが、さすがに起こすわけにはいかない
何でこんなところにいるのかというと
ガブッといかれた俺はさすがに死を覚悟したんだけど
そんな深くまでは噛まれなかったわけですよ
まぁ、それでも歯形から血は滲んでいましたが…
んで、くわえられたまま巣へとお持ち帰りされて
傷口が塞がらぬうちから、馬車の上でやった犬パンチの嵐
どうやら、潰しても潰れない不思議なオモチャ扱いのようで
噛み付きにきたときだけ、全力で逃げ出して
追いつかれると犬パンチ、そんな一方的な遊びを朝方まで続けさせられて
その日はダウン
気絶するように眠り、起きると外はまだ暗い
けど鬼化したまま眠った俺の傷は癒えている
どうやら、昼間はまるまる寝てたようなんですよね
んで、自分はまだ生きていて
すぐ近くに巨大狼はいない
逃げ出すチャンスかと思ったら
離れたところに何かを食べてる子狼が…
「えーと、見逃してくんない?」と頼んでみたのだけど
返ってきたのは《風を纏う炎弾》
あわてて、炎を纏った拳で迎撃すると
なにやら尻尾をパタパタさせて子狼が3匹ほどこちらを見ている
嫌な予感に顔が引きつる中
バンバン《風を纏う炎弾》が飛んできましたとも
後退しながら必死に打ち落とし続けていると
こんばんわ巨大狼さん帰ってきちゃいました(笑)
その後巨大狼が牛のようなモノをくれましたが
さすがに生では食えません
(あれ?それとも鬼化してれば生肉もイケルのか俺?)
食べないことを不満に思ったのか
牛を子狼の方にくわえて投げました
子狼が喜んでむしゃぶりつく中で
やってきました遊びの時間♪
本日も犬パンチに襲われて受け流します
まぁ、流すといっても
当たる前に力の流れに逆らわない感じで横に押し退ける?
って感じで爺さんと比べるとあまり上手くできている気はしないんですけどね
受け流しのタイミングとかの練習には、なりましたよ?
そんな感じでそこそこ遊ぶと巨大狼も眠ってくれて
今現在の状況と相成るわけですよ
何でこんな事になるんですかね?
戦闘寸前にツンツンしたヤツとコミュニケーションをとろうと
おっぱい談義をした罰ですかね?
とりあえず抜き足差し足忍び足で脱出といきますか
「しっかし、ここどこだ?」
炎狼の巣穴から出たみたもののあたりは未だ暗く、現在地が全くわからない
「とりあえず…北に行けば草原に出るのかな?」
ズボンから引っ張り出したのは、方位磁針付き腕時計
とりあえず使えるのは昨日の昼に確認しているので、それを頼りに北を目指す
「月明かりを頼りに散歩するってのもなかなか面白いな」
(電灯は無くても世界はこんなに明るい、あ、ここは異世界か)
「ちなみに独り言を喋ってるのは、ちょっと寂しいとか思っているわけじゃないぞ?」
そんなことを言いながら歩いていると自分が空腹であることに気付く
「うわ~、そういや丸一日食ってなかったか」
さっきの牛肉はできれば食べたかったが、さすがに生は抵抗がある
昔話の鬼は人間を生でムシャムシャ食べたと云うけど、精神への影響は多少あるもののカニバリズムには目覚めなかった。
「あれ?試したこと無かったけど、もしかして噛む力ってかなり強くなってんのかね?」
炎狼に噛み付かれた様に、自分も噛み付き攻撃が可能かもしれない
ただし今まで出会ったモンスターのどれを思い出しても、好んで噛み付きたいような敵はいなかったが
「…威力はあったとしても、さすがに嫌だな…」
噛み付きたい敵ってどんなんだよ!とか心の中で一人ツッコミを入れる
そんな風に寂しさと空腹を紛らわせながら歩いていると
静寂に支配された夜の闇の中、右側から足音が聞こえた
「ん?この間隔って2足歩行か?」
炎狼ならば即逃げなくてはならないが、足音より先に聞こえてきそうな狼のハアハアという息遣いは聞こえない
ただの聞き間違えかも知れないが、気になってそちらを注視していると足音が近づいてきた
まさか人間かとちょっと期待する心に、暗闇の中明かりもつけずに駆け寄ってくる人は、怖い類の人しか思い浮かばない
闇の中から現れたのは、頭部に後方へ流れるような角を3本生やした肉食恐竜似のモンスター
前足は小さく、後ろの二本足で立っている
瞳は透き通るような青
体表は下側が灰色の滑らかな皮膚で、上側は黒く短い毛皮でできているようだ
大きさは馬より少し小さいくらいだろうか?
「おぉ~!」
新しいモンスターにちょっと感動しながら見ていると、モンスターは首を傾げるようなしぐさをした
「やっぱ、恐竜は男の浪漫だよな!まぁ、ちょっと違うみたいだけど生きてるのを見れるってのはテンション上がるな~♪」
「あーあ、これがゲームなら肉とか投げて餌付けすんのに、くっそ、今はむしろ俺が食いたいくらいだし」
軽快な足取りで近づいてきた恐竜?は亮平に頭を擦り付けてきた
「お?なんだお前、人に馴れてるのか?」
やけに人懐っこい感じで敵意の無さをアピールしてくる恐竜
なんか尻尾も振ってるし
「よし、実はちょっと寂しかったんだ。お前一緒に来るか?」
「ガア゛!」
亮平が歩き出すと小鴨のように付いて来る恐竜
「それじゃあ、お前って言うのもアレだな。名前を決めるか」
北へ向かいながら、名前を決めるために後ろ歩きでよーく観察していると、はたと気がついた
(やべっ!コレまさか竜種とかってヤツの分類?というか、その前にモンスター見て警戒する前に感動するって、どんだけ恐竜好きだよ俺…。恐竜図鑑は子供の頃以来見てないんだけどなぁ…)
モンスターは下級、中級、上級に分けて考えることができるのだが
その中で下級と中級を隔てるものが魔法を使えるか否かなのだ
この世界で魔法を使用できるかということは、それだけ戦力に直結しているのだ。
一部のモンスター、例えば竜種は高い魔法耐性と強靭な肉体を併せ持つため、凡百のモンスターとは一線を画する
もちろん個体差は出てくるが、竜種は総じて能力が高いためこのランク付けの例外になるとまで言われるモンスターだ
一瞬硬直しかけるが、敵意の無いことはわかっているのでとりあえず気にしないことにした
「まぁ、どっかで飼われてたやつかもしれないしな。それより名前なにがいいかな?クロ、ブラック、オニキス、オブシディアン…」
暇つぶしもかねて、そんなことを考えながら歩いていると突然竜が立ち止まった
「あれ?もうお別れ?月夜の散歩は良いんだけど、さすがに暗闇を一人で永遠と歩き続けるのは精神的に辛いんだが…」
モンスターと初めて戦闘以外での触れ合いがもう終わるのかと残念に思ってると、竜は10時の方向を見つめ動きを止めていた
その様子に亮平も視線の先を追ってみると、10個ほどの瞬く光が見える
「ん?なん―――!?」
こちらがそれを認識した瞬間にそれはやってきた
とんでもない圧力と背筋が凍りつくような感覚、成りかけを相手にしていたため多少は慣れたかと思っていた心に冷水をぶっ掛けられた気分だ
(違う、全く違う!成りかけなんかとはまるで別物だ!)
あまりのプレッシャーにのどが干上がり、自分が立っているのかどうかすら判らなくなる
これで中級なんて悪い冗談にしか聞こえない
これではまるで昨日の昼間感じたものよりも―――
「ま、さかッ、全部成体かッ!?」
瞬く光は徐々に数を増して大きくなる
それと共に感じる圧力も上がっていく
既に亮平は圧力だけで呼吸がおかしくなり膝が震えはじめていた
ナンダコレ
ナンダコレッ?!
パニックを引き起こしそうになっていた亮平は突然左腕を引っ張られた
「ッヒァ!?」
思い出したかのように突然暴れ始めたかのような心臓の脈動
驚き見た先には、知性を感じさせる透き通るような青い瞳
服の左腕をくわえていたのは出会って間もない竜だった
そいつは姿勢を低くしてこちらを見つめ続ける
「・・・・・・乗れって言ってんのか?」
頷く竜に頼もしさを感じた亮平は笑う
「ックはははははっ、スゲェなお前!あれ目の当たりにしても冷静ってか?お前俺より強えーんじゃね?」
当然だとでも言うかのように悠然と佇む姿は、媚を売るペットなどではなく王者そのもの
触れた毛皮は上質な手触りがした
「よろしく頼むぜっ新しい相棒!」
スラ子さんは出ませんでしたが、亮平君が浮気しましたw
はてさて、突然現れた竜くんは何を考えているのでしょうね?
さて、次回は・・・ゆっくり考えたいと思います
あ、いえそんなに遅らせる気はないですよ?
追記:遅れます しばらくお待ち下さい
というか、この下書きに肉付けを行ないたいと思います。
話数は減るかもしれませんが、文章は増える予定です。
ぶっちゃけリニューアル工事中
目指せ完走!