35. 明部
【前書き】
世界一のかっこよさを目指す男、鳴紫 恋。
消えたクラスメイトを巡り、赤羽剛と衝突した恋。
榊原青斗との再会により、恋らしさを取り戻す。
青斗の過去を受け、彼はどう進むのか!?
俺はぽかんと口を開けていた。
夕方のグラウンドには、練習を終えた部員たちの声がまばらに残っている。
照明が灯り始め、汗と土の匂いが混ざる。
ベンチ横。
青斗は、自分がサッカーを取り戻した日の話を一気に俺に語り終えたところだった。
「……というわけで、俺はそこで初めて
チームで勝つって意味を知ったんだよ」
沈黙。
「どうした、恋?聞いてる?」
「いやな……青春のいい話なのは、すっげぇ分かった」
俺は深く息を吸うーー
「だがーー」
「内容濃すぎだろ!!何だその話!!物語か!!」
青斗は眉をひそめる。
「いや、これでもだいぶ端折ったぞ?
必要なとこだけ話した。
語ってない部分も多い。
ほら、葵の決勝点なんて──」
「わかったわかった!落ち着け!
てかさらっと流したけど、
中二で“テッペン”って何!?やばすぎだろ!」
「たまたまだよ。
たまたま流れ着いたらそうなってた」
「流れ着きすぎなんだよ!!」
俺はじと目で青斗を見る。
「……本当に不良になってたんだな、お前」
「まぁな。でも大したことねぇよ。
ちょっと荒れてただけだ」
「流石青斗。
俺の中学時代なんか日にならない主人公っぷりだな。
このままだと題名
“榊原青斗のサッカー物語”になるところだったぞ」
「は?何言ってんだ」
「何でもねぇよ。……とにかく、足治って良かったな」
「あぁ」
青斗が軽く笑うと、俺はふっと表情を緩めた。
「恋も、なんか悩み吹っ切れた顔してるな」
「え?」
「さっき、お前にボール当たりそうになったろ?
あの時、めっちゃ難しい顔してて気づきもしなかった。
何か思い詰めてんのかと思ってさ。
悩み事あったんだろ?」
言葉を失う。
「……まぁ、ちょっとな。
俺一人で対処する自信がなかったし……
信頼してないわけじゃないんだけど、
誰も巻き込みたくなかった。
大体そんな感じだ」
頭の中に、二人の顔が思い浮かぶ。
青斗は静かに言った。
「そうか。よく分からんけど──
お前は強いから大丈夫だ。
巻き込みたくない誰かだって、
お前のことそう思ってるよ」
何も言えなかった。
「今日の試合見て思ったよ。
あの時の弱かった恋は、ちゃんと強くなってた」
青斗は笑う。
「再会したばっかで、まだお互い全部分かるわけじゃねぇけどさ。
困ったことあったらいつでも頼れよ。
今日の借り、返したいしな」
「……青斗」
「一人で抱え込むより、仲間を信頼するのも悪くねぇぞ?」
俺は肩を震わせ、笑った。
「……やっぱり叶わねーな、お前には」
練習後の空気が、ふっと軽くなった。
俺は勢いよくベンチから立ち上がる。
「よしっ、決めた!俺は部活を作ることにする!」
「は?何言ってんだ?今の流れでなんでそうなる」
「今の流れだからそうなんだよ!おい青斗!
お前、元ヤンのトップなんだろ?」
「その言い方、棘あるけど……まぁ、一応な」
「じゃあ、お前も入部しろ!」
「は?何言ってんだ。俺、サッカー部あるし」
「大丈夫!この学園、兼部オッケーだから!」
「いや待て。何する部活かも分かんねぇだろ」
「悪党をぶちのめす部活!
正々堂々、真正面からねじ伏せる!」
「悪党……?」
「俺はお前を信頼する!
お前が俺に自信をつけさせたんだ!
責任取れ!!」
「いや、一方的すぎんだろ……」
「安心しろ!部員の命は俺が補償する!」
「命って!?補償って何だよ……」
俺の目を見て青斗はそこで言葉を止めた。
「……まぁいい。
何かあったら頼れって言っちまったしな。
名前だけ貸しといてやるよ」
「ありがとう、青斗!」」
「で?部活の名前は?活動内容は?
部活創設には最低五人必要だろ?
俺とお前で二人、あと三人は?」
「部名は今、決めた」
グラウンドの土に指で文字を書く。
『明部』
「明部?何だそれ?」
「敵が暗部なら、こっちは明部だろ!」
「暗部?おい待て!!暗部って……あの暗部か?」
「やっぱ有名なんだな」
「有名どころじゃねぇよ。
俺が不良やってた頃でも裏じゃ聞かない日はなかった!
いい話を一度も聞いたことねぇ。
あまりにも卑劣で都市伝説だと思ってたが……
そんな連中と“正々堂々戦う”って本気か?」
「本当は戦う気なんてなかったさ。
でも──大事なクラスメイトがやられてんだ。
黙ってられるかよ。
俺の美学が許さねぇ」
青斗は困惑を通り越して思わず笑った。
「……俺の中学にお前がいたら、
俺はテッペン取れなかったかもな……」
「乗った!
ただし、サッカー部は絶対巻き込むな!
少しでも被害が出そうなら俺は降りる。
その範囲内なら明部とやらに協力してやる」
「流石青斗!!そう言ってくれると信じてたぜ!
頼りにしてるぞ!
ただ、部名の読み方がちょっと違うな」
「は?明部だろ?」
「いや、明部じゃなくて、
──ハイライト部だ!!」
「明部!?ダサくねぇか?」
「明るくてかっこいいだろ!
それに目立った方が暗部も接触してくるかもしれない」
「……まぁ、お前のセンスは疑うが、部名は一旦いいや。
で、残り三人は?」
「二人は当てがある。
巻き込みたくなかったが……
俺が守れば問題ねぇ。
明日頼んでみる」
(剛と白石なら……きっと俺を信じてくれる)
「じゃあ残り一人か……
サッカー部のやつは巻き込めねぇしな」
「一人だけ、当てがあるっちゃある。
信用できるかは怪しいけど……
そいつが味方になれば、色々楽になる」
「そいつ?」
「まぁ明日、目ぼしい奴らに声かけてみるよ」
「はぁ、そうだな。今日も遅いし、帰るか」
辺りはもう夜道だった。
俺たちは静かに歩き出す。
今日は色々あったが、明日からまたやるべき事が見えた気がした。
しばらく歩いたところで、青斗がふと振り返る。
「そういえば恋……」
「……?」
「ーー夢姉は元気か?」
夜風が急に冷たく感じた。
【後書き】
遂に初期構想の明部って名前を出せた!!
え?読み方?ハイライト部ですけど……
お読みいただきありがとうございます!
読んで下さったあなたはヒーローです!
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