↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第一章完結】ナルシズム!!  作者: おしるこ星人
第二章 蹴っ飛ばせ!青く輝くその足で!!
PR
33/37

33. 全部俺のもんだ!!


【前書き】


世界一のかっこよさを目指す男、鳴紫(なるし) 恋(れん)。


それは二年前。

まだ中学生だった頃の榊原(さかきばら) 青斗(あおと)。


サッカーを失い喧嘩に明け暮れる毎日。

同じクラスの葵(あおい)に誘われ再びサッカーをすることに。


天才ストライカーとして復活することができるのか!?



「遅いぞ、クソ坊主!」


「……あ?」


土曜日。

試合会場に着いた瞬間、

葵の祖父――小鳥遊(たかなし) 一(はじめ)が、俺にきつく当たる。


「まぁまぁ、おじいちゃん!

 そんなこと言わないの。

 せっかく榊原くんが参加してくれるんだから!」


「ふんっ。ワシはこんな坊主知らん。

 もっとマシなやつはおらんかったのか?」


「おじいちゃん!!」


葵が必死に宥めている。


(いきなり何なんだよ、あのジジイ。

 初対面で言うセリフじゃねぇだろ)


「ごめんね榊原くん!

 おじいちゃん口悪いけど……

 これでも本当は一番喜んでるんだよ」


「はぁ?本当かよ」


「昨日なんてね、『雨止まないし、人いないし、もうワシはダメかもしれん』って落ち込んでたの!」


「葵!余計なことを言うんじゃない!!」


(……いっそ落ち込んだままでいれば良かったのに)


そんなやり取りをしていると、

周りの大人たちが次々と声をかけてきた。


「君が榊原くん?本当に助かったよ!」


「ありがとな!これで十一人揃った!」


「いやぁ、若い子が来てくれると雰囲気が違うな!」


「いえ、俺は別に……

 お礼なら小鳥遊に言ってください」


「もちろん葵ちゃんにも感謝してるよ。

 でも、君にもね。今日は一緒に頑張ろう」


「……こちらこそ、よろしくお願いします」


その瞬間、胸の奥がふっと軽くなった。


(あれ?何だろう…すごく良い感覚だ)


ここにいる人たちは誰も自分のことを知らない。

その事実が少し心を軽くさせた。


俺はグラウンドの端に移動し、

ゆっくりとウォーミングアップを始めた。


左膝を確かめるように、一歩ずつ。

感覚を取り戻すように、呼吸を整える。


雨上がりの空気が、妙に心地よかった。


しばらくすると、一対一の練習が始まった。


ボールが転がってくる。

足を伸ばし、

壊れやすいガラスに触れるかの如く優しく触れた。


――その瞬間、忘れていた記憶が土砂流のように呼び起こされ、全身に電撃が走る。


(……うわ、マジか)


ボールは軽くて、吸い付いて、動く。


そんな当たり前のことが、

全て新しいような、懐かしいような不思議な感覚に思えた。


(そう……これだよ)


足裏が無意識にドリブルし始める。


ボールを押し出す。

返ってくる。

また押し出す。


足が勝手にリズムを刻む。

体が前へ前へと走りたがる。


(やっべ……楽しっ)


思わず笑いが漏れた。

抑えようとしても無理だった。


虚空だったはずの時間が、熱が、どんどん蘇ってくる。


「凄くいいなぁ。楽しそう」


その様子を近くで見ていた葵は思わず呟く。


葵には俺の姿が、まるで生まれて初めてサッカーの楽しさを知った少年のように映っていた。


しばらくドリブルで進んでいると、大人が前に立つ。

軽くプレッシャーをかけてくる。


その瞬間、俺の体が勝手に反応した。


重心をずらし、ボールを引いて相手の逆を取る。


抜けた。


「っははっ!」


声が出た。

もう止まらなかった。


久しぶりに走る風が気持ちよくて、

ボールが足に吸い付くのが嬉しくて、

ただただ楽しくて仕方がない。


(まだいける。まだ走れる。まだ抜ける。

 ……俺、まだサッカーできるじゃねぇか)


胸が熱くなる。

視界が広がる。

失っていた世界が一気に色づく。


久しぶりに“自分が戻ってきた”感覚。


だが、その時。


「――おい、坊主」


背中に低い声が落ちてきた。


振り返ると、小鳥遊監督が腕を組んで立っていた。

その目は鋭く光る。


「何だよ?」


俺は反射的に返答した。


「お前、左膝、怪我しとるじゃろ?」


一瞬で、頭が真っ白になる。


「……は?何で…」


「おじいちゃん!?どういうこと?」


「見てれば分かる。坊主のドリブルの仕方、

 明らかに左足を庇ってるように見えた。

 あの庇い方は、

 膝を怪我した選手がよくやる庇い方じゃ」


「……っ」


図星だった。

たったワンプレーを見ただけで小鳥遊監督は言い当てた。

誰にも言っていない俺の怪我を。

自分でも気づいていなかった無意識を。


「坊主、お前サッカーは好きか?」


突然の問いに、俺は眉をひそめた。


「は?いきなりなんだよ」


「わしはな、どちらかと言えば嫌いじゃ」


「……は?」


「いや、サッカーだけじゃない。

 スポーツそのものがあまり好かん」


淡々とした声なのに、妙に重い。


「スポーツほど理不尽なもん、他にないとは思わんか?

 生まれた環境と才能で、勝負の大半は決まる。

 努力や運で補えると言うが、その努力も運も、

 結局は環境と才能にある程度左右される」


俺は言い返せず、口を閉じた。


「それでいて、勝者の席はたった一つだけ。

 他は全部、敗者じゃ。

 狭き門どころか、門そのものがほとんど閉じとる。

 こんな狂った仕組み、他にあるか?」


小鳥遊監督は、まるで事実を読み上げるように続ける。


「それでも次世代は増え続けておる。

 現実を知ってもなお、

 “自分だけは頂点に立てる”と本気で信じとる」


俺の胸がざわつく。


「好きだから、楽しいから、勝ちたいから。

 動機は何でもええ。

 だがな――スポーツの世界に残りたいなら、

 勝ち続けるしかない」


小鳥遊監督の視線が、俺を射抜いた。


「さて坊主。

 お前がもしサッカーを好きで、

 この先も続けたいと思うなら――」


一拍置いて、静かに告げる。


「勝つしかない」


空気が一瞬で張り詰めた。


小鳥遊監督はさらに踏み込む。


「怪我でサッカーを失うか。

 負けてサッカーを失うか。

 どちらにしても、お前はサッカーを失う」


俺の喉がひくりと動く。


「なら選べ。

 どちらの“失い方”がマシか。

 どちらなら、まだ前に進めそうか」


小鳥遊監督の声は低く、しかし揺るぎなかった。


「失いたくないなら――勝て。

 それだけじゃ」


その一言が、胸の奥に火をつけた。


熱い。

苦しい。

でも、止まらない。


(……何だよ、こいつ)


気づけば、口が勝手に動いていた。


「好きだから?楽しいから?勝ちたいから?

 誰にも負けたくないから?

 そんなもん――どうでもいい!」


声が震えた。

怒りか、悔しさか、もう分からない。


胸の奥に沈めていた“あの時間”が一気に噴き上がる。


「あの時間は地獄だったんだ!

 苦しくて、怖くて、全部失って……

 それでも、まだ……!」


拳を握る。爪が食い込む。


「俺はもう二度とサッカーを失いたくねぇだけだ!!

 俺のサッカーは誰にも奪わせねぇ!!

 サッカーは――全部俺のもんだ!!」


叫んだ瞬間、空気が震えた。


小鳥遊監督は、ゆっくりと口角を上げた。


「坊主、試合が始まるぞ。さっさとアップせい」


「あぁ……!」


俺の心は、完全に燃え上がっていた。

もう止まらない。

止められない。



【後書き】


そろそろバトル見たいよね?作者もバトル書きたいです。


見切り発車すぎてここまで青斗の回想長くなるとは思ってなかったんだもん!!


今しばらく作者の趣味に付き合ってください(土下座)


お読みいただきありがとうございます!


読んで下さったあなたはヒーローです!


ブクマされたら泣いて喜びます♪


気軽に感想、コメントお待ちしております!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。