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【第一章完結】ナルシズム!!  作者: おしるこ星人
第二章 蹴っ飛ばせ!青く輝くその足で!!
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30. エースの代償

【前書き】


世界一のかっこよさを目指す男、鳴紫なるし れん


それは四年前。

まだ小学生だった頃の榊原さかきばら 青斗あおと


天才ストライカーと呼ばれた彼に一体何があったのか!?



「この怪我だと……かなり厳しいね」


四年前。

病院の白い診察室で、医者が淡々と現実を告げた。


「そこを何とかならないでしょうか?

 青斗、次が小学校最後の大会なんです。

 引っ越す前に……どうにか出させてあげたくて」


母は必死に懇願するが、医者は申し訳なさそうに首を振った。


「僕としても残念だけど……

 成長期の膝にはよくある症状でね。

 まだ十二歳だよね。ここで無理すると、

 今後に響いてしまう危険性がね…」


沈黙が落ちた。

それから、俺は答えた。


「……分かりました。安静にします」


もちろん嘘だった。

その場しのぎの、薄っぺらい嘘。


病院を出た帰り道。

夕焼けの中で、俺は母に言った。


「俺、次の試合出るよ。

 そんな大した怪我じゃなさそうだし、

 無理しなきゃ大丈夫だって。

 みんな俺に期待してるし……」


母さんは立ち止まり、複雑な顔をした。


「……分かったわ。

 でも絶対に無理しちゃダメよ。

 少しでも痛くなったら、すぐ交代するのよ?」


「うん。分かってる」


――もちろん、分かってなんかいなかった。


そして、試合の日が来た。


「ほら、青斗!」


味方からのパスを、俺は華麗にトラップした。


「おう」


前にはディフェンス三人。

完全に警戒されている。


「やらせるかよ!」


二人が同時に寄せてくる。

だが、フェイント一つであっさり抜けた。


「なっ……!?」


膝は痛む。

でも、まだ走れる。

勢いのままトップスピードで最後の一人へ迫る。


「抜かせてたまるかぁ!」


最後のディフェンスはコースを切っていた。

だが、ボールを切り返すと股が開く。


シュートコースができた。


「もらった!」


振りかぶった瞬間、

左膝に鋭い痛みが走った。


「ぐっ……あああああっ!」


それでも、振り抜いた。


ボールはディフェンスの股を抜け、

一直線にゴールへ突き刺さる。


「うおおおおおおおお!!」


仲間たちの歓声が爆発した。


「流石青斗だな!俺たちのエース!!

 ……あれ?青斗?どうした?」


「っ……ああああああ……!」


俺は膝を抱えて倒れ込んでいた。


「おい、青斗!先生!青斗が――!」


視界が滲む。

痛みで何も考えられなかった。


ーー


「この怪我だと……もうサッカーは厳しいね」


医者は淡々と告げた。


胸が、音を立てて崩れた。


病院を出ると、仲間たちが待っていた。


「青斗、どうだった?」


俺は松葉杖をつきながら、笑って答えた。


「大したことないってさ。

 数週間もすれば治るって」


嘘だった。その場しのぎの薄っぺらい嘘。


「良かったぁ!大会には間に合うんだな!

 心配させんなよ!」


「今日の試合も青斗のおかげで勝てたし、

 青斗が戻るまで勝ち進むぞ!」


「でも次の相手強いんでしょ……?」


先生が明るく言った。


「大丈夫、みんななら出来る!

 青斗のためにも勝ち進もう!

 先生も応援してる!」


「おー!!」


そして次の試合――

俺たち光ヶ丘小学校は、0対1であっけなく負けた。


「ごめん、青斗……

 お前が戻ってくる前に、俺たち負けちゃった……」


「くそっ……もう少しで勝てたんだけどなぁ……」


チームメイトは分かりやすく落ち込んでいた。

先生はすぐに声を張る。


「みんな、よくやった!

 青斗がいない中で、しっかり戦った。

 胸を張れ。

 先生は君たちを誇りに思うぞ」


その言葉に、俺も乗っかった。


「そうだよ、みんな!

 俺の方こそ途中で抜けちゃってごめん。

 みんな、すげぇ頑張ってたよ!」


「ありがとな、青斗」


「俺たちも青斗と一緒に戦いたかったよ」


先生が手を叩く。


「しんみりするのはここまで!

 さぁ、帰る支度をしよう!」


「はーい!」


みんなが動き出す中、

俺は松葉杖をつきながら水道へ向かった。


その途中、背後から声が聞こえてくる。


「正直さ……青斗いなかったら勝てるわけないよな?」


「それな。初めから勝てると思ってなかったし。

 やっぱ青斗がいないとダメだわ。

 このチームは青斗のチームだしな」


「まぁ、青斗いないなりに俺たち頑張ったよな?」


(は?…何だよ…それ…)


そのとき、俺はようやく理解した。


俺はこいつらの言い訳に成り下がってしまったのだと。


俺が怪我した時点で、

こいつらは本気で勝つ気なんて無くなっていた。


「青斗がいないから負けた」


その言い訳が、最初から用意されていた。


(そんなことのために俺は、

 自分の今後のサッカー人生を投げ打ってまで

 あの一点をもぎ取ったのか?)


そして、それはまた自分自身も同じだったと気づく。

いつしか勝つための純粋なサッカーなど忘れ、

ただひたすら、チームメイトが求めるサッカーをしていた。


失って初めて気づく。

残ったのは壊れた左膝と焦燥感だけ。


だからこの日を境に、俺はサッカーを失った。


そして程なくして、父の転勤で隣町まで引っ越した。


サッカーのない中学生活は――

想像以上に、悲惨だった。


【後書き】


小学時代のチームメイト全員喋らすとテンポ終わるので選ばれし子しかセリフ書けなかったです…

選ばれし子達おめでとう!!


急に全員のセリフ書いてもそれはそれで面白いからギャグ小説ならあり!


お読みいただきありがとうございます!


読んで下さったあなたはヒーローです!


ブクマされたら泣いて喜びます!


気軽に感想、コメントお待ちしております♪


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