26. 青いストライカー
【前書き】
世界一のかっこよさを目指す男、鳴紫恋。
突如巻き込まれたサッカーバトル。
試合開始と同時に異次元の速さを見せる恋と青斗。
二人のコンビネーションが相手ゴールに突き刺さる。
しかし、何やら怪しい気配…
二人は勝利することができるのか!?
ピーー!!
高木の笛と共に試合が再開された。
再開と同時に、佐伯が俺の進路に体をねじ込み、
剛田はボールを持ったまま青斗へ突進する。
そして――どさくさに紛れて、
青斗の足元を蹴りつけた。
ガッ!
「っ……!」
観客がざわつく。
「今の絶対ファールだろ!」
「審判何してんだよ!!」
だが高木は二年の指示で完全に無視。
剛田がニヤつく。
「どうした天才くん?
怪我の足、また壊れちまうぞ?」
しかし――
青斗は微動だにしなかった。
ただ、静かに剛田を見た。
その目は、怒りでも焦りでもない。
氷のように冷たい。
剛田が一瞬、息を呑む。
(……な、なんだこの目……)
次の瞬間。
青斗は剛田の足元からボールを奪い、
ヒールリフトで剛田の頭上を抜いた。
「はっ!?」
そのまま俺に向かって、
ふわりとループパスを上げる。
フワッ。
「恋、上!」
青斗はゴールへ走り出す。
俺はニヤリと笑う。
だが佐伯が前に立ちふさがり、背中で押しつぶすように抑え込む。
「甘ぇんだよ!俺のボールだ!」
その瞬間――
佐伯の背中にあった俺の感触が消えた。
「……え?」
慌てて後ろを振り向くが、
誰もいない。
もう一度前を向くと――
目の前に俺の背中があった。
「はっ……!?いつの間に!!」
佐伯がファール覚悟で腕を掴もうとするが、
風のようにすり抜けた。
「甘ぇんだよ!俺のボールだ!!」
俺はパスモーションに入る。
「青斗!強さは調整できないから、任せた!」
そう言って、青斗の走る方向へ――
天高く蹴り上げた。
ボールは物凄い音を立て、勢いそのまま、
ゴールを通り越しそうなほど高く上がる。
「あー、どこ蹴ってんだよ…」
「せっかくのチャンスがもったいねぇ」
思わず外野がため息を漏らす。
ズドンッ!!
しかし、青斗は地面を思いっきり踏み込む。
そして、勢いよく跳び上がった。
身体が空へ空へ舞い上がる。
どんどん上昇していく。
その姿に観客が息を呑む。
「え……嘘だろ……?」
「あの構え!オーバーヘッド!?
この高さで!?」
「一年であれやるのかよ!!」
青斗は身体を回転させ、空中でボールを捉える。
バシュッ!!
完璧な軌道。
キーパーは一歩も動けない。
ボールは一直線にゴールへ吸い込まれる。
ドォンッ!!
ネットが大きく揺れる。
そして――
「またしても、決まったあああああああああ!!」
グラウンドが揺れる。
一年たちは跳ね、叫び、抱き合い、
今日一番の歓声が爆発した。
その喧騒の中心で――
青斗だけが、異様なほど静かだった。
着地した青斗は、
ゆっくりと剛田の方へ歩き出す。
その歩みは軽い。
だが剛田には、
巨大な怪物が迫ってくるように 見えた。
「……なんだ……なんだよ……
俺たちが……負けたのか……?」
あまりにも一瞬すぎて、
脳が現実を拒否しているように見えた。
剛田の喉がひゅっと鳴る。
足が勝手に後ずさる。
青斗が目の前まで来た瞬間――
「ひ、ひぇ……」
剛田は情けない声を漏らした。
しかし青斗は、そんな剛田に向かって丁寧に頭を下げた。
「……ありがとうございました。
先輩たちのおかげで、いい練習になりました」
その声は礼儀正しい。
だが――
温度がない。
氷の刃みたいに冷たい。
その一言が、
剛田の胸に重く突き刺さる。
背中を汗がつうっと流れた。
青斗は顔を上げ、一切の感情を見せずにその場を去った。
その背中を見た瞬間、剛田の中で何かが折れた。
「な、何なんだよ!お前ら!!
これは何かの間違いだ!
イカサマだろ!?
こんなの俺は絶対認めない!
いい気になるなよ!!」
必死の叫び。
だが――
周囲の視線は冷たかった。
「何あれ?ダサすぎ、笑」
「いや、流石に無理あるわ」
「一年、普通に強ヤベェーな」
野次馬たちの声が剛田の耳に突き刺さる。
「ちっ……うるさい!どけよ!!」
剛田は膝を震わせながら、
野次馬をかき分けて逃げていった。
その背中は、もう“先輩”の威厳など微塵もなかった。
圧倒的、完勝。
勝負にすらならなかった。
【後書き】
「剛田」って名字強そう。オレンジの服着てそう。
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