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【第一章完結】ナルシズム!!  作者: おしるこ星人
第二章 蹴っ飛ばせ!青く輝くその足で!!
23/35

23. 逃げて勝つ


【前書き】


世界一のかっこよさを目指す男、鳴紫恋なるしれん


物語の舞台は五年前まで遡る。


それはまだ幼くて、泣き虫だった頃の記憶。


彼との出会いがもたらすものとは…



五年前、光ヶ丘小学校の廊下の隅。


「おい、何とか言ってみろよ!」


十一歳の俺は、同級生の健太・康太・瑛太に囲まれ、

逃げ場を失っていた。


「やめてよ……ぼ、僕じゃないもん……」


小さな体を震わせ、今にも泣き出しそうな声。


当時の俺は、弱くて、よく泣く子どもだった。


「お前がやったんだろ?

 俺たちのカマちゃん逃がしただろ?」


健太が胸ぐらを掴んで問い詰める。


三人が飼っていたカマキリ――“カマちゃん”が

飼育ケースから逃げたらしい。

その犯人として、なぜか俺が疑われていた。


「ち、違うよ……カマちゃんなんて知らないよ……」


声は震え、涙が滲む。


「おい健太、こいつ吐く気ねぇぞ」


康太が後ろから煽る。


「そーだそーだ!こいつがやったんだー!」


瑛太も便乗する。


「いい加減吐けよ!

 これはカマちゃんの怒りだー!」


健太が拳を振り上げた。


目をぎゅっと瞑る。


「助けて……“夢”……」


咄嗟に、助けを求める。


その時。


「お前ら、何やってんだ?」


廊下の向こうから声がした。

ゴミ袋を片手にした少年が歩いてくる。

外に捨てに行く途中だったのだろう。


健太の動きが止まる。


「何って、遊んでるだけだよ」


康太が言い訳する。


「そうそう、楽しく遊んでただけ。

 なぁ、恋?」


三人の視線が一斉に向けられた。

その圧に負け、震えながら答えた。


「そ、そうだよ……た、たのしい……なぁ……」


しかし、少年は俺の顔をじっと見つめる。


「そうなのか?

 そんな風には見えなかったけど」


「恋も言ってるし、もういいだろ?

 ーー青斗」


「……そうだな。邪魔した。じゃあ行くわ。

 またな、恋」


そう言って少年――青斗は踵を返す。

だが、目だけは真っ直ぐに俺を見ていた。


(助けろと言え。恋)


その視線は、言葉よりも強く俺に届く。


「じゃあ、続きを始めるか」


健太がニヤつきながら俺へと向き直る。


その瞬間、思わず叫んだ。


「た、助けて!

 ケンちゃんたちが……カマちゃん逃がしたって……

 殴ろうとしてくるぅ……!」


「おいテメェ、ふざけんな!」


健太が口を塞ごうと飛びかかる。


青斗の足が止まった。


「……やっぱりか」


小さくため息をつき、ゆっくりと振り返る。


慌てた康太と瑛太が、青斗を宥めようと声を上げる。


「お、おい青斗!お前には関係ないだろ!」


「そ、そうだ!これは俺たちの問題だ!

 ちょっとサッカーが上手いからって調子乗るなよ!」


だが青斗は一切聞く耳を持たない。

その目は、俺だけを見ていた。


「恋!三秒後に目をつぶれ!」


「え?」


青斗は返事も待たずにカウントを始める。


「一!」


その瞬間、青斗は康太と瑛太の頭を片手で押さえ、

そのまま二人を“ハードル”のように飛び越えた。


「うわっ!?」「な、何だよこれ!」


二人はあまりの速さに反応できない。


「二!」


青斗はそのまま健太へ一直線に突っ込む。

健太は恐怖で目を瞑った。


「くっ、来るなぁぁ!」


だが青斗は健太にぶつからず、

その横を滑り込むように抜け、俺の手を掴んだ。


「今だ――三!」


反射的に目をつぶる。


次の瞬間。


ドンッ!!


青斗が振り抜いたゴミ袋が、健太にクリーンヒットした。


「ぐっ……!!」


中身のゴミがぶちまけられ、三人は慌てて後ずさる。


「恋!走るぞ!」


青斗は恋の腕を引き、

三人の間をすり抜けて走り出した。


「あ、ふざけんな、青斗!

 待てー!恋!!」


健太たちが追いかけようとするが――

青斗のスピードが速すぎて、まったく追いつけない。


腕を引かれながら必死に走る。

青斗の背中が大きく見えた。


(は、速ぃ……!)


風が頬を切る。

こんな速度で走ったのは生まれて初めてだった。


その風は、不思議と心地よかった。


しばらく走り、二人は校舎の外までたどり着いて座り込んだ。


「ここまで来れば大丈夫だろ……」


青斗が息を整えながら言う。


「う、うん……」


俺は体力がなく、肩で大きく息をしていた。


しばらく沈黙が流れる。


「……ぷっ」


青斗の肩が小さく揺れた。

気まずさなのか、緊張が切れたのか――


「ぷはは……」


ついに堪えきれず、青斗は吹き出した。


「はははははっ、はははははは!」


その姿につられて、俺も笑い出す。


「あはは……ははははは!」


二人は涙が出るほど大笑いした。

さっきまでの恐怖が嘘みたいだった。


笑いが落ち着くと、青斗が手を差し出すように言った。


「あー……俺は三組の榊原青斗さかきばらあおと

 あんまり話したことないよな?」


「うん。僕は五組の鳴紫恋。

 さっきは……助けてくれてありがとう!」


「いつもあんな感じなのか?」


「うん……僕、言い返せないから。

 ケンちゃんたちも、本当は僕じゃないって分かってるだろうに……」


「どうして言い返せないんだ?」


「だって……怖いから。

 言い返したら殴られる……」


「先生たちには頼らないのか?」


「先生に言うなって言われてる。

 言ったら殴るぞって」


「そうか。

 でもな、辛い時は誰かに頼れよ」


「…うん」


青斗は少し考え、立ち上がった。


「まぁ、殴られない方法ならある」


「……え?」


「一番簡単で、一番確実な方法だ」


青斗は前に立ち、真っ直ぐ言った。


「――逃げるために、速くなること」


その言葉に、俺の目はぱっと明るくなる。


青斗は続けた。


「追いつけなければ、手も足も出せない。

 立ち向かうんじゃなくて、逃げて勝つんだ」


胸が震えた。

こんな考え方、思いついたこともなかった。


「ぼ、僕……速くなれるかな?」


「足の蹴りとフォームさえちゃんとしてれば、

 あいつらよりは絶対速くなれる。

 小学生なら筋力差もほとんどないしな」


「足の蹴りと……フォーム……」


「俺でよかったら教えるよ。

 サッカーやってるし、少しは分かる」


「お、お願いします!速くなりたいです!!」


青斗は笑って頷いた。


こうして、俺は走り方を習い、少しずつ速くなっていった。


「おい、恋!どこ行きやがった!」


健太たちに追われても、もう捕まることはなかった。


やがて、次第に殴られることも、

いじめられることもなくなっていく。


しかし、その結果、走りを教えてもらう機会が少なくなり、

青斗とは自然と会う回数も減っていった。


そして、中学に上がる少し前。

青斗は突然転校し、小学校から姿を消した。


ーーそれ以来、一度も会っていなかった。



【後書き】


タイトル変えました!

『ナルシズム』から『ナルシズム!!』へ超進化!


理由は特にありません…強いて言えばかっこいい。


内容もさらに進化できるように頑張ります!


お読みいただきありがとうございます!


読んで下さったあなたはヒーローです!


ブクマされたら泣いて喜びます!


気軽に感想、コメントお待ちしております♪


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