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22. 衝突

世界一のかっこよさを目指す男、鳴紫恋なるしれん


戦いは終わり、全てを救えたはずだった。


しかし、零れ落ちた欠片が着々と恋を蝕んでいく。


白い世界に包まれた彼は一体何を思うのか。



「鳴紫くん……?」


放課後のチャイムが鳴り終わるころ、ほのかの声で

恋はようやく夢から引き戻されたように顔を上げた。


気づけば教室には誰もいない。

時間の感覚がすっぽり抜け落ちている。


そういえば——

剛と白石と放課後に落ち合う約束をしていたことを思い出した。


「鳴紫くん、大丈夫?」


「あぁ、大丈夫だ。……白石こそ平気か?」


「うん。私も、まだちょっと混乱してるけど」


「おい、恋、白石!!」


息を切らせた剛が、

教室後方のドアに手をついたまま立っていた。


「聞いたぞ!」


その一言だけで、

何を指しているのかは十分すぎるほど伝わった。


ーー


旧校舎の屋上。

恋がいつも朝の日課をこなしている、

誰にも邪魔されない場所。


三人は、人目を避けるようにそこへ集まった。


「それで——タカシは攫われたのか?」


剛が開口一番、切り込んでくる。


恋は、二人を不安にさせまいと、言葉を慎重に選んだ。


恋にはわかっていた。

もし本当に攫われていたのなら、暗部が“引っ越し”なんて手間の込んだ処理をするはずがない。

せいぜい欠席扱いにする程度だ。


つまり——タカシはもう……


「攫われたのかどうかは、まだ断言できない。

 ただ、状況から見て暗部が動いた可能性は高い」


「倉庫の中も、綺麗に片付いてた。

 戦った痕跡も、タカシが使ってた痕跡も、

 全部消えてた」


剛とほのかは息を呑む。

昨日の惨状を知っている者なら、一晩も経たずに“何もなかった”状態に戻せることが信じられない。


「俺の見積もりが甘かった。

 暗部がここまでやるなんて……すまない。

 こんなことに、お前たちを巻き込んでしまって」


「何でお前が謝るんだよ!

 元はと言えば、タカシが暗部と関わったせいだろ。

 お前は悪くない」


「そうだよ。

 鳴紫くんが責任感じることなんて、何もないよ」


「……そう言ってもらえると、少しは気が楽になる」


日頃の恋との違いに、二人は戸惑っていた。


いつもの恋なら——

「タカシが攫われたかもしれない!

 暗部を見つけて叩きに行くぞ!」

 と真っ先に言い出すはずだ。


だが今の恋は、明らかに沈んでいる。

状況判断に長けた恋がここまで落ち込むほど、

暗部は“ヤバい”ということだった。


「……これからの話なんだが、

 小手これは返そうと思う」


「は?返すって……暗部にか?」


「あぁ」


「お前が見逃すのかよ?

 俺が言うのも何だが、犯罪まがいに加担した連中だぞ?

 俺はてっきり、お前なら暗部を探し出して、

 タカシの居場所を聞き出すもんだと思ってたのに……」


恋も、本当はそのつもりだ。

だが、それはあくまでも“一人で”やるつもりの話だ。

二人を巻き込みたくないから、あえて嘘をついていた。


「いつもならな。

 でも今回は相手が悪すぎる。

 倉庫を一晩で元通りにできるような得体の知れない連中だ。

 挑むのは危険すぎる」


「鳴紫くん……本当に、それでいいの?」


ほのかも不思議そうに見つめる。


「よくはない。でも仕方ない。

 タカシの居場所は……

 小手これを返す時に聞いてみる」


(すまない。今は引いてくれ)


「……は?本気で言ってるのか?

 いや、見逃すのはダメだろ!

 学園側に相談しよう!

 協力してくれるかもしれない!」


「“タカシは引っ越しじゃなくて、

 暗部に攫われたかもしれない”って言うのか?

 信じてもらえると思うか?」


「それは……

 でも、力になってくれるかもしれないし……」


「学園側が暗部と繋がってないとも限らない。

 タカシに倉庫を貸してたくらいだ。

 信用できるとは思えない」


「でも……でも……」


「剛、頼む。今回は引いてくれ。

 相手が悪すぎた」


(頼む……お前たちを巻き込みたくない)


「……何だよ、それ……」


「……?」


「ふざけんなよ!

 お前が諦めるのか!?

 怖気づいたからって態度変えて、

 小手こいつまで返すって?

 “世界一かっこいいやつ”を目指してるんだろ!

 そんなお前が……

 俺が憧れたお前が、簡単に諦めちまうのかよ!!」


恋は拳を握り、唇を噛む。


「…あぁ……」


その返事を聞いた瞬間、剛の目から光が消えた。


「……は。そうかよ……

 お前には、がっかりだ……」


「赤羽くん……」


ほのかは二人の間に割って入れない。


バタンッ!!


剛は勢いよく屋上を飛び出していった。


しばらく、風の音だけが屋上に残った。


「……じゃあ、そろそろ私も行くね」


ほのかは、それ以上何も言わなかった。


「あぁ。時間取らせて悪かった。

 この件は……後は俺が何とかする」


「うん。でも、何かあったら頼ってね。

 きっと赤羽くんも、私と同じ気持ちだから」


ほのかはそう言い残し、静かに屋上を後にした。


「……だせぇな」


恋は小さく呟く。

夕風が、いつもより冷たく感じられた。


ーー


ここは本校舎。


「クソッ……何なんだよ……」


剛は苛立ちを抱えたまま、

階段を乱暴に駆け上がっていた。


曲がり角に差しかかった瞬間——


「きゃっ!」


女子生徒とぶつかり、彼女は尻もちをつく。

剛は慌てて手を差し出した。


「す、すまねぇ!大丈夫か?」


しかし返ってきたのは容赦ない声だった。


「ちょっと!痛いじゃない!

 どこ見て歩いて——って、剛?」


よく見ると、ぶつかった相手は黒音だった。


「あ、西条……」


黒音は剛の手を借りて立ち上がる。


「まったく……気をつけなさいよ。

 階段は走らない。基本でしょ?」


「走ってたわけじゃねぇよ。

 ……ただ、むかついてただけだ」


「何にむかついてるのよ。

 ……まあいいわ。

 鳴紫恋に伝えてくれる?

 佐藤の件、学園側に報告しといたって。

 大事にはならなそうよ。良かったわね」


「そうか。

 でもタカシはもう引っ越したから意味ねぇな」


「は?引っ越した?どういうこと?」


「そのまんま。今朝、引っ越したらしい。

 だからその報告は無駄だったな」


「ありえないでしょ。昨日の今日でお引っ越し?

 どう考えてもおかしいじゃない。

 逃げたってこと?」


「知らねぇよ。俺だって今日聞いたんだ。

 それと……恋にはあんたから伝えてくれ。

 俺、あいつとは絶交したから」


「は?嫌よ。めんどくさい。

 自分で言いなさい。私だって忙しいの」


黒音は迷いなく切り捨てた。


「……ぐぬぬ。

 お前ならそう言うと思ったけどよ……」


黒音は腕を組み、少し考えるように目を細める。


「それにしても、佐藤の件……

 何か裏がありそうね」


「あんまり、深入りしすぎるなよ。

 お前だって危険な目に……会うかもしれない…」


(あれ?ちょっと待てよ。なんだこれ…)


「何よ、危険な目って?」


(……は、もしかして恋も…)


「ちょっと、聞いてる?」


(クソ…だとしたら俺は…クソッ…)


「悪い、用事思い出した、また今度!」


剛はそのまま全速力で駆け出した。


「あ、ちょっと剛!

 待ちなさいよ、階段は走るなってーー」


黒音は呆れたようにため息をつく。


「アイツら…何か隠してるわね…」


ーー


屋上を後にした恋は、

どこへ向かうでもなく校舎を歩いていた。


気がつけば、グラウンドの横に来ていた。

夕日が差し込み、運動部の掛け声が響いている。


サッカー部が練習している。

野球部が声を張り上げている。

陸上部がトラックを駆け抜けている。


その日常の光景が、恋にはやけに遠く感じられた。


(……これからどうする)


暗部を探し出し、倒して――タカシを取り戻す。


そのためには、一人でやるしかない。


(……タカシが生きてる可能性も、ゼロじゃない)


自分にそう言い聞かせる。

落ち込む心を、無理やり支えるように。


そう思った瞬間だった。


――ビュンッ!!


横からサッカーボールが猛スピードで飛んできた。


恋は考え事に夢中で、気づくのが遅れた。


(……やばい)


避けられない。

顔面に直撃する――


その瞬間。


ビュンッ!!


横から影が飛び込んできた。


ボールより速い。

人間離れした反応速度。

そのまま恋とボールの間に滑り込む。


ドンッ!!


サッカー部員が恋を背にかばい、

胸でボールを完璧にトラップした。


あまりにも滑らかで速い動作に、

恋は思わず見惚れる。


「すまん。怪我はないか、恋」


サッカー部員が恋の名を呼んだ。

その顔を見て、恋はようやく気づく。


「あ、青斗あおと!!」


それは、恋の古くからの友人だった。


登場人物増えてきて嬉しい!


お読みいただきありがとうございます!


読んで下さったあなたはヒーローです!


ブクマされたら泣いて喜びます!


気軽にコメント、感想お待ちしております♪


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