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21. 消えたクラスメイト

世界一のかっこよさを目指す男、鳴紫恋なるしれん


タカシとの激闘を終え、ほのかを助け出し、

全てが丸く収まったかのように見えた夜。


だが翌朝、世界は静かに“形を変えていた”。


――恋はまだ知らない。

あの夜の“本当の結末”を。


第二章開幕!!



朝の光は、またしても俺を照らすためだけに

存在しているようだった。


ここは旧校舎の屋上。

鳴紫恋なるしれんは今日も朝から

いつものように上から治安を見張っていた。


「おーい!恋!そんなところで何してんだー!」


下から赤羽剛あかばねごうの声が響く。


「お、剛!朝の日課だー!

 お前も登って来いよー!」


「分かったー!」


しばらくして、剛が屋上に顔を出した。


「いやぁ……旧校舎の屋上って登れたんだな」


「ここ、絶景スポットなんだよ。

 毎朝ここで、悪い奴がいないか監視してる」


屋上からは校門前がよく見えた。


「毎朝!?

 昨日まで不良してた身からすると地獄だな……」


剛は苦笑しつつ、ふと真顔になる。


「そういえば昨日の件……

 西条が報告してくれるらしいけど、

 大丈夫なんだよな?

 タカシ、停学とか退学とか……

 最悪逮捕とか……」


剛はタカシの処分を気にしていた。


恋は腕を組む。


「まぁ、大丈夫だろ。

 白石は被害届を出さないって言ってたし、

 タカシも反省してた。

 悪くても……タカシと、

 お前を含む加担した生徒が停学くらいだ」


「……あぁ。もしそうなったら、

 俺はちゃんと受け入れる。

 これまで悪いこと散々してきたしな。

 反省して……もう二度と悪いことはしねぇ」


恋は笑って剛の肩を叩く。


「そうだな。

 世間じゃ“人は変われない”って言うけど、

 俺は違うと思ってる。

 小さな一歩の積み重ねで、人は変われる。

 だから剛、

 お前が変わるところを俺に見せてくれよ。

 俺はお前を信じてる」


剛は力強く頷いた。


「あぁ、見てろよ。証明してみせる」


恋も満足げに頷く。


「となると、残る問題は

 ――暗部だな」


「暗部か……正直、

 何がしたいのか分からないのが不気味だよな。

 タカシに協力したってことは、

 犯罪まがいのことに手を貸したってことだし」


「あぁ。しかも見返りも求めてない。

 “可能性”って言葉も引っかかるし……

 それにこの小手ガントレッド

 昨日はゴタついて返し忘れたしな」


「でも、実害は出てないんだよな?」


「今のところはな。

 だけど、妙な組織を野放しにはできない。

 俺の美学がそれを許さない」


「まぁ、そうなるよな。

 俺も協力するぜ。

 力不足かもしれないけど、盾にでも使ってくれ」


「ありがとう。頼るところは頼らせてもらう」


時計を見ると、始業まであと十分。


「まずは情報収集だな。

 今日タカシに会ったら、色々聞いておく。

 放課後また落ち合おう」


ーー


剛と別れ、恋は自分の教室へ向かった。


一年一組。

ここが恋とタカシ、そしてほのかの教室だ。


教室に入ると、

クラスメイトはすでにほとんど揃っていた。

その中に、白石しらいしほのかの姿もある。

だが――タカシの席だけが空いていた。


(まだ来てないのか…)


恋はほのかに声をかける。


「おはよう、白石。

 タカシはまだ来てないみたいだな」


「おはよう、鳴紫くん。

 そうだね、佐藤くんはまだみたい」


恋は軽く頷き、昨日のことを思い出す。


「今朝、剛とも話したんだけどさ。

 昨日の件で少し話し合いたい。

 放課後、時間あるか?

 あまり長くは取らせない」


「部活の前なら少しだけ……大丈夫だよ」


「助かる。じゃあ頼む。

 そういえば白石って何部なんだ?」


「え? 軽音楽部だよ。

 い、一応……ボーカル」


なぜかほのかは頬を赤くして視線を逸らした。


「へぇ、そうなのか。

 白石が前に出るイメージなかったから意外だな」


「あはは……

 楽器やりたい子は多かったんだけど、

 歌いたい子があまりいなくて。

 だから、引き受けたの」


(要するに仕方なくか……)


ピーンポーンパーンポーン。


始業のチャイムが鳴る。


「それじゃ、また放課後な」


「うん。またね」


恋は席に着いた。

それでもタカシは来ない。


(……遅刻か?

 まぁ、昨日帰るの遅かったしな)


その時、ガラッと扉が開き、

担任の南雲文爾なぐもふみちかが入ってきた。


「おはよー!みんな!今日も元気かー!!」


相変わらずのテンションだ。

この教師の明るさのおかげで、

恋がクラスで浮かずに済んでいるのも事実だった。


「よーし、まずは出席確認するぜー!

 呼ばれたら元気よく返事してくれー!!」


「イェーイ!!」


高校とは思えないノリだ。

まるで某テーマパークの

亀のアトラクションを彷彿とさせるが、

これが毎日続く。


「ーーその前に」


すると突然、南雲が急に出席簿を閉じた。

先ほどまでの明るさが嘘のように、

声のトーンが落ちる。


「君たちに……

 伝えなくてはならないことがある」


教室の空気が一瞬で冷えた。


「実は急な話だが……

 佐藤が引っ越すことになったそうだ」


「――は?」


恋の思考が止まる。


南雲は続ける。


「先生としても残念だが、

 急に決まったらしくてなぁ。

 今朝、親御さんから連絡があった。

 詳しい事情は――」


だが、恋の耳にはもう何も入ってこない。


周囲のざわめきだけが遠くで響く。


「え、引っ越し?急じゃね?」

「マジかよー」

「佐藤?話したことねぇな…」


その声も、どこか水の中みたいにぼやけていた。


そして――


バンッ!!


教室に大きな音が響いた。


恋はハッとする。

気づけば、自分が椅子を蹴って立ち上がっていた。


南雲が驚いた顔で近づいてくる。


「おい、どうした?鳴紫……」


「――へ?」


クラス全員の視線が恋に向けられていた。

ほのかとも視線が合う。

ほのかは完全に青ざめていた。


恋は、

自分の心臓が早鐘のように鳴っているのを感じていた。


「どうした?鳴紫?何かあったか?」


南雲がもう一度問いかける。


恋は思考を必死に回し、言葉を絞り出した。


「どうしてですか……?

 どうしてタカシが引っ越しなんか……」


「あぁ、ごめんな。

 先生も詳しい理由までは分からないんだ。

 今朝、佐藤の親御さんから電話があってな。

 “引っ越すことになった”って、それだけ」


「あり得ないでしょ!こんなタイミングで!」


「まぁ確かに、5月のこの時期は不可解だよな。

 学園も始まったばかりだし……」


(違う!俺が言いたいのはそうじゃない!)


恋の心臓が早くなる。


「いや、そういうことじゃなくて……

 昨日はあんなに普通だったのに、

 急すぎるというか……」


「そうだよなぁ。先生も気づかなかった。

 あいつなりに、

 みんなと別れるのが寂しかったのかもな。

 だから普通を装ってたのかもしれん」


(違う……違うんだ……)


南雲がふと首を傾げる。


「それにしても、先生知らなかったよ。

 鳴紫、あいつと仲良かったのか?」


「はい。昨日……仲良くなったばかりで。

 だから、その……

 タイミングが不自然というか……」


恋は必死に言葉を探すが、うまく出てこない。


「そうかぁ、……それは寂しいな。

 まぁ、人生いろいろあるからなぁ……」


(違うんだ先生……俺が聞きたいのは!)


「まぁ、

 佐藤も向こうで上手くやっていけると思うよ!」


「違う!!!」


恋は南雲の言葉を遮って叫んだ。


(違う……俺が言いたいのは……

 “暗部のせいなんじゃないか”ってことだ!!)


クラスメイトの視線がもう一度恋に集中する。

教室の空気が凍りついた。


「お、おい……大丈夫か?鳴紫……

 顔色が真っ青だぞ?」


しばらくの沈黙の後、南雲が声をかける。


恋は深呼吸し、かすれた声で言った。


「……すみません。少し取り乱しました。

 顔、洗ってきます」


「お、おう……そうか」


クラスメイトたちの騒つく声を背に恋は教室を出た。


「鳴紫くん…」


その姿を見ながらほのかも呟く。


廊下に出た瞬間、

胃がひっくり返るような吐き気が襲った。


味が何もしない。

嫌な予感だけが、胸の奥で膨らみ続ける。


(そうだ……倉庫……)


昨日、散々戦ったあの倉庫に行けば

何か掴めるかもしれない。

恋はそう思い、足が勝手に走り出していた。


息を切らしながら倉庫に辿り着いた瞬間、

恋は立ち止まる。


「……嘘だろ」


昨日、自分が殴り飛ばして壊したはずの扉が

傷一つなく、歪みもない。


まるで昨日の惨状が幻だったかのように、

完璧に修復されていた。


(ありえない……昨日は確かに……)


その扉に手をかける。

それからゆっくり開くと――


普通に開いた。


だが、そんなことはどうでもよかった。


扉の向こうに広がる光景に、恋は息を呑む。


中が……綺麗すぎる。


昨日の血の跡も、剥がれたコンクリートも、

散乱した道具も――

すべて消えていた。


まるで最初から何も起きていなかったかのように。


恋は奥へ進む。


しかし、昨日傭兵たちと戦った

“奥の通路”へは行けなかった。


正確には――

昨日は確かに存在したはずの通路が、

最初からなかったかのように壁で塞がれている。


恋は思わず後ずさる。


「……そんな、馬鹿な……」


この壁の先に通路があった。

そこを通って、

最深部のタカシの部屋まで行ったはずだ。


恋は壁に手を当てる。


冷くて硬い、しっかりとした感触があった。


タカシが存在した痕跡が、この倉庫のどこにもない。


喉が乾く。


「……暗部に……消された……?」


声が震えた。


恋は拳を握りしめる。


倉庫の静寂が、恋の不安ごと飲み込んでいった。


ーー


その後、どう帰ったのかは覚えていない。


気がつくと、恋は教室の席に座っていた。

南雲が心配そうに声をかけてきたが、

恋は「大丈夫です」とだけ答えた。


一限が終わると、

ほのかがそっと恋の席までやってきた。


「鳴紫くん……もしかして、これって……」


「……あぁ。おそらく……」


「じゃあ……やっぱり……」


二人ともはっきりとは言わない。

けれど、互いに同じ“可能性”を思い描いていることは分かった。


恋は視線を落としたまま言う。


「すまない、白石……

 まだ考えがまとまってない。

 だから、お前も不安だろうが…

 今は……一人で考えたい」


ほのかの表情が揺れる。

不安と、心配と、

何か言いたげな気持ちが混ざっていた。


「……うん。わかった」


それだけ言って、

ほのかは自分の席へ戻っていった。


恋は小さく呟く。


「……すまない……」


誰に向けた言葉なのか、自分でも分からなかった。


そこからの授業は、ほとんど頭に入らなかった。


タカシを探すにしても手がかりがない。

連絡先も知らない。

家も知らない。

昨日、あんな別れ方をするなんて

思ってもいなかったから。


ふと、タカシの言葉が脳裏に浮かぶ。


小手これはお前に託す』

『じゃあな、鳴紫、赤羽』


あいつは確かに“伝えていた”。

それなのに、自分は何一つ気づけなかった。


頭がぼうっとしてくる。


(……来る)


こういう時に決まって訪れる“あれ”が。


ーー最近よく見る夢。

ーーいつからか見るようになった夢。


ーー


視界が白一色に染まる。

その真ん中に、一人の少女が立っていた。


「どう、恋?ほのかは救えた?」


恋は黙り込む。


「また黙るの?

 いつも最初は黙るくせに、

 結局途中からしゃべり出すんだから!」


少女――ゆめは頬を膨らませ、地団駄を踏む。


「勘弁してくれよ……今、結構きてるんだ……」


恋は白い空間の中央で座り込み、下を向く。


「落ち込んでるの?

 今の恋が落ち込むなんて珍しい。

 昔の恋に戻ったみたい。

 救えなかったの?ほのか」


「……知ってるだろ。意地悪するなよ……」


「知らないよ。

 私は恋のことなんて何にも知らない。

 それに私はずっとここにいるんだから、

 外のことなんて分かるわけないでしょ」


「……白石は救えた。

 救えたけど……他に救いたい奴が、

 救えなかったかもしれない……」


「何それ。はっきりしないわね。

 でも、ほのかは救えたんでしょ?

 なら良いじゃん」


「夢……本気で言ってるなら怒るぞ」


「昔から変わらないね、そういうところ。

 全部は救えないのに救おうとする。

 でも、好きよ。

 そういう、もがいてるどうしようもない姿が、

 狂おしいほど愛おしい」


嘲笑なのか本心なのか、恋の中では計りきれない。


「想像もしてなかった…

 暗部がここまで危険な組織だなんて…

 無意識にもっと軽いノリで考えていた…

 そんな自分が許せない…」


「へぇー、色々悩んでいるのね。

 そんな頑張ってる恋に、私からのアドバイス!

 恋はどうせ止まれないんだから、進むしかない。

 たとえそれが地獄でもね」


少女は微笑んだ。


「だから進んで、進んで、進み続けて――

 死んじゃえば良いんだ」


ーー


「……鳴紫くん?」


ほのかの声が、夢の底から恋を引き戻した。


目を開けると、教室の窓が見えた。

どうやら机に突っ伏して眠っていたらしい。


気がつけば、もう放課後になっていた。



第二章開催です!!


知ってますよ。絶対夢の存在忘れてる人いたでしょ…


お読みいただきありがとうございます!


読んでくださったあなたはヒーローです!


ブクマされたら泣いて喜びます!


気軽にコメント、感想お待ちしてます♪


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