第2章:最初の狩り — カプート尋問
港湾倉庫・深夜 / 作戦開始
シカゴ湾岸の第5埠頭。
霧がゆっくりと流れ、赤錆びたコンテナがいくつも積み上がっている。
ジョンは黒い服に身を包み、屋根伝いに音もなく移動していた。
港湾の防犯カメラの配置、警備員の巡回パターン──すべて事前に把握済みだ。
数人の私兵が警戒していたが──
パスッ、パスッ!
サプレッサー付きの銃声が闇夜に溶ける。
彼らは倒れると同時に、物音ひとつ立てずに沈黙した。
「──あとはお前だ、カプート。」
⸻
管理棟の事務所では、ニック・カプートがタバコをくゆらせていた。
机には賄賂のリスト、闇取引の契約書、現金の束。
背後の窓が音もなく開き、黒い影が忍び寄る。
ズガッ!!
電撃スタンが首筋に叩き込まれる。
カプートは悲鳴を上げる間もなく意識を失った。
⸻
暗い倉庫の地下。
裸にされ、椅子に縛り付けられたカプートが目を覚ます。
目の前に立つ黒い影──ジョン・ケイン。
「おはよう、カプート。」
カプートは目を見開き、怯えたように笑う。
「おい、何のつもりだ!?誰の指示──金か?金なら──」
バチン!
ジョンは無言で電流棒を突きつけた。
カプートの体が跳ねる。
「これは交渉じゃない。尋問だ。」
ジョンは冷徹だった。
声を荒げず、淡々とナイフを研ぐ音が響く。
「マーカス・レヴィン──お前は知らないと言うだろう。だが、お前の雇い主は知ってるはずだ。」
「ま、待て…!ラフォルツァには関係ねぇ!俺は物流を──」
ジョンはゆっくりと親指の爪をナイフの先で押し上げ始める。
ミチミチ…!
「ウギャアアアッ!!」
ジョンの表情は動かない。
冷たい灰色の目だけがカプートを貫いている。
「俺の質問は簡単だ。マーカスはなぜ死んだ?」
「知らねぇッ…!!エンツォが…なんか言ってた、だが俺は──」
ジョンは次にワイヤーカッターを持ち出した。
「次は指だ。」
「わかったッ!!わかったあああ!!」
カプートは叫んだ。
「エンツォが奴をマークしてた!あいつ、何か調べてたんだ…上の連中に関わる何かを!それで危険人物に指定されて…!」
ジョンの目が僅かに細まる。
「上──誰だ。」
「…そこまでは知らねぇ…!だが、エンツォの上にはまだ誰かがいる。エンツォはいつも”上”から命令を受け取ってた…!」
ジョンは一度だけ深く息を吐く。
「──場所は?」
「…エンツォは港の『第17保税区画』を根城にしてる!そこにShipment 47も──」
「…!?」 ジョンは唐突に立ち上がる。
「そうか…十分だ。」
カプートは安堵の吐息を漏らす──が、それも一瞬だった。
ジョンはサプレッサーを向ける。
パンッ!
一発。
カプートの額に正確に穴が開いた。
⸻
ジョンは現場の痕跡を消去し、地下室から静かに姿を消した。
背後には死体と、消えかけた蛍光灯の明かりだけが残る。
外に出たジョンの表情は静かに歪んでいた。
「次は──エンツォ・デルヴェッキオ。」
闇夜の中に、冷酷な復讐者の影が溶け込んでいった。