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7. 打ち上げ

 「それでは、四年生の卒論発表の無事終了と三年生の新入を祝して、カンパーイ!」

「「「「「「乾杯!」」」」」」

大西和哉の音頭で打ち上げが始まった。吉井研は飲み会が好きな研究室である。それは吉井教授が学生の頃(他の大学出身)の研究室の伝統であり、月に一回は開催されている。教授室の冷蔵庫にはビールが常にストックされている。今日も全員生ビールからスタートした。


 一次会をおえ、吉井教授はタクシーで帰宅し、学生は二次会にカラオケボックスに向かった。今日は「氷華の天使」もちょっと笑顔であり、要は「高嶺の花」の頃の新庄を思い出していた。


 二次会をおえ、大西と川本弘明と池谷康二とアパートが近いことから同じタクシーで帰宅し、要が新庄と菅谷朱美とタクシーに同乗して帰宅することになった。

 要と新庄達のアパートが歩いて十分のところにあると判明していたので、菅谷は三人での三次会を提案してきた。新庄は「山野君に悪いよー」と言いながらも三次会には乗り気なようで、押し切られるかたちで要のアパートで三次会が開催されることになった。タクシーをアパートの近くのコンビニで降り、飲み物やスナック菓子を購入してから要のアパートに到着した。要の住むアパートとは八畳ほどのフローリングの1DKで、ベッドとテーブルしか置いていないような部屋で、小まめに整理整頓がなされ掃除もそれなりにしている部屋出会った。その為、三次会を提案された時も、片付けを心配する必要はなかった。

「へー、綺麗にしてるのね。男の子の部屋はもっと散らかっていると思ったのに。エッチなものは昨日片付けたのかな?」

と、菅谷はちょっとばかり失礼な発言をしながら上がってきて、新庄は感心しながら上がってきた。三人とも缶ビールを開け乾杯をした。

 菅谷と新庄は、研究室での一年間を振り返りながら飲み、要は相槌をうちながら飲んでいた。

「二人は研究室に入ってから仲良くなったのですか?」と質問した。それは要が川本とは三年間あまり話したことがなく、どう接すれば良いか悩んでいることがあったからだ。

「私と梨香ちゃんとは、もっともっと古い仲だぞ。高校一年生の頃からの仲だからな」

要は予想の斜め上の発言に驚いた。菅谷が高校の先輩だったか尋ねたら答えはノーで、住んでいた都道府県も別出会った。

「梨香ちゃんは、私のファンなのだよ」

と更に斜め上の発言に、新庄は恥ずかしそうにしながら、

「高校生になった時、写真投稿アプリで朱美を見た時ファンになって、一ヶ月悩んだ末にコメントを送って、そうしたらお返事が返ってきて、SNSで遣り取りしているうちに友達になったの」

菅谷は高校生の頃、ティーンネイジャー誌のファッションモデルをしていたらしく、新庄はそのファンであったということだった。では大学は偶然一緒だったかというと、

「梨香ちゃんが白桜に推薦で受かったと聞いて、私は一般受験を受けたの。正直私の偏差値じゃ無理かもと思ったけど、無事合格し、無事卒業とあいなったのですよ」

「白桜受けるって聞いた時嬉しかったけど、まさか同じ学部の同じ学科を受けてくれるなんて思いもよらないで、合格発表聞いたときは流石に驚いたわ」

「私はやれば出来る子なのですよ」

と菅谷は胸を張った。

「まあ、その流れで梨香ちゃんと同じ研究室に入ったの。流石に大学院までは行けなくて」

「でも、教授秘書として研究室に残ったじゃない」

「まあね」

吉井教授は元々別の大学院で博士号を取得し助教として研究していたが、白桜大学に教員の空きが出て准教授として赴任してきた。教授に昇進し忙しくなりに大学側に秘書を要求し、昨年認可が下りてその時に菅谷は秘書課の採用に応募して、無事吉井教授の秘書に採用されたのだ。

「そういえば新庄さんは就職どうするのですか?年度明けから就職活動開始ですか?」

要がそう尋ねると、答えは新庄からでなく菅谷から返ってきた。

「梨香ちゃんは、修士一年生というより博士前期一年生だもんね」

「そうね、そのあとも大学に残るつもりだけど」

「先生からスカウトされたんだもんね」

と、とんでもない発言まで飛び出た。

 今度は菅谷から「要君は進路どうなの」と質問された。

「僕は教員志望ですが、一応企業から内定もらっています」

そう答えた。

「すると進学組いないんだね。ちょっと残念だね」

と菅谷は新庄に投げかけた。新庄の表情は要には変化がないようにみえたが、菅谷からみれば少しだけ残念そうな表情に見えた。

 時計を見れば十二時を回っており三次会はお開きになった。要は二人を送り届けることにした。二人はエントランスがある高級マンションに手を振りながら入っていった。二人はどんな金持ちだ?という疑問が要の中に浮かんだ。




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