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21. ステップ15

 昨日、日付が変わるまで実験をしたせいで、要は十時ギリギリに実験室に入った。

「おはようございます」

「おはよう、要君」

新庄はもう実験を始めていた。

「梨香子さん、もう実験を始めているのですね。何時に来たんですか?」

「九時半には実験始めていたわよ」

「眠くないんですか?」

「私、ショートスリーパーだから大丈夫よ」

「はあ」

要は変な感心をしながら、昨夜精製したN-Boc-O-Bn-L-セリンの収量を計りNMR分析の準備を始めた。分析を終え解析をした後、昨日の午後に抽出、濃縮まで終えたN-Boc-L-セリン-OMeのカラム精製を始めた。カラム精製を終え、精製液の濃縮を終えた時にはお昼になっていた。

 昼食を摂った後、昨日精製しておいたN-Boc-L-セリン-OMeのベンジル化の仕込みをすることにした。N-Boc-O-Bn-L-セリン-OMe十七グラム(17g)を塩化メチレン百ミリリットル(100ml)に溶解させ、トリエチルアミン一点一当量(1.1eq.)加え、臭化ベンジル一点一当量(1.1eq.)を滴下していった。滴下が終わった後一時間経ってからTLCで反応が終了していることを確認すると塩化メチレンと水を加え、pHを中性にして、抽出、水で洗浄した後、塩化メチレン層を硫酸マグネシウムで乾燥させた。硫酸マグネシウムを濾別した後、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮して、カラム精製を行った。カラム精製が終わった頃には夜になっていた。要は新庄の様子を見るとカラム精製を始めていてこれから食事を摂る様子ではなかった。

「梨香子さん、食事はどうするのですか?」

「今日はパス。流石に今日は早く帰りたいから」

それを聞いて要は、夕食を摂りに行くのをやめ、精製液の減圧濃縮を始めた。濃縮を終えると、N-Boc-O-Bn-セリン-OMeをデシケーターに入れ真空ポンプで真空にし、乾燥を始めた。

 丁度そのころ新庄もカラム精製を終えていた。しかし、まだこれから濃縮を始めるようなので、要は先に帰ることにした。


 次の日、要は九時半に実験室に入った。当然のように新庄は実験を始めていた。

「梨香子さん、おはようございます」

「おはよう、要君」

「もう実験始めているんですね」

「そうね、気になることもあるし」

「なにがですか?」

「今の反応、ちょっと煮詰まっていて、ブレイクスルー出来ないかなぁって」

そう言って新庄は黙々と実験していた。

要は昨日と同様に、N-Boc-L-セリン-OMe十七グラム(17g)スケールでベンジル化の仕込みをすることにした。反応が終了したのは昼前で、中性にして塩化メチレンで抽出を行い、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧濃縮を終えた頃、昼食の時間になった。

「要君、お昼行きましょう」

新庄に声を掛けられ実験室を出た。


 昼食を終えてから、午前中に濃縮を終えていた粗体のN-Boc-O-Bn-セリン-OMeのカラム精製を行い濃縮を終えた頃、夕方になった。

 今日は輪読会があるので、一旦実験を終えて、ゼミ室へ向かった。今回は先輩たちの発表で要の番はないので、聞き手になる。先輩たちは流石に慣れていて、わかりやすく文献の解読をしていた。要は自分の番が回ってきたときのことを考えていた。こんなにわかりやすく話せるだろうかと。

 輪読会が終わった後、要は新庄といつもの定食屋へ行った。

「要君、今日は何にするの?」

「メンチカツの気分です」

「それじゃあ、私もメンチカツにしよ」

新庄はそう言うと店員を呼びメンチカツ定食を二つ注文した。待っている間、要は新庄に輪読会のコツを聞いた。

「それは、先ず文献をただ読むだけじゃなく、ちゃんと理解できているかがポイントだよね。具体的に言えば、書かれている通りの反応を自分が再現して見せるような感じかな」

確かに、その反応が誰でもできなければ論文に値しないこともある。再現性があるからこそ論文として成立するのだから。要は自分の番が来た時に備えて文献を読み込むことにした。


 実験室に戻ってきてから、要はN-Boc-O-Bn-セリンのアミド化を仕込み始めた。加水分解して得られた物から二百ミリグラムをテトラヒドロフラン十ミリリットル(10ml)に溶解させ、N-ヒドロキシコハク酸イミドを一点一当量(1.1eq.)加え、氷冷下ジシクロヘキシカルボジイミドを一点一当量(1.1eq.)を加え一時間ほど反応させた。そうすると段々と固体が出てきた。TLCで反応を追跡したところ、原料が消失しており、副生成物のジシクロヘキシルウレアをアスピレーターで吸引濾過して、濾液をロータリーエバポレーターで減圧濃縮し、得られた残渣を酢酸エチル十ミリリットル(10ml)に溶解し、アンモニア水を加えて室温で激しく攪拌した。TLCで反応を追跡して活性エステルが消失しているのを確認すると、pHを弱アルカリ性にし、酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を硫酸マグネシウムで乾燥させ、乾燥後濾別して、ロータリーエバポレーターで減圧濃縮し酢酸エチルを留去した。時刻は夜の十一時になっており、要は帰宅するっことにした。新庄は明日朝早いので十時前には帰宅していた。


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