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18. ステップ12

 翌日の土曜日は二人とも朝ギリギリに実験室に来た。

「おはようございます、新庄先輩」

「おはよう要君」

要君と言われ要はちょっと赤くなった。新庄はしてやったりといった感じで微笑んでた。

 昨日得られたBoc体とメチルエステル体のNMR測定を行い、解析を行った。

 

 昨日の夜はメチルエステル化の二回目の反応液を減圧濃縮しメタノールを留去後、アルカリ性にして酢酸エチルで抽出して硫酸ナトリウムで乾燥し、酢酸エチルを減圧濃縮して粗体の状態で止めて、朝一でシリカゲルカラムで精製できるようにカラムの充填までして帰宅した。新庄も朝仕掛けてあった反応の後処理を終え同じ時間に帰宅した。

 要はアパートに帰って風呂を済ませて髪が乾いてから、ベッドの中に入ってから今日一日のことを考え始めた。一日というよりは、夜のことを。あの「高嶺の華」だった新庄梨香子から告白された。要のことなど眼中にないだろうなぁと思っていた「氷華の天使」が要のことを好きでいてくれたなんて。嬉しさのあまり眠れずにいた。

 新庄もマンションに帰宅後、胸のドキドキが高鳴っていった。TAで疲れていたこともあるが、そのままのテンションで告白してしまった。決して後悔はしていないが、タイミングではなかったし、もう少しロマンティックな告白もあったのではないだろうかと。シャワーを浴びながら同じことを繰り返し思い出しては赤面していた。(あの時どんな顔していただろう?そういや要君はどんな顔してたかなぁ。暗くてよく分からなかったし)。そんなこんなで軽いパニックを起こしながらとりあえず髪を乾かしベッドに入った。

そして今日の朝は二人とも寝不足気味で遅れそうになったわけだ。

 要は昨日セットしておいたシリカゲルカラムでメチルエステル体の精製を始めた。量が多いので簡単には終われない金魚ポンプで圧力をかけて試験管に取り分けていっても五十本では終わらず途中三角フラスコにも取り分けていった。二時間がかりで精製は終わり溶媒を減圧濃縮して留去させれば終わりだが時計は十二時を回っていた。

 その時要は昼食の準備を何もしてこなかったことに気が付いた。土曜日だから学食は休みだし、生協も休み。コンビニまでいかないと食事にありつけない。そう気づくと余計に腹が減ってきて力が出なかった。ちょうどその時新庄が要のことを呼びに来た。

「要君、お昼どうするの?」

「いや、何も買ってこなくて。コンビニに行こうか迷っていたところです」

「で、なんで敬語なわけ?」

「だって大学の中だし」

「名前の呼び方は譲ったのだから、あとは自然にしてよ」

「分かりました」

「じゃなくて」

「わ・・・かったよ」

「よろしい!」

「ところで新庄先輩なんのようだったの」

「あ、お弁当作ってきたの。食べる?」

「食べる食べる。助かったよ」

「そうしたら研究室に行きましょう」

と言われながら要は袖口を引っ張られながら実験室を後にした。


 午後は毎週土曜日の恒例行事、スポーツの時間だった。今日は体育館が予約取れていたので、バスケットボールをすることになった。要は運動できるような服装に着替えてコートで準備運動をしていた。新庄もスポーツウエアに着替えてきて、長い髪はポニーテールにし準備運動を始めた。参加者全員が軽くシュート練習をしたところで試合が始まった。要はどちらかといとバスケットの攻守については知識がなくパスが来れば誰かにパスを出してシュートにまでは持ち込めていなかった。大して新庄は身軽にドリブルをしてシュートまで持ち込んでいた。大西や川本も運動神経の良さを発揮し、ゴール下のボールの奪い合いに参戦していた。流石にこれでは新庄にかっこいいところを見せられないなと、スリーポイントシュートを放ってみた。これが一発で決まり、ボールが回ってくるたびにスリーポイントを狙ってみた。スリーポイントシュートがそんなに上手く何回も入ることはなかったが、新庄に対してそこそこの活躍を見せることが出来たとは思った。

 夕方になり片づけをして床掃除をしてから解散となった。今日もいい運動が出来たなぁと研究室に戻ってみると大西や川本は帰る準備をしていた。

「あれ、ビール飲まないんですか?」

「今日、先生用事で休みだったろう。だからビールはナシだ」

「あぁ、そうなんですか。お疲れさまでした」

入れ替わりに新庄が研究室に入ってきた。

「お疲れさまでした」

「お疲れさま。敬語抜けないの?」

「なかなか難しいですね。学内だと。それより今日先生休みだったんですね」

「そうよ、朱美との初デートよ」

「そうなのよ。知っているのは私だけ。ああ、いま要君も知ったか」

「新庄先輩も今日は上がりですか?」

「まだ後処理が少し残っているけど」

「僕も濃縮が残っていて」

そう話していると二人ともあと二時間はかかりそうだったので、実験を済ませ食事をすることにした。

「折角だから要君のアパートで飲もうか」

「いいんですか?女性が男性の家に一人できて」

「いいんじゃない。私たち恋人同士でしょう」

「そうだとしても、まだデートもしていないし」

「じゃあ明日デートしよう」

「どこへですか?」

「それは飲みながら考えましょう」

新庄はそういうと実験室に向かった。

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