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絶滅の旅  作者: 古野ジョン


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拝啓 タナカタツヤ様

拝啓 タナカタツヤ様


 あの頃から気温も下がり、過ごしやすくなってきました。

タツヤさん、お元気ですか?

私は元気です。

でも、あなたとお仕事していた頃よりもちょっぴり大人になりました。


 私はいま、札幌市にいます。

あのときあなたに命令された通り、私は女王になりました。

立派な女王になれたのかは分からないですけどね。

けど、新しい文明を築くために頑張っています。

天から見守ってくれていますか?

そうだと嬉しいです。


 あなたの体は、東京のお墓に納めました。

男性型たちに無理を言って、熱波の中を持って行ってもらいました。

故郷に帰れないことを少し残念がっていたのを覚えていましたから。

あなたに受けた恩を何も返せなかったけど、これで恩返しにさせてください。


 マサトさんとベルナデッタを見つけることは出来ませんでした。

後から知ったんですが、マサトさんはハカセの計画を邪魔しようとしてたんですね。

だけど、あまり結果は良くなかったみたいです。

ベルナデッタはああ見えてマサトさんのことがすごく好きだったんですよ。

いつまでも2人一緒だったらいいなあ。


 昔の話はこれくらいにして、私が北海道で見たことをお話ししますね。

私はあのあと、船で函館に渡りました。

そこにあったのは、信じられない光景でした。

綺麗な建物が並び、きちんと舗装された道。

水道や電気まで整備されていてまさしく「文明社会」でした。


 けど、そこには誰も住んでいなかったのです。

整備された街があるだけ。

私にしか女性型としての生殖能力が無いのだから、当然ですよね。

男性型たちは次々に都市を移動して整備を行なっているから、札幌以外には誰も定住していないそうです。

人がいない街って、あんなに寂しいんですね。


 それから鉄道で札幌に行きました。

札幌には、ハカセが築いていた拠点がありました。

私はそこでずっと暮らしてきました。

毎日の生活には不自由していません。

召使たちが、美味しい食事と清潔な着替えを持ってきてくれます。

とても快適な暮らしです。

だけど、お湯で飢えを誤魔化して野原に寝転んでいたあの頃の方が楽しかった気がします。

あなたにとっては、二度とごめんかもしれませんが。


 ああまた昔の話に戻ってしまいました。

手紙を書くのって難しいですね。

あの頃の私はあなたにすごく迷惑をかけたと思います。

きっと私の知らないところで、苦労してたんですよね。

人を使う立場になってようやくわかりました。

何か困り事があると、思わずあなたに助けを求めたくなります。

けど、いつも助けてくれたあなたはもういません。

そのことが、ただひたすらに悲しいです。


 本当は、あなたと共に北海道に行きたかった。

あのとき、目の前で息耐えていくあなたを見ても何も出来なかった。

薬剤合成部さえ動いていたら何とかなったかもしれないのに。

私が駄々をこねていなければ、ハカセに薬剤合成部を破壊されることもなかったのに。

今でもあの瞬間を悔いています。

あなたの体はお墓に納めたけど、いつも着ていた上着だけは取ってあります。

血だらけだったのを頑張って洗いました。

洗濯の方法もあなたに教わったのを思い出します。

ピカピカになった上着は、私の部屋にかけてあります。

またいつでもあなたが着られるように。


 話したいことはいろいろあるけど、このあたりで終わりにします。

この手紙は、あなたの上着のポケットに入れておきます。

そうしたら読んでくれますよね。

まだまだ辛いことはあるけど、頑張ります。

いつかまた会う日まで、お元気で。


敬具


あなたのメイド ゼロより


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