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絶滅の旅  作者: 古野ジョン


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12/15

第十話 冠

今ここで、死になさい。



というキミヅカの言葉のあと、応接間に静寂が訪れた。

そしてキミヅカは、

「ゼロ、タナカ収束官を殺してあげなさい。」

とゼロに告げた。

またも静寂。

それを破ったのは、

「ハカセ、どうしてそんなこと言うんですか……」

という、ゼロの涙交じりの声だった。

「プリンセス・ゼロ。これは仕方のないことよ。現にあなたの兄弟たちはみなそうしたわ」

「どういうことですか?」

と俺が尋ねる。

「収束官たちとゼロには、たしかに通信が途絶えたら青森まで北上するよう指示したわ。けど――

ゼロ以外の兄弟たちには、通信が途絶えたら収束官を()()()()()()()命令してあったの。」

「……!」

ゼロが目を見開いて驚いていた。

そうか、通信途絶後に北上する過程で同業者に会わなかったのはそういうことだったのか。

「兄弟たちには、ゼロには言わないよう伝えてあったわ。だからゼロ、あなたは知り得なかったのよ」

ゼロはぽろぽろと大粒の涙を流していた。すると口を開き、

「それで、皆はどうしたの……?」

と言った。

他の兄弟を心配するのもゼロらしいな。

だが、キミヅカからの答えは無情なものだった。

「機能停止……要するに死んだわ。いえ、衛星から信号を送って私が破壊したの。もう用済みだから。」

「ッ……!!!」

ゼロはさらに悲痛な表情になった。

「ちょっと待ってください。衛星からの通信は途絶えたんですよね。それでどうやって信号を送るんですか」

俺がそう聞くと、

「ああ、衛星からの通信は()()()()のではなく、一旦()()()()()()だけなのよ。」

「なぜです?」

「端的に言えば、目的が果たされたからよ。収束官たちは十分に殺しを行った。文明を復興させることができるほどの人口は、日本には残っていないわ。」

「それで計画を次の段階に移すために、私が衛星を操作して通信を止めたの。」

なんとなく理解はできるが、次の計画とは何だ。

さっきの船や、北海道と関係があることなのか。



キミヅカからそんなふうに話を聞いていると、ゼロが

「タツヤさん!!もう帰りましょう!!!」

と突然言い、俺の手を取った。

「お、おいゼロ。」

「ハカセ!もう私たち付き合いきれません。仕事に戻ります!!」

ゼロはそう言って無理やり俺のを手を引っ張り、ソファから立ち上がった。

「ゼロ、おやめなさい。痛い目を見るわ」

とキミヅカは言うが、ゼロは

「知りません!」

と言って廊下に出た。

だが、次の瞬間――

バシュン。という音がして、ゼロがお腹を押さえて倒れ込んだ。

「ゼロ!!!」

俺は慌ててゼロに身を寄せた。

「ゼロ、大丈夫か!ゼロ!!」

「……タツヤさん、痛いです、おなか……」

よく見ると、ゼロはお腹の右の方を抑えていた。

メイド服のフリルが赤く染まっている。

すると応接間の方からキミヅカが出てきて、

「だから言っただろう。ゼロ、痛い目を見ると」

と俺たちに言った。

「キミヅカ!!ゼロに何をした!?」

「ゼロの体内の薬剤合成部を遠隔で破壊した。ゼロ、これで仕事には戻れないな。プリンセス・ゼロとしての任務についてもらおうか」

「……キミヅカ、そろそろそのプリンセス・ゼロとは何なのか説明してもらおうか」

「嫌だね。どうせ今から死ぬ君に対して、そんなことをしゃべるのは時間の無駄だ」

「……誰が死ぬと言った?」

「だから私がそう命令しただろう……君は何を」

「俺の直属の上司はあくまでコヤマエイタだ。あのときは()()()あんたが命令しただけで、俺はあんたに命令される筋合いはない!」

……そう言い切ってやった。

「タツヤさん……そうですよね、タツヤさんが死ぬなんて嘘ですよね……」

ゼロはか細い声でそう言った。

ゼロ、もう喋らなくていい。どうかじっとしていてくれ……

「タナカ収束官、それは間違っている。」

キミヅカが俺の無知をなじるようにそう言ってきた。

「どういうことだ?」

「君たちが任務に出発する前日の夜、政府高官たち全員がその全権を私に委ねる書類にサインしたのち死亡した。すなわち、日本政府の正当な後継者はこの私よ。」

馬鹿な……いや、これであの日にコヤマが現れなかったことに説明がつく。

「あんたが殺したのか?」

「そう。あなたと同じペアだったヨシカワマサトの手を借りてね。彼は優秀な詐欺師だった。高官たちは何の疑いもせずに書類にサインをして、喜んで毒を飲んだわ」

「マサトはそんなこと一言も言っていなかったぞ。」

「それは彼もまた私に騙されていたからよ。彼は高官たちが死んだとき、私の真意に初めて気づいたわ。自分が騙されたなんて他人に言うことは、彼の詐欺師としてのプライドが許さなかったのでしょうね。」

……。

マサト、俺にだけは言ってくれてもよかったじゃないか。

もしかすると、あいつが大熱波の中を南下していったのはこのことがあったからなのか。

あいつなりの、ささやかな抵抗だったのだろうか。



三度の静寂が訪れる。

するとキミヅカが口を開き、

「でもまあ、たしかにあなたの言うことも正しいわ。あなたに旧文明収束官としての任務を命じた日本政府は消滅したのはたしか。旧日本政府と私は違うもの」

「……そうかよ。ヘリだの電車だの船だの、あんな大層なものを動かせるのもそれが理由か?」

「そうよ。旧日本政府が持っていた資材を全て私が引き継いだからよ。もっともそれで十分ではないから、あんな古い船を引っ張り出したりしているわけだけどね。そしてこの青森を拠点とし、私の計画を進めているわ」

「その計画とは何だ!!!」

「……今、分かるわ。」

キミヅカは白衣から王冠を取り出した。

するとうずくまるゼロの方に寄ってくる。

「ゼロに何をする気だ!!」

「大したことはしないわ。ゼロ、顔を上げなさい。」

ゼロが顔を上げると、キミヅカは王冠をゼロにかぶせた。

そして、俺たちに向かって宣言した――



「私の計画とは、このゼロを女王とした超人類による新文明を築くことよ」









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