6月15日のキセキ
こんなことになるとは思っていなかった。
それは、ある5月のこと…。
私はカレシ、ゆうたと一緒にデパートへ行った。事件はその帰り道に起きた。
家からデパートは近いから自転車で帰って来る。2人で話しながら帰っていると、横の角から5歳くらいの女の子が走ってくるのが見えた。反対側の道を見ると、車がスピードを出して走って来ている。
私がびっくりして戸惑っていると、ゆうたが自転車を投げ捨てて前にとび出した。
「えっ!?ゆうた!?」
すると、車はキキ―ッと止まって中から運転手が降りてきた。
「ゆうた…。」
ひかれてはないが、足を怪我してたおれていた。女の子をかばったときに地面に足を強くうちつけたみたいだった。
女の子は手を少しすりむいていた。私は地面に座り込んで泣いてしまった。
きっと、ゆうたは女の子1人だと小さくて運転手には見えにくいと思い、背の高いゆうたなら気付いてもらえると、とび出した…。
ゆうたの気持ち…、私には分かる。
ゆうた…、やさしすぎるよ…。
ゆうたの傷は大きくてその後、入院することになってしまった。
私は学校が休みの土曜日、毎週お見舞いに行った。
意識はあるけど、足は動かせない状態だった。
お見舞いに行くと、大体
「あ…。みゆ…。また来てくれたの?」
と言って体を起こそうとする。
「ちょっと大丈夫なの?あんまり動かないほうがいいよ!」
話せるけど、いつもよりは元気がなかった。
お見舞いから帰って来てカレンダーを見ると、6月15日をハートマークで囲んであった。
そう。6月15日はゆうたのお誕生日。
いつもは、ゆうたの家でお誕生日会をやっていたんだけど、今年はその日までにゆうたが退院できるか分からない。
病院に小さいケーキを持って行こうかな…?
でも…、確かその日はゆうたが大切な手術する日だ。
それなら、お見舞いに行けないかもしれない。家で応援していれば、ゆうたに気持ち届くかな…。
15日になったら、ゆうたは18歳になる。私はもう4月にお誕生日が来て18歳になった。
その日を迎えたら私達はもう大人。大人になったら、ペアリングを買う約束をしている。
ー頑張って、ゆうたー
手術を成功して大人になって、私に会いに来てね…。
そして、迎えた15日。
ちょうど15日は土曜日で学校がお休みだった。
その日は1日中ソワソワしていた。
ちなみにお誕生日プレゼントはもう用意してある。それは私手作りの『お守り』だ。
私はお裁縫が得意な方なんだけど、お守りは結構難しかった。でも、気持ちを込めて作った。ゆうたの足が治るようにと…。
そういえば、2時頃に手術が終わるって、ゆうた言ってたっけ??
それなら今は2時だから、そろそろ家を出れば2時20分には着く!!
やっぱり誕生日当日に、ゆうたに会いたい!!!!!!!!!
それから…、ゆうたは手術成功したかな…?
楽しみな気持ちと不安な気持ちを抱えて、私は病院に向かった。
病院に着くと、ゆうたは手術が終わってベットの上にいた。私がゆうたのベットにかけつけると、ゆうたはニコって笑った。
「え…。ゆうた…。まさか!?」
「うん。手術、成功したよ!!」
「ホントに…?ゆうたー!!!」
私は嬉しすぎて涙を流した。
「あ、お誕生日おめでとう!!!それで…、これ!!!」
と、涙をふいてお守りをわたした。
「え!これ手作り!?!?すご!ありがとうー!」
「喜んでくれて嬉しい!!!!!」
その日は、私にとって忘れられない日になった。
それから、5年たってやっと気が付いた。
ゆうたの手術が成功したのは、あのお守りの力かもしれないということを。






