転移の真相
時間は、ミコトが異世界へ転移した時にまで、遡る。
ここは、天上の都ーーアルフヘイムーー。
ここでは、二柱の神が、向かい合い、会話していた。
いや、正しくは、会話では無い。なぜなら、一柱の神は、正座しており、もう一柱の神は、フカフカのソファーに座り、一方的に罵倒していた。
「このバカ!まぬけ!おたんこなす!どうしていつもあなたは、余計なことばかりするのですか!」
罵倒しているのは、女神だ。
年は、二十代前半に見える。若く見える容姿ながら、大人の色気を醸し出し、雪の様に肌は白く、ロングヘアーな金髪は、見る者全てを、魅了する。
罵倒されているのは、男神だ。
年は、六十代前半。若く見える容姿ながら、大人の疲れを醸し出し、肌は、殴られて、青く、肩まで伸ばしている白髪は、ところどころ、絡まっており、見る者全てを魅了するどころか、見る者全てを心配させる。
男神は、ミコトを転移させた、創造神だ。
女神は、創造神の妻、大地と世界の神ーーガイアーー。
年齢が釣り合ってないかのように、思えるが、神にとって、外見年齢を弄る事など、造作もない。
なぜ、ガイアが怒っているのか。それは、創造神のミコトの転移の仕方と、ミコトが誕生日だからと、神器である知識の魔導書を渡したからだ。
「あれは、世に出てはいけないものだったはずです。その管理を、貴方に任せていたはずですが?」
「ごめんなさい」
「そ・れ・に、あなたぁ、ミコトの身体に、細工しましたね」
「うっ、なぜそれを!」
そう。ガイアが、ここまでキレている理由はこれである。
確かに、神器を、ミコトに与えたのも問題だが、後から回収するなりやりようはあった。
「なぜ、下界に神がいるのですか」
ミコトは、神になっていた。といっても、半神
であるが。
だが、神である。それがいかに危険かを、ガイアは知っていた。
「かつて、神の力を得た人間が、力に溺れ、世界を破壊し尽くしたことは、貴方もしっているでしょう?だから、神は不用意に、下界へと、干渉しない。そう決めたのは、創造神である貴方と、神王ユピテル様のはずです」
「そう…じゃが、ミコトはそんなことはしないはずじゃ!」
「する、しないは問題ではありません。神がルールを破った事が、問題なのです」
神はルールに従う。それが、秩序であり、法則だからだ。
「それで?どうするんじゃ?」
「ひとまず、様子を見るしかないでしょう」
「そうか、そうか」
「何で嬉しそうなんです?」
「そ、そんなことはないぞ」
「はぁ、もういいです」
ミコトは神になっている。それゆえに神力を持っている。
神力とは、神だけが持つ力で、それを使い色々なものを創造する事ができる。
そして、ミコトは、魔力も持っている。総量は1と少ないが、神であるミコトにとって、そんなものは、問題にならない。
なぜなら、神の魔力総量は無限であるからだ。故に、魔力量1など問題ではないが、ミコトが行使できる量は、微々たるもので、使用できる魔力量はたったの1。
そのため、ミコトが、創造できるのは、スライムのみなのである。
ミコト自身は、この事は知っていない。
スキル自体も魔力創造という名なので、神力があり自分が神になっている事など、予想すらしていない。
ミコトが創造できるのは、スライムのみだがミコトによって生み出された、スライムにはその制限がない。
ミコトとスライムは魂で繋がっている。
そのため、ミコトのスキルを使用する事ができるし、どちらかが、生きていれば、死ぬことはない。
ガイアは、そこを危険視していた。
それに、ミコトが転移することになった理由も、創造神のイタズラである。
ガイアに相手をしてもらえない、創造神が、ガイアの気を引こうとして、次元の壁に穴を開けるつもりが、座標を間違えて、地球の、ミコトの玄関の先に開けてしまった事が、理由だ。
だからガイアはブチ切れていた。
それでも、ガイアに相手をしてもらえないという、創造神の理由を聞いて、少し嬉しくも思っていた。なので、ひとまず様子見ということになったのである。
ミコトは、ルシアを一番の危険人物と言っていたが、ガイアからすれば、一番の危険人物はミコトである。
だが、神は下界に干渉はしない。できない。故に、これから先、ミコトがどう行動するのかを、見守ることしかできないのだ。
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