ダンジョンの王様はつらい!!
俺と、少女は、正座をして向き合っている。
「わたしは、ルシア。よろしく」
「これは、これは、ご丁寧に。私は、千夜ミコトと申します」
「うん。よろしく」
「よろしく」
「………。」
「………。」
俺たちは、見つめ合う。
「どうかした?」
こっちが聞きたい。
「あのー、どうやってここに?」
「空を飛んでたら、お腹が空いて、落ちた」
「落ちた!?」
「うん。そして、落ちたら、階段があったから、魔法で壊した」
「いや、何で!?」
「なんとなく」
こ、この少女は、なんとなくで、階段をこわすのか。
「せっかく、スラさん達と作ったのに……」
「ゴメン」
くっ、可愛いから許す。
「なんで、空を飛んでたんだ?」
「なんとなく」
この少女は、何も考えていないのだろうか。
「お腹空いた。ゴハンない?」
違った。食べる事しか、考えていない。
さて、どうしよう。ご飯はない、というか、食べる物など一つもない。
俺自身、空腹を感じていないので、気にしていなかった。
「悪い。食べ物は今はないんだ。それに、食材があったとしても、これじゃあな」
そう言って、周りを見渡す。
周りは、土の壁だ。まぁ、当たり前だ。地下だしな。
現状、地下に空間を作っているだけで、なにも手を加えいない。
一応、明かりはある。といっても、スライムが光っているおかげなんだけど。
「分かった。知り合いを連れて来る。その人達なら、なんとかできる。」
「急だけど、いいのか?」
「うん」
そういって、目の前から、消えた。これも魔法なんだろう。
というか、人が何人か来るらしい。まだ、異世界に来て二日だし、スライムもいたが、寂しいものは、寂しい。人が増えるなら大歓迎だ。
お客さんが来るまでに、階段、直しとこうかな。スラさん、悪いけど手伝ってくれ。
数時間して、地下への入り口が完成した頃、ルシアさんが客を連れてやってきた。
多いな。二十人ほどだろうか。全員耳が長い。ルシアさんと同じ種族だろうか。
「こんにちは。私は、ハイエルフのルミアと申します。ルシア様の配下になります」
「ご丁寧に。私は、千夜ミコトです。」
メイド服を着たルミアさんは、ハイエルフらしい。というか、配下?
ルシアさんて何者?
「ルシア様から、家が見つかったから、一緒に引っ越す。と言われ、参りました。家事全般は、お任せください。また、他にも、手伝いとして、二十人ほど、連れてきております。何なりと、お申し付けください」
ルミアさん達は、家事をしてくれるみたいだ。助かる。が、家?
「はい。そう、聞いておりますが?」
ルシアを見る。
「ここに引っ越す。いい?」
「そういうのは、早くいってくれ」
これじゃ、断れない。いや、まぁ。断る理由なんてないのだが。
「じゃあ、よろしく」
「「よろしくお願いします」」
こうして、ハイエルフが、ダンジョンに住むようになったのだが、ハイエルフ凄い。
とてつもないスピードで、家具を作ったり内装を整えたりしてくれる。
土の床だったのが、大理石が敷かれ、赤いカーペットが敷かれ、天井にシャンデリアと、とてつもなく豪華だ。
大理石などは、スライムが出してくれた。魔力があれば、なんでも出せるらしい。
なんて羨ましいんだ。というか、その能力って、俺のだよね。何で、使えるんだ?
スラさんに聞いてみた。
スラさんのジェスチャーによれば、俺の魔力で、進化したおかげで、俺のスキルを使用する事ができるようになったらしい。
なんて、羨ましい。
だけど、このおかげで、どんどん、ダンジョンの内装が豪華になっていく。
ダンジョンってなんだっけ。魔物とか、罠とか、そういうのがあるのが、ダンジョンでは?
いや、魔物は、スライムがいるか。罠は……いや、いいか。
ちなみに、今いるのは、最下層である、十階。五百メートル四方の、部屋を、大改造している。
ものの数時間で、家ができた。ハイエルフ優秀すぎ。
「もう直ぐで、夕食が出来上がります。座って待っていてください。」
「分かった」
俺は空腹を感じない。だからといって、何も食べないということは、やめたほうがいいだろう。
椅子に座る。木で出来ているのだが、とても座り心地がいい。
夕食が並べられた。できたてのパンに野菜スープ、サラダにメインディッシュの、ブラッドボアのステーキだ。
ブラッドボアは、ルシアが狩ってきた。
俺は、ルシアがブラッドボアを狩る姿を見たのだが、凄い、としかいいようがない。
一瞬だった。ルシアが軽く、息を、フッ、としただけで、ブラッドボアは、正面から真っ二つになった。
それを回収し、血抜きやら、部位ごとに切り分ける、ルシアを見た時は、逆らわないことを誓った。
夕食を美味しく頂いた後は、風呂に入る。風呂というか、大浴場だな。とても広い。ハイエルフ全員と俺が入っても、余裕がある。
まぁ、ハイエルフは全員女性なので、混浴はしないが。
「ふぁぁぁ」
疲れが取れるようだ。
今日は、朝から色々な事があった。ここで、しっかりと疲れを癒すとしよう。
風呂から上がると、俺は寝室へと行く。寝室のベッドは三人寝ても大丈夫なくらい大きい。
それにフカフカだ。ベッドは、ハイエルフが作ってくれた。
素材はスライムが生み出した。俺は、スライムしか生み出せないのに。
ハイエルフ達にも、寝室はある。といっても、七階層にだが。
寂しいのでスライム達と寝る事にしよう。
おやすみ。また明日も頑張ろうな。