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買い物3

店の外に出るとほとんどの人が素通りしていく。


 人は思ったより周りを見ていない。


 僕は初めて化粧をせず、男がかわいい格好をしてるまま出たのだ。

 ありのままの自分で好きなかわいい服を着てる。嬉しさのあまり兄上に抱きついた。


「兄上、ありがとうございます!」


「ただ、店を出ただけだろう。俺はなにもしてない。」


 顔を赤くして言う。ちょっとしたことだろう。そういうのが兄上の優しさ、僕は本当に嬉しかった。


 でも、少し目立ってしまったのかもしれない。僕の前から歩いてきた女の子が吐き捨てる。


「男が女の格好なんてして、気持ち悪い……」


 その声で、周りにいた人たちも僕らを見る。だんだんと集まってくる。

 人は気にしていない。けど、面白いこと。不思議なこと。気になることには足を止めて視線を向ける。


 この時、一瞬の幸せが砕けた瞬間だった。


「うわっ、ほんとだ。ってかあの顔。」


「えっ、もしかして……」


「あの?」


「そうだよ。リース家のナミキ様とキサラギ様だよ。」


「キサラギ様って、あんな格好するんだ。」


「うわっ、ないわ。キモすぎる。」


 僕たちに浴びせる。罵詈雑言の雨。

 僕は浮かれてしまったことに後悔し、瞳には涙が浮かぶ。


 どうして、僕はこんなにダメなのだろう。兄上に迷惑をかけて存在してる意味ってなに。

 やっぱり、この格好は……


 その場にお尻をつき、両手で顔を覆った。

 僕にはなにもできない。僕は弱い。


「おい、お前ら。なにを言っているんだ。」


「はっ?」


「えっ、なに?」


「俺ら怒られてる?」


「静粛に……お前ら、自分が言ってることを理解しているのか?」


 兄上が周りの人たちに言う。僕は両手をゆっくりと離し兄上を見上げた。


 周りに立つ人は、怒りの表情を露わにしている。


「お前らは、好きなことを好きなものをそんなふうに言われたらどう思う。」


「そりゃ、……」


 みんなは口ごもる。

 顔を見合わせては目線を逸らし、誰かが言い出すのを待っているように見える。


「嫌だろう。それくらいわからないのか。」


 みんなは黙り、兄上に視線を向けた。

 今までの怒りの表情ではなく、しっかりと"聞く"の姿勢を取った。


「言葉は人を助けることも傷つけることも出来る。簡単な武器だ。お前らは、何もしてない好きなことをしているだけの俺らに何を向けたと思う。」


 空気が一気に重くなった。

 圧でみんなが息を飲む。


「……ナイフだ。」


 みんなはゾッとし震え、涙を浮かべた。

 兄上は依然として態度を変えない。凛々しく、周りの人を傷つけることもなく、僕を助けてくれた。

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