ファーストコンタクト
まずは、第1王子に接触を図った。
だが、病弱なアイラは元いた世界でいう高校生になるまでは、ほとんどをベッドで過ごしている。
高校生になっても休みがちなため、3人の王子からセレーナを守るのは大変。
だから、とりあえず体力をつけないとな。
ベットの上で、できる運動に取り掛かることにした。
筋トレか、腹筋とかが無難か。
手を頭の後ろにもっていき、ゆっくり上半身を持ち上げたが全然上がらない。この子こんなに弱っていたのか。
徐々にできることが増えればいいけど。
コンコン
俺の部屋のドアをノックされた。中で待機するが誰も入ってこない。
「どうぞ。」
俺が入室の許可をした途端にドアが開いた。
「今、平気かな?」
入ってきたのは……
リース家。
第一王子のユウキ・リース
黒と金髪のメッシュで口の横の長さに切られた髪と肩くらいまで伸びた襟足のウルフカット。
瞳は赤く、ルビーのような輝きを放つ。この人に飲み込まれる。目が全く離せない。
「アイラ、大丈夫か?体調でも悪い?」
「あ、いや、大丈夫です。」
「それなら良かった。」
「ご要件は、なんですか?」
「セトリが、アイラが成長したと言っていたから、見に来ただけだよ。兄弟の成長を見守るのが兄の務めだからね。」
「お母さんみたいです。」
「ふふ、初めて言われた気がするな。アイラは少し変わったか?」
「何がですか?」
「雰囲気が違うなと思って」
「そ、そんなことないですよ。」
「それならいいけどね。体調が悪かったら無理しないで、ゆっくり休むんだぞ。」
寝ている俺の頭をポンポンと撫でる。心地よい温かさと優しさに涙が溢れそうになる。
「ほんとに大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。」
「じゃあ、そろそろ行くから。また」
「あっ!待ってください。」
起き上がり、俺に背を向けていたユウキの服を掴んだ。ユウキは振り返り、心配そうに顔を覗いてくる。
「どうしたんだ?」
「お話がしたくて」
帰るのを遮り、こんなことして冷や汗が止まらない。
兄弟といっても義理だし。
ん?義理?俺なんで義理なんて思ったんだ?
《ほっ、ほっ、ほっ。》
突如、脳内に響いてきた声に驚きつつも、聞き覚えがあると頭を必死に回転させた。
……その声は神様?
《そうじゃ。お主は、前世でこのゲームをやってなかったみたいじゃから、たまにアドバイスを入れようと思ってな。》
そうなんですか。ありがとうございます。
あの実は聞きたいことがあって。
《なんじゃ》
義理ってなんですか?
《ああ、お主のキャラのことじゃ。アイラはリース家の第一王子のユンリー・リース今の国王の弟。第2王子のアイネ・リースの子どもじゃ。アイネはチャラ男でのう。下町で働いていたユラという女性に一目惚れして勝手に結婚したんじゃ。だから、ユンリーや親は奥さんの顔も知らなかったのじゃ。アイネは元々体が弱かくてのう。アイラが2歳になった頃に、病気で亡くなっているんじゃ。そして、ユラもユンリーにアイラを託し、アイネの後を追うように亡くなっておる。》
義理の理由はわかったけど、おかしいよ。アイネは勝手に結婚して、親や兄弟は奥さんの顔も知らないのに、奥さんが渡した子どもを簡単に受け入れるわけないと思う。
《まぁ、そうじゃのう。でも、子どもの顔を見た時にわかったらしいぞ。すごく弟に似ていたんじゃ。だから、義理の兄弟として受け入れた。》
そうなんですね。弟を心配していた兄だからこそってことですか。
《そうなるのう。ということで頑張るのじゃぞ!》
ちょ、神様それだけ?おーい!
「話とはなんだ?」
「あ、えっと。俺、兄弟のことをもっと知りたいです!」
「アイラ。そんなことならいつでもいいぞ。今日は、ちょっと用事あるからまた今度で。」
「はい、また」
ユウキは俺に優しく微笑み去っていった。