買い物1
「じゃあ、お邪魔しました。」
兄上の部屋から出ると、そのままドアに背中をつけズルズル下に滑り落ちる。
床にペタンとおしりがつく。
兄上が、かわいい姿って……
僕のかわいい姿見たいって……嬉しい。
嬉しさで腰が抜けた。ニヤケ顔を隠すように口元を覆っている両手をそっと床に置く。ここでこんな姿を誰かに見られたら、変に思われる。
嬉しい気持ちをグッと噛み殺し、明日の楽しさを心に閉じ込めて心の中だけではウキウキで部屋に帰った。
明日はどんな服で行こうかな。
クローゼットから全ての服を取り出す。
ユリ様からもらった服、お父様が仕方なく買ってくれた服。もう着られないのは分かってるけど、絶対に捨てたくない僕の思い出。
1人で買い物に行ける年になって、女性物のドレスやアクセサリーを買って、次の機会にその服を着ていく。
だから……いつものかわいい格好でもいいんだけど、兄上も一緒だし……とりあえずはいつものピンクのスーツかな。
着るものも決まったことだし、早々とベッドに入り明日になることを願う。
だけど、心臓がずっとドキドキする。いつもより鼓動が早く、楽しみすぎてその日はなかなか寝付けなかった。
翌朝。
カーテンを開き、日光を体全身に浴びる。
今日という日が良い一日でありますようように……
顔を洗い、スキンケアも欠かさない。
常にかわいく、魅力的に……
意識を忘れない。兄上を魅了するその日まで……
ピンク色のスーツに腕を通す。
ピシッとしてるけど、かわいい色。
今日は気合を入れて、ツインテール……なんてね。男がツインテールなんてキモいよな。
ハーフアップにしようかな。
コンコン
「キサラギ、部屋の前で待ってるな。」
「はい。」
準備が早い兄上はいつも、部屋の前で待っていてくれる。
「兄上お待たせしました。」
ドアを開ければ壁に背を預け、腕組みをしたカッコいい兄上がいる。
幸せ……
「おっ、今日はハーフアップなんだな。似合ってるぞ。」
あっ、気づいてくれた。
「はい、ちょっと気合いを入れました。」
「そうか。じゃあ行くぞ。」
「はい!」
服を売っているお店に入ると、兄上は僕に似合う服を先に探してくれる。
「キサラギ、これなんかどうだ?」
渡されたのはブルーがメインのクールな印象があるドレス。
こういうのが好きなのかな?
「どうですか?」
「すごい、似合ってる。こっちは?」
次に渡されたのはスカートがふわっとしているピンク色のドレスだった。
「か、かわいいです!」
「キサラギにはこれくらいじゃないと」
「そんなに盛らないと僕はかわいくないですか……」
「いや、違う!これくらいじゃないと服がキサラギのかわいさに負けるんだ!」
「へっ?」




