トラウマ3
「やっぱ誰かいるのか。大丈夫、今出すからな。」
小屋の前でゴソゴソと何かをする音が聞こえドアがゆっくりと開いた。
「あ、開いた。」
すぐに小屋から飛び出すと黒髪ショートカットの男の子が立っていた。
「あ、あの。ありがとうございます。」
頭を下げお礼を言う。左肩に温かい何かが置かれた。
顔を上げてみると、ニコッと笑う男の子が肩に手を置いて私の顔を見つめていた。
「あっ、えっ、あの……」
「大丈夫か?」
顔の至るところに絆創膏がはられてる。怖い人なのかな。ヤンキー……とか。
「おい、どうした?体調が悪いのか。飲み物買ってくるからここで待ってて」
この場から去ろうとする男の子の手にすがりついた。今はひとりになりたくない。
「どうした?もしかして、怪我してる?」
「……ううん、違うの。でも、ひとりになりたくなくて」
知らない私を助けてくれたのに、こんなことまで頼むのは迷惑だよね。
「やっぱり大丈夫です。助けていただき、ありがとうございます。じゃあ」
下を向いて、男の子から手を離し横をすり抜けようと歩き出す。
「おい、待て!」
今度は男の子が私の腕を力強く握ってくれた。
「こんなに身体を震わせて、泣くのを我慢してる子を放って置けるわけないだろ。家まで送るよ。」
「そんな、迷惑かけるわけには」
「迷惑なんかじゃないよ。こっちこそ、家まで送るとか嫌だよな。」
「いえ、そんなありがたいです。」
必死に男の子に言うと、口の前に握った手を近づけふふっと笑う。
「……」
なんだか恥ずかしくて黙り込んじゃう。
「かわいいね。じゃあ案内してくれるかな?まだ怖いかったら手、繋いでもいいから。」
「……はい。」
言われた通りに手を握るとまたふふっと笑う。
「こっちです。」
私が案内している間。ずっと笑顔で優しく話しかけてくれて、怖いという気持ちが消えてきていた。
自分の家に着く。その男の子と離れるのは名残り惜しい。手に力がこもる。
「ここが家?じゃあ、俺はこれで。手を離しますね。」
「……はい。」
男の子はすっと私から手を離し、手を振る。
「あの、お名前は!」
「秘密。俺の名前を言ったところで、また会うとは限らないからな。」
「はい。そうですね。」
「まぁ、そうだな。俺はみことだ。」
「はい、ありがとうございます。みことさん。」
最後まで笑顔でいてくれた男の子は、それから本当に会うことはなかった。
それは、私が違う場所に引越しをしたから。
転校してからはオタクの趣味を隠し、友達も出来たけど本当は友達と語り合いたいし、推しについて聞いてみたい……。




