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悲しみと喜び

 呼吸を落ち着いてくると、体を起き上がらせることが出来た。

 その間もセレーナさんは何も言わずに待っていてくれた。


 顔を上げると悲しそうな笑顔で、俺を見ているセレーナさんが目に入ってきた。


「セレーナさん、すみませんこんな急に」


「いえ、うれしかったです。アイラ様の気持ち……でも、私はどんなことがあろうとユウキ様しか好きになれません。ユウキ様が私をいらないと言うのならばこの命だって……」


「それはダメだ!」


「はは、そうですよね。わかってます。でも、私がもしどこかであの方に狙われたり、辛くなってこの世を去ってしまった時はユウキ様にありがとうございました。私は幸せでしたとお伝えください。」


 その表情は真剣だった。


 それだけ言い残し俺に背を向ける。

 ここで、何も言わなかったら後で公開する。


 空気を肺いっぱいに吸い込み、うるさいくらいの声で言った。


「婚約者になれなくても、そんなことにならないように俺が守るから。幸せになって欲しいんだ!」


 「ありがとうございます。アイラ様は優しいお方ですね。でも、助けて頂いたのに何も出来ないのは申し訳ありませんので、何か欲しいものとかありますか?」


「ものじゃなくてもいいですか?」


「はい!」


「……俺と1日デートしてくれませんか?」


 セレーナはふっと笑い、俺に近づく。

 諦めが悪いかなと少し考えてしまう。

 でも、何もできないで終わりなのは絶対に嫌だから言えてよかった。


「いいですよ。いつにどこですか?」


「今週の日曜日に、人気がない本屋で」


「はい、分かりました。楽しみにしています!」


 セレーナの笑顔が見れた。それだけでも嬉しかったのにデートも許してくれた。

 俺は嬉しすぎて、まだ頭がクラクラするのも気にせず部屋に走って飛び込んだ。


 練習のおかげで体力も増え、体もまだヒョロヒョロだけど筋肉がうっすらとつき始めている。


「やったー!デートだー!」


 マスクに大きな声で叫ぶ、それくらい嬉しかった。


「アイラくん、大丈夫っすか?僕が失敗したっす。本当にごめんなさい。」


 四季のか細い声が聞こえ枕を顔から離し、向き合う。


「四季、俺は無事だからそんな落ち込むな。四季のおかげでセレーナが助かった!ありがとう。」


「アイラくん」


 四季は涙でぐしょぐしょの顔のまま俺に抱きつく。


「四季、せめて鼻をかめ、……もう」


 俺はそのままベッドに横になった。


「四季。俺、今週の日曜日にセレーナとデートしてくる。」


「もしかして婚約したっすか!」


「いや、断られた。」


「えっ?どういうことっすか?」


「助けてくれたお礼。」


「そうっすか、楽しんできてくださいね。」


 四季は涙を流しながら満面の笑みで言った。


「当たり前だろ。」


 俺も笑顔で返した。

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