悲しみと決意
いつものようにスーツに手を通すと、肩や袖口が切られていてボロボロになっていた。
それも、全部。
毎日毎日、わざわざ私の家まで来て悪口を言う。
助けてほしくても、そんなこと言えない。
相手は、貴族の中でも、一番偉い方。親は婚約に賛成し、私もアイダ様のことが好きだった。
もうこんな生活嫌だ。
逆らうことをやめ、ドレスを着るようになった。
「それで今なんだけど……本当は、本当は、キサラギ様が私の婚約者になっていただきたい。私のことをしっかりっ見てくれて、優しくてかわいくて……どうかお願いします。」
頭を深く下げられた。それでも、私は婚約者になれない。
「ごめんなさい。私にはもう心に決めた人がいるので……ユリ様とは親友でいたいのです。」
「そんな、でも、婚約者じゃないんですよね。じゃあ、私でも」
「婚約者になれなくてもずっとそばにいたいんです。」
「相手は、相手は誰だ!教えろ」
「それは言えないです。」
「っく、お前なんか。女の格好してキモイんだよ。目障り、もう消えて、2度とかかわらないで」
「……わかりました。」
私は痛む頬を押さえて、泣きつくして枯れたはずの涙をこらえる。
「今までありがとうございました。さようなら。」
最後の別れは顔を合わせることなく震える背中を向けた。
このことがきっかけで私は外では、人にかわいいものが好きと言わなくなった。
「私」も、女の子みたいだからやめた。
家に帰ると、心配した顔の兄上が抱きしめてくれた。
そこで、耐えてきたものが崩れていった。涙があふれ、けがの痛みを訴える。
「うー、痛いよ。っぐすっ。兄上……」
兄上はさらに僕を抱きしめてくれる。暖かくてほっとする。
「何があったとかは聞かない。でも、キサラギを傷つけたやつを教えろ。」
「……それは言えません。」
「なぜだ。」
「兄上は人を殴るより、優しく撫でてくれるような方ですから。」
「あ、ああ。そうか。わかったよ。」
兄上は優しく優しく頭を撫でてくれた。
「僕は、ユリ様が辛い気持ちだったことを気づいて上げられなかった。」
「話してくださり、ありがとうございます。その話、ナミキさんにも話した方がいいです。キサラギさんのことを1番心配しています。」
「そう、だね。」
キサラギさんは、ナミキさんの元に走っていった。どこかスッキリとした表情で……。
俺は、この恋が叶うか分からないけど、想いを伝えないと始まらない。
ユウキさん主催の身内だけでのパーティー。
「セレーナとは婚約破棄します。」
悪い1歩が始まろうとしていた。




