過去編4
「ユリ、元気だったか?」
「……」
「おい、なに他の男とくっついてるんだ!離れろ」
私からユリ様を引き離す。ユリ様はすがるように、震える手で私の服の袖を握った。
これは、なにかあったに違いない。
私はアイダ様から、ユリ様を守るように真ん中に入った。
「おい、なんだよお前。俺の婚約者だぞ!ユリから離れろ!」
胸ぐらを掴まれて、左頬を殴られた。
「っ、うっ、ぐすっ」
体格の差はほとんどないのに重く、鈍い痛みが走る。
自分の頬を押さえ、涙をこらえる。
「弱っ、おい。ユリ、こいつのどこがいいってゆうのかよ。俺がお前の婚約者なんだぞ!」
「……っ」
ユリ様は黙ったまま、下唇を噛み締めた。
私は何もできない。動けない。
この状況どうしたらいいのかわからない。
「ユリ。あのことは謝るから、早くこっちにこい」
「いやっ、私は許さないから。それにもう私の婚約者じゃないんだからここに来ないで、きゃっ」
ユリ様はおびえながら、しっかり自分のことを伝えた。でも、アイダ様は怒った顔でユリ様のそばに近づき、ユリ様のきれいな黒髪を力いっぱいにつかんだ。
「お前みたいなやつの婚約者になってやるって言ってんのにもったいねーやつ。気持ち悪い男女ちゃん。じゃあな……」
そうして、アイダ様は去っていった。
残された私たちは、泣き喚いた。
しばらく泣いて落ち着いたころにユリ様はぽつりぽつりと話し出す。
それは3年前にさかのぼる。
「おーい、ユリ!」
「あ、じゃあ私は帰るね。また、呼んで」
「あ……、うん」
「ユリ、またあの男と遊んでたのか!お前の婚約者は俺なんだぞ」
「わかってる。」
「それにその服装、もうやめろよ。かわいいんだからもっとドレスとか着ろ。」
「私は好きでこの格好してるの!服装まで決められる筋合いはない。」
「はっ、ふざけんな。この男女が」
そういい捨て、彼は帰っていった。
次の日から彼が私をいじめる日々が始まった。
彼は、3人ほど仲間を連れてきた。
「こいつが例の男女。今もこんな男みたいにスーツ着てるんだぞ。キモイだろ。」
「いや、まあ、あまり見ないけどそこまでじゃないだろ。」
「俺もそう思う」
「俺も」
「はぁ、お前ら俺の言うことが間違っているっていうのか!」
3人は慌ててそんなことないと否定して、私の見た目の悪口を言う。
「キモイな」「笑える」「嫌いだ」
「何で知らない人たちが私の悪口を言うんですか。アイダ様!」
「お前が言うことを聞かないのが悪い。お前がちゃんと言うこと聞くまで、しっかり教育するからな!」




