勉強開始
その日から、夜の勉強会が始まった。
「これは"あ"その下が"か"」
「"い"じゃないんですか?」
「えっ?なんでそう思ったの?」
教科書を貸してもらい読んでみると、文字が全く読めないことが分かり、とりあえず文字の勉強から始めている。
言葉が通じるのに、何で文字が読めないんだろう。
この世界は、五十音順がないのか。
覚えるの、たいへんかもな。
「いえ、なんとなくです。」
「そうなの?じゃあ続き教えていくね」
「はい。」
あ、い、う、え、おが右から左に来てるのか。下の段がか、さ、た、なで続いてるから、ほぼ五十音順で覚えられるか。
それにしても、文字をなぞる手がキレイだな。手入れとかしてるのか?
でもずっと、文字を見てるから目がしょぼしょぼするな。さすがに疲れたのか。まだいちじかんもやってないのにな。
「アイラ、大丈夫?休憩する?」
「大丈夫です。……」
その途端、視界がゆらゆらしだし、意識が遠のく。
すごく眠い……
学校で居眠りとかしたことないのにな。
キサラギさんの方に倒れ、そのまま眠ってしまった。
目が覚めると、カーテンに光が差し込んでおり、隣にはスースーと健やかな寝息をたてている、キサラギさんが眠っていた。
体全体で左側を向き、正面でキサラギさんを捉える。髪はサラサラで肌が雪のように白い。中性的で魅力的だ。
思わず、その肌に触れてしまった。
当たる肌の感触がスベスベで柔らかく、手に吸い付いてくる。
そのまま、髪を触ろうと耳の上を通ると、
「ひゃっ」
キサラギさんが声を上げて、耳を押さえる。慌てて手を離したが、その瞳は俺を捉えて離さない。
耳から徐々に顔まで赤く染めて、瞳は涙でうるおう。
「えっと、……」
「へ、変態。」
俺とは反対方向を向き、毛布を頭まで被ってしまった。
「すみません……」
なんとなく気まづい。
このままそばにいるのはなと思い、ゆっくりとベッドから降りる。
昨日習った文字を読み返し、復習する。
でもその時、寒気を感じた。
この体になってからすぐ体調を崩しやすいから、前の体より動きづらい。
筋トレもそんなに効果は出てないな。
椅子に座っているのに、右へ左へと体がゆらゆら揺れる。
「やべぇ……」
これは熱がある時のやつ。
昨日、勉強中に感じていた。倦怠感はその前触れか。
ドサッ
地面に身体を打ちつけ、ズキズキと痛む左半身。だが、息が上がって何も出来ない。
「……アイラ、大丈夫?」
俺を軽く、持ち上げる。
「……キサラギ、さん?」
そして、意識を失った。




