過去2
先に車に乗り込むが一緒に帰るので当然、父様も乗る。
「さっきのはどういうことだ。行きたくないなんてそんなこと言うな。」
「父様にはボクの気持ちは分かりません。」
初めての反抗だった。父様のことは好きだけど、もうパーティーには行きたくない。
車の中は驚くほど静かで、空気が悪かった。
家に着くと父様から離れるように走って、部屋にかけこんだ。
誰にも会いたくない。
ベッドに飛び込み、毛布を全身にかぶる。
コンコンとドアを叩く音と、「ナミキ、返事をしなさい」という声で外はうるさい。
マクラを顔に近づけて、大きな声を出した。
「あ"ああーー!」
嫌だ、嫌だ、何もかも嫌になる。
ユキヤ様に会いたい。
しばらく部屋に閉じこもったと思う。
窓の外から見える景色は暗く、今日はずっと部屋にいたのかと錯覚する。毛布をめくり、起き上がると自分の服が見えた。それだけで、今日はパーティーに行ったんだと、憂鬱な気分になる。
ドアを開けると目の前には父様が立っていた。もうとっくにいないと思ったのに……。
「やっと出てきたな。ナミキ。」
「……父、様。」
「言いたいことがあるなら言わないと分からないだろう。」
「……ボク、ユキヤ様と婚約したいです。」
「何を言ってるんだ!あいつは男だぞ!」
「ユキヤ様がいいです!女の子と婚約しろと言われても困ります。」
「勝手にしろ。」
それだけ言い残すと、この件に触れられなくなった。
そんな時、ユキヤ様に会う機会があった。
「ユキヤ様、お久しぶりです。」
「お久しぶりですね。」
「あの、婚約者って決まりました?」
「まだですよ。」
「それじゃあ、……ボクはどうですか?」
思い切って、言った。目が開けられない。だって、言っちゃったから。
心臓がドキドキと鼓動して、破裂しそう。
「えっと……」
ユキヤ様の声が聞こえ、ゆっくり目を開けてみる。
そこには、いつもの明るい笑顔ではなく、虫を見たような顔でボクを見ていた。
「き、気持ち悪い。」
好きな人に真正面から言われた。
涙が頬を伝って流れる。何滴も何滴も止まることがない。
「うぅ、なんで、なんで……、ユキヤ、さ、ま……」
「話しかけないでください。」
ボクに背を向けて歩いていく。1歩1歩と遠くに行ってしまう彼をボヤけた視界で見ながら。
しばらくして、貴族たちが揃うパーティーに出席した時。周りの視線が刺さるような気がした。
「あの方って……。」
「……様に婚約を申したとか。」
「まじか、気持ち悪い。」
この場の空気が悪くなるのを感じた。




