過去編2
おれが十二の時。近所に住んでいたお兄ちゃんが遊んでくれるようになった。理由はわからないが優しくて、かっこよくて弟しかいないおれの唯一のお兄ちゃん。
かけっこをしたり、かくれんぼをしたり2人きりだったけどとっても楽しかった。
疲れた時は、芝生に大の字で寝転んだ。草が髪や服について2人して笑いあった。
遊びの種類も広がってきて魔法を使って遊ぼうと言われ、その言葉に賛成した。
おれはまだ闇魔法の怖さを知らなかったから。
お兄ちゃんは雷の魔法で手と手の間に光の玉を作った。
パチパチこちら側へ線になって広がって、太陽みたい。
おれもこんなふうに魔法を使えるようになりたい!けど、今まで魔法を使ったことがないからどうやったらいいのか分からない。
そんな時、脳内で声が聞こえた。
《魔法を使いたいんだろう?》
「…………?」
突然静かになった俺に、お兄ちゃんは「どうしたの?」と優しく問いかける。
「なんか、頭の中で誰かが喋ってる……」
「えっ……」
お兄ちゃんの優しい笑顔がひきつり、俺を突き飛ばした瞬間。時が止まったかのように動かなくなったお兄ちゃんを黒い光が包む。
《うん、美味い。久々のご馳走だな。これからが楽しみだ。》
お兄ちゃんの顔色がだんだん悪くなっていく。
「お兄ちゃん?……」
白目を向き、ゆっくり膝から崩れ落ちた。
おれはお兄ちゃんの頭を膝の上に乗せ、話しかけるが何も言わない。
「うっ、ぐすっ……お、にい、ちゃ……」
何もできない。お兄ちゃんはおれと遊んでくれたのに……
《……おいお前、何泣いているんだ。》
「だって、お兄ちゃんが……」
《クッ、なるほどな。お前が闇魔法を使うには犠牲が必要だ。それも、お前が大事に思ってる人ほど俺にとってはごちそうだからな。》
「こんな、魔法なんて、だれかを失うなんていやだよ。」
《魔法を使おうとしたお前のせいだな。せいぜいこれからも楽しませてくれ。それと、俺の命令に逆らったらお前の意思とは関係なくいただくからな。》
「どうして……」
おれの問いに答えることはなく。会話が終わった。
それから数日。お兄ちゃんは目を覚まさなかった。
「お兄ちゃん……」
真っ白い顔で額にはうっすら汗を浮かばせている。
時折、苦しそうな声を上げ、息を荒くする。
「はぁ、ぐっ、ふぅふぅ、たす、けっ、て……」
そのたびに胸が苦しくなる。
そしてまた数日後。お兄ちゃんは目覚めた。
「お兄ちゃん!」
涙ぐみながらもお兄ちゃんを呼ぶといつもの優しい笑顔が……やってこなかった。
大好きだった笑顔が消え、目には光がない。
何も言えないくなった俺の前でお兄ちゃんは紐で輪っかを作り、天井に結んでぶら下げた。
「……お、お兄、ちゃ、ん」
ベッドに乗っかり、輪っかに首を入れる。
「お兄ちゃん!」
おれはその場から一歩も動けなかった。
その間にお兄ちゃんはベッドから足を踏み出した。
途端に苦しみ出すお兄ちゃんは首の紐を取ろうと爪を立て傷ついた皮膚からはじわじわ血が滲んでる。
鳥肌が立つ。それに吐き気がもよおしてきてその場で吐いてしまった。
顔はいつものお兄ちゃんで、目に光が戻った。でもその瞬間、絶望の表情をした。
抵抗することをやめ、腕を横にだらんと下げた。
まもなく、この世を去った。




