過去編1
セレーナと出会ったのは、俺が六歳の時。
婚約者を決めるパーティーでいじめられているセレーナを助けたことがきっかけだった。
「あんた、えらそうに口をきかないでくださる。」
「えらそうになど、とんでもございません。わたしはただごあいさつにと」
「うるさい。ワタシが言うのだから正しいのよ!」
肩の長さのオレンジ色の髪がストレートでさらさらとなびく。ツリ目で赤く染まった瞳は僕の目と似ていてとてもきれいな令嬢をポニーテールで背の高い令嬢がいじめている。
悪口は当たり前、何かあったら人のせいにすると悪評高くて有名なご令嬢だ。
周りがざわざわしだしてセレーナたちに注目が集まるが、誰も助けようとはしない。
ここで何か言うと親の権力で何をされるかわかったもんじゃないから。
本人たちは注目されているのにまったく、気がついていない。
いじめられているあの子を助けられないかな。
そう思うのに目をそらしてしまう。
……ぼくは止められないよ。
あの中に入って、色々言われたら何も言い返せない。
弟たちのけんかだって止められないのに……
あの子をもう一度見ると、目が合ってしまった。目をそらさないと、助けないといけなくなる。でも、ぼくはその子から目が離せない。瞳から一滴、涙が頬を伝って地面に落ちた。その瞬間、胸が締め付けられた。
「……ちょっと、まって、ください。」
あの子を助けたい一心でとっさに出た言葉だった。みんながぼくに注目する。
それと同時くらいにいじめていた令嬢が今の状況に気づいた。
「あ、えっと。それではまた」
スカートを少し持ち上げ会釈をし、そそくさと去っていった。
みんなも興味をなくしたように離れ、料理やお酒を嗜む。その場にはあの子しかいなくなった。
ぼくは一目散にかけよると、膝から崩れぺたんと座り込む。
「あ、あの……」
手を差し出し、立たせようとするが、
「助けて、いただき、ぐすっ、ありがとう、ございます。」
ぼくの腰元に抱きつき服にシワができるほど強く掴まれた。
「ぼ、ぼくはそんなこと」
行き場のない手を振り、否定する。
「あなたは、私のヒーローです。ごめんなさい、お召し物を……」
キラキラとした瞳でぼくを見据えた後、掴んでしまった服を見てサーっと青ざめた。
「いや、これは大丈夫。それよりあなたが心配、です。」
ちょっと恥ずかしくなって、両手で顔を隠すが彼女によって解かれた。
「ありがとうございます!」
優しく微笑みお礼を言っただけなのに、なんでこんなに心臓がドキドキしているの。
スカートを少し持ち会釈をして、僕の前から去ろうとする。
それがどうしても嫌だった。
「……ぼ、ぼくの、こ、婚約者に、……なって、くれませんか?……」
声が小さくて相手に聞こえているか不安で顔をあげるとさっきと同じ笑顔で俺の両手を握ってくれた。
「なります。でも、ほんとにわたしでよろしいのですか?」
「はい!」
いじめから助けたのも、婚約者になって欲しいことを言ったのも自分っぽくはないなって思ったけどその結果。ぼくたちは婚約することになった。
お互いの家に遊びに行き、好きな食べ物、趣味、楽しかったことなどを話した。すぐに意気投合し、色んな所へ赴いた。
セレーナは優しく、お人好しでぼくと性格が似ていた。
闇魔法を初めて話せたのもセレーナで、家族に話せないことをたくさん話した。
何を言うでもなく、ただ聞いてくれたのが本当に嬉しかった。
これは運命!そう思っていたのに……




