魔法
「闇魔法は人の精神を壊す危険なものっす。使い方ひとつでその人を自殺に追い込んだり、働けなくなるようにできるっす。」
「じゃあ……」
「セレーナが危険っす。」
四季は真剣に言った。
「俺、行ってくる。」
四季から離れ、中庭を目指して走っていく。
普段の自分なら余裕なのに、屋敷の広さと体力のなさが邪魔をしてくる。
「アイラくん、僕が案内するっす。」
キラキラと全身から謎のオーラを放つ四季は、床から少し浮いていた。
「えっ、えっ、浮いてる?」
俺は目を疑った。何度も見直すが変わらない。まるでゲームの世界みたいだ。
「もしかして、俺にも魔法が使える?」
好奇心で四季の肩をガッシリつかみ聞いてみる。
「うん、火の魔法を使えるっすよ。」
「へぇー、すげぇ」
自分の手の平を見て、魔法が使える喜びが心の中で大きく膨らみニヤニヤが止まらない。
「行かないんすか?」
「あっ!」
今はそれどころじゃない。セレーナが死んでしまうかもしれない。最初のイベントでセレーナ死亡なんて、絶対にさせない!
胸が苦しくて息するのもやっとな状態だけど、走らなきゃ、ユウキを止めないと。
中庭につくとセレーナは白い顔で倒れており、ユウキはいつもと違う様子だった。
それは、セレーナへの嫌悪感じゃない。他の何か。
黒いオーラを持ち、不敵な笑みを浮かべている。あいつは誰だ?
セレーナに駆け寄り、脈を測る。
トクントクンと弱々しいが脈があった。
良かった。
ユウキを再び視界に入れる。でも、俺も限界だった。ここまでの全力疾走が体を動かなくさせた。
呼吸が乱れ、視界がボヤける。
「ユウキ、さん……」
名前を呼ぶだけで精一杯だった。
――――――――――
アイラの様子が変わったとセトリから聞き、アイラの部屋に向かった。
コンコンとドアにノックをすると、いつもはすぐに返ってくる返事がない。
しばらくの沈黙の後。
「どうぞ」
という声が聞こえ中に入ると寝たままの状態で俺を見ていた。
「今、平気かな?」
いつものように優しく問いかけると真顔で固まったまま見つめられる。
怖がらせたかな。それとも、体調が悪いのかも。
「アイラ、大丈夫か?体調でも悪い?」
「あ、いや、大丈夫です。」
セトリが言った通り、いつもとは違う雰囲気。
「それなら良かった。」
「ご要件は、なんですか?」
「セトリが、アイラが成長したと言っていたから、見に来ただけだよ。兄弟の成長を見守るのが兄の務めだからね。」
「お母さんみたいです。」
まさか、アイラの口からその言葉が出るなんて…………
「ふふ、初めて言われた気がするな。アイラは少し変わったか?」
「何がですか?」
「雰囲気が違うなと思って」
「そ、そんなことないですよ。」
「それならいいけどね。体調が悪かったら無理しないで、ゆっくり休むんだぞ。」
寝ているアイラの頭をポンポンと撫でる。実の兄弟ではなく馴染めるか不安だったけど、アイラの方から変わろうとしてる。
俺も変わらないと。
決意を固め、アイラを見ると微かに瞳が潤っていた。お母さんのことでまだ思うところがあるのかな。
「ほんとに大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。」
アイラは笑顔で言った。
「じゃあ、そろそろ行くから。また」
「あっ!待ってください。」
アイラに背を向けて歩き出すと、服をグンっと引っ張られ振り返る。
「どうしたんだ?」
「お話がしたくて」
真剣な表情に俺も真剣に話を聞く体勢をとった。だけど、次の言葉をなかなか言ってこない。話す言葉を考えているのかな。
それにしては長いな。ちょっと心配になってくる。
「話とはなんだ?」
「あ、えっと。俺、兄弟のことをもっと知りたいです!」
いつも、気を使ってばかりだからな。アイラは偉いな。
「アイラ。そんなことならいつでもいいぞ。今日は、ちょっと用事あるからまた今度で。」
「はい、また」
俺はその場をさり、アイラのために用事を一気に終わらせ、またアイラの部屋に向かった。




