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外交の場にて

 敵国も今回の出来事を把握していた。

 潜水艦による領海侵犯についてだ。

 今までと違い、今回は公海上で通信をした事で、潜水艦の活動が知れ渡った。

 しっかりとした根拠があるので、外交にて抗議をしにきた…………と思われた。

 もちろんそれもある。

 だが、敵国の主要な交渉内容はそこではなかった。



「領海侵犯ついては、抗議せざるをえない。

 我が国としては、このような事は許せない」

「でしょうな。

 我が国も、貴国の潜水艦による領海侵犯。

 ならびに、航空機による領空侵犯について抗議を」

 外交の代表、お互い一歩も譲らない。

 どちらも冷戦を担う陣営を率いる者の意地がある。



「しかし、本題はここではない。

 我が国としてもゆゆしき事態が起こっている。

 その事についてお話を」

「ほう?」

 意外、というほどの事ではない。

 今回、敵国が何かしらの意図をもって交渉に臨んでくるのは諜報で明らかになっている。

 それが領海侵犯ではない事も。

 ただ、詳しい内容までは分かってない。

 それがこれから明らかになる。



「今回、我が領海と北極において不審な事故があった。

 そちらの潜水艦を追跡した我が国の潜水艦においてだ」

「何があったので?」

「発見したそちらの潜水艦を追跡、しかし緊急事態をしらせる通信を最後に消えた」

「ふむ」

「その海域は、そちらの潜水艦が浮上したのとほぼ同じ場所。

 距離はいささか離れてるので、完全に同じというわけではないが」

「ああ、だから…………」

 そこで合点がいった。



 敵国も潜水艦が沈没していた地域で活動していた。

 いったい何をと思っていたのだが。

 どうやらそちら沈没した潜水艦を引き上げていたようだ。

 さすがに監視をするわけにもいかなかったので、詳しい事は今まで分かってなかったが。



「その潜水艦だが。

 奇妙な状態になっている」

「どのような?」

「何かに握りつぶされたような、そんな痕が残っていた」

「…………!」

「もしかして、そちらの潜水艦を似たような事になってるのではないかと思ってね」

「まあ、それは」

 適当に言葉を濁す。

 相手が何を考えてるか分からないからだ。

 今ここでその情報を出してどうするのか?

 その意図が見えない。



「ま、隠す事では無いから公表しよう。

 これが我が国の潜水艦の状況だ」

 そういって数葉の写真を出してくる。

 その写真には確かに潜水艦が写っていた。

 握りしめられたような痕をつけてる潰れてるものが。

 それを見て交渉担当者の表情がかすかに動く。

 彼らの国の潜水艦とおなじ痕跡だと確かめて。



「これはいったい?」

「我々も知りたい」

 交渉担当者の質問に相手は率直に答える。

 何も知らないと。

 あるいは、知っていても教えるつもりはないと。

 どちらであるかは分からないが、どちらでも結果は変わらない。

 情報がないという事実は変わらないのだ。



「それで、これを見せてどうするおつもりで?」

「何か分かればと思ってない」

 そう言うと敵国の外交官はため息を吐いた。

「我々もこれが何なのか知りたいのだ」

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