表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/8

彼等が交わした最後の通信

 その通信を受けた司令部は、困惑した声を返してくる。

 いきなりの通信による内容は、あまりにも重大なものだ。

 攻撃を受けたなら、それは戦争すらありえるのだから。

 だが、それにしては気になる事も言っている。

 もし敵国から攻撃を受けたなら、素直に「攻撃を受けた」というはず。

 しかし、今聞いたのは「襲われた」という言葉。

 その微妙な違いに、通信を受けた者達は違和感をおぼえた。



「こちら潜水艦隊司令だ」

 事の重大性を鑑みて、通信を受けた基地の最高責任者が通信に出る。

「状況を詳しく説明しろ」

「こちら、潜水艦。

 何者かに襲われてる」

「何者にだ?

 敵国か?」

「正体不明。

 潜水艦などではない。

 ただ、攻撃を受けてるのは確かだ」

 その声を聞くごとに司令の体に戦慄が走る。



 要領をえない説明だ。

 何が起こってるのかほとんど分からない。

 ただ、攻撃を受けてるという事実。

 これだけは明確だ。

 それも、敵の領海内で。

 そこで攻撃をしかけてくる者など、敵しかいない。



(最悪、全面戦争に発展しかねんな)

 この事が発端になる可能性はある。

 敵から仕掛けてきたならなおさらだ。

 もっとも、その判断はまだ出来ない。

 潜水艦からも、何者による攻撃かは分かってないと言ってきてるのだから。



「それで、今の状況は?」

「公海上にて通信可能深度まで浮上。

 今のところ、敵の攻撃はありません」

「帰還は可能か?」

「敵が襲ってこなければ」

 それを聞いて司令は愕然とする。

 現時点で最高の性能を持つ潜水艦だ。

 その性能をもってしても、攻撃を受けたらどうにもならないという。

 そんな事が出来る存在がいる事に、司令は恐怖を覚える。



「その敵について何か分かってる事は?

 攻撃は効果があるのか?」

「敵については分かりません。

 各探知機でもとらえられません」

「馬鹿な…………」

「ただ、攻撃は効果があります。

 音響魚雷に反応してついていくと思われる反応は確認してます。

 爆発に巻き込まれて撃破したとおぼしき反応も確認してます。

 死ぬときに悲鳴をあげたようで、それが海水を伝わって届きました」

「悲鳴?」

 ここで司令は違和感を感じた。



「悲鳴とはどういう事だ?

 相手は敵国の兵器ではないのか?」

 だとすれば、潜水艦やそれに準じる何かであるはずだ。

 生物のように悲鳴をあげるわけがない。

 破壊による何らかの音や、水圧による圧壊の音を悲鳴と表現するならともかく。

 だが、潜水艦からの報告からすると、そういったものとも思えない。

「悲鳴とはいったいなんなんだ?」

 司令は理解不能な事態に直面していく。



 だが、その答えを聞く事はなかった。

 通信は途中で強制終了を余儀なくされたからだ。



「なんだ! どうした!」

 潜水艦から混乱した声があがる。

「また衝撃か!

 奴等か?」

 その声は混乱と焦燥に満ちあふれていた。

「なんだ、さっきより大きいぞ。

 引きずりこまれる。

 深度、深度は?

 …………どんどん下がってる?

 浮上は?

 出来ないか…………。

 なら、音響魚雷を。

 それと、通常魚雷も時間差を付けて発射。

 引き離せ!」

 潜水艦からの通信は、現場で起こってる事の実況になっていく。

気に入ってくれたら、ブックマークと、「いいね」を


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ